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束の間のポーレット
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「食材は後にして、先に必要な道具を見ていこうか。」
“牧場の恵み”でバート達やカッチェと別れを告げたイオリ達は、予定通り買い出しを始めることにした。
屋台エリアは混んでいるが、1つ1つ吟味するには店舗の商品よりを見るよりも楽しい。
イオリは次々と必要な物を手に取っては戻しを繰り返していた。
ヒューゴや子供達は、そんなイオリをニコニコした顔で見守っている。
「「楽しそうだね。」」
「ワクワク顔!」
「ニナも行く!」
「やめとけ。
あーなったら長いぞ?
なぁ、ゼン。」
『うん。長い。
でも、イオリが楽しいならボクは嬉しい。』
クスクスと笑う子供達を行き交う人から庇うようにヒューゴは立った。
そんなヒューゴの目に映ったのは、屋台を除く悩み顔のヴァルトの姿であった。
ヒューゴは首を傾げるとゼンに指を刺す。
「ヴァルト様だ。」
『本当だ。ヴァルトの匂いだ!
どうしたんだろう?僕行ってくる!』
人が行き交う屋台エリアでゼンは的確に見つけ出し、ヴァルトのお尻をグィと押した。
「うお?おお、ゼン!
朝ぶりだな。イオリはどうした?」
驚くヴァルトはゼンが返事の代わりに首を動かす方を見るとイオリがロープの束を購入しているの発見した。
「やっぱり夢中なのか?ははは!
ヒューゴは・・・いたいた。」
ヴァルトはゼンを連れ立ってヒューゴや子供達の元へ向かうと笑顔で手を振った。
今日のヴァルトの連れはクロムスではなくルチアだった。
ルチアはゼンに挨拶するように鼻をスンスンとさせ、ゼンもルチアをペロリと舐めた。
「イオリの買い物待ちか?」
「はい。あーなったら、終わるまで夢中ですからね。」
クスクスと笑うヒューゴと子供達にヴァルトは肩をすくめた。
「屋敷も大変だよ。
お前達に持たせるんだって、色んな物を見繕ってる。
父上も母上も大忙しさ。」
「えっ!それは・・・申し訳ないです。
イオリに言わないと!」
「いいのさ。みんな楽しんでやってるんだ。
しばらく、お前達に会えないんだから構いたいのさ。
好きにやらせてやってくれ。
私も何か餞別をって思ってきたんだがな。
恐らく、イオリの方がいい物を持っているだろう?
悩んでたんだ。」
隠す気もないヴァルトにヒューゴは微笑んだ。
すると、イオリの方から赤い鳥が真っ直ぐに飛んできてヴァルトの肩に止まって小さな嘴をツンツンと頬を突いた。
「ソル?どうした?
イオリのそばを離れるなんて珍しいな。
お前も買い物に飽きたか?」
人が多すぎる所為かソルは話そうとしない。
するとゼンとルチアが首を振っていた。
『ソルレカランテは籠を欲しがっているんです。
貴方の声が聞こえたのでしょう。
《魔の森の泉とポーレットの屋敷を往復する時に便利な籠をくれ》と言っているのですよ。』
ルチアが通訳をするとソルは満足そうに首をコクリとやった。
「お前が荷物を運んでくれるのかい?」
ヴァルトは小さな頭を指で撫でると、ソルはくすぐったそうに頭を振った。
『《イオリと公爵家が繋がっていられるから便利でしょ》って。
《自分なら、それが出来る》って胸を張っています。』
ルチアの言葉にヴァルトは笑うとソルとルチアを連れて籠を売っている屋台に近づいていった。
「欲しいのを選んでいいぞ。
お前が使いやすのはどれだろうな。」
するとソルはヴァルトの肩から飛び立ち、蓋と取手がついた大きめの籠を見つけると嬉しそうに飛び跳ねた。
「それが良いのか?
よしっ!わかった。
親父さん。その籠をくれ。」
「・・・あぁ。毎度。」
籠屋の親父は突然現れた若者が赤い鳥と会話をするように買い物をしていく姿に唖然としていた。
流れ者の親父はヴァルトの顔を知らなかったのだろう。
まさか公爵家の次男が街の屋台で動物を引き連れて買い物するとは思っていなかった。
若者が赤い鳥と胸に抱く魔獣と楽しそうに話しているのを、親父は最後まで不思議そうに見ていたのだった。
「どーなってんだ?ありゃ?」
“牧場の恵み”でバート達やカッチェと別れを告げたイオリ達は、予定通り買い出しを始めることにした。
屋台エリアは混んでいるが、1つ1つ吟味するには店舗の商品よりを見るよりも楽しい。
イオリは次々と必要な物を手に取っては戻しを繰り返していた。
ヒューゴや子供達は、そんなイオリをニコニコした顔で見守っている。
「「楽しそうだね。」」
「ワクワク顔!」
「ニナも行く!」
「やめとけ。
あーなったら長いぞ?
なぁ、ゼン。」
『うん。長い。
でも、イオリが楽しいならボクは嬉しい。』
クスクスと笑う子供達を行き交う人から庇うようにヒューゴは立った。
そんなヒューゴの目に映ったのは、屋台を除く悩み顔のヴァルトの姿であった。
ヒューゴは首を傾げるとゼンに指を刺す。
「ヴァルト様だ。」
『本当だ。ヴァルトの匂いだ!
どうしたんだろう?僕行ってくる!』
人が行き交う屋台エリアでゼンは的確に見つけ出し、ヴァルトのお尻をグィと押した。
「うお?おお、ゼン!
朝ぶりだな。イオリはどうした?」
驚くヴァルトはゼンが返事の代わりに首を動かす方を見るとイオリがロープの束を購入しているの発見した。
「やっぱり夢中なのか?ははは!
ヒューゴは・・・いたいた。」
ヴァルトはゼンを連れ立ってヒューゴや子供達の元へ向かうと笑顔で手を振った。
今日のヴァルトの連れはクロムスではなくルチアだった。
ルチアはゼンに挨拶するように鼻をスンスンとさせ、ゼンもルチアをペロリと舐めた。
「イオリの買い物待ちか?」
「はい。あーなったら、終わるまで夢中ですからね。」
クスクスと笑うヒューゴと子供達にヴァルトは肩をすくめた。
「屋敷も大変だよ。
お前達に持たせるんだって、色んな物を見繕ってる。
父上も母上も大忙しさ。」
「えっ!それは・・・申し訳ないです。
イオリに言わないと!」
「いいのさ。みんな楽しんでやってるんだ。
しばらく、お前達に会えないんだから構いたいのさ。
好きにやらせてやってくれ。
私も何か餞別をって思ってきたんだがな。
恐らく、イオリの方がいい物を持っているだろう?
悩んでたんだ。」
隠す気もないヴァルトにヒューゴは微笑んだ。
すると、イオリの方から赤い鳥が真っ直ぐに飛んできてヴァルトの肩に止まって小さな嘴をツンツンと頬を突いた。
「ソル?どうした?
イオリのそばを離れるなんて珍しいな。
お前も買い物に飽きたか?」
人が多すぎる所為かソルは話そうとしない。
するとゼンとルチアが首を振っていた。
『ソルレカランテは籠を欲しがっているんです。
貴方の声が聞こえたのでしょう。
《魔の森の泉とポーレットの屋敷を往復する時に便利な籠をくれ》と言っているのですよ。』
ルチアが通訳をするとソルは満足そうに首をコクリとやった。
「お前が荷物を運んでくれるのかい?」
ヴァルトは小さな頭を指で撫でると、ソルはくすぐったそうに頭を振った。
『《イオリと公爵家が繋がっていられるから便利でしょ》って。
《自分なら、それが出来る》って胸を張っています。』
ルチアの言葉にヴァルトは笑うとソルとルチアを連れて籠を売っている屋台に近づいていった。
「欲しいのを選んでいいぞ。
お前が使いやすのはどれだろうな。」
するとソルはヴァルトの肩から飛び立ち、蓋と取手がついた大きめの籠を見つけると嬉しそうに飛び跳ねた。
「それが良いのか?
よしっ!わかった。
親父さん。その籠をくれ。」
「・・・あぁ。毎度。」
籠屋の親父は突然現れた若者が赤い鳥と会話をするように買い物をしていく姿に唖然としていた。
流れ者の親父はヴァルトの顔を知らなかったのだろう。
まさか公爵家の次男が街の屋台で動物を引き連れて買い物するとは思っていなかった。
若者が赤い鳥と胸に抱く魔獣と楽しそうに話しているのを、親父は最後まで不思議そうに見ていたのだった。
「どーなってんだ?ありゃ?」
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