拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

束の間のポーレット

500 〜記念・小話〜

　先行して戻ってきたポーレット騎士団の1人が筆頭執事であるクリストフに手紙を差し出した。

「本日、昼過ぎには御一行が帰還されます。
　皆さま、ご無事でございます。
　しかし、他の貴族様方のご訪問は遠慮するとのお考えにございます。
　あとはよろしくお願いします。」

「ご苦労様でした。
　委細、承知いたしました。」

　クリストフは仕事を果たした騎士団員に紅茶とお菓子を用意させると、素早く使用人と侍女達に指示を出した。

「昼過ぎに旦那様方がお帰りになられます。
　速やかにお迎えの準備をしなさい。
　本日の訪問は全てご遠慮していただきます。
　心得ておきなさい。
　さぁ、ご主人様のお帰りですよ。
　笑顔でお迎えなさい。」

　使用人を始め、侍女やコック達、庭師ボーに至るまでポーレット公爵の帰還に笑顔になった。
　それぞれが、するべき仕事をするべく動き出すとクリストフは侍女頭モーナに声をかけた。

「おそらく、一緒にお帰りになるイオリさん達は冒険者ギルドや教会にいかれるでの遅くなるでしょう。
　夕飯も日暮れの暖炉ですましてくると思いますので、お帰り次第にお休みできる部屋を用意してください。」

「承知いたしました。お任せ下さい。」

　モーナはニッコリと微笑むと数名の侍女を連れて2階に上がっていった。

「さぁ、最後までご無事にお戻り下さいませ。」

　クリストフはまだ見えぬ馬車を待つように玄関を見つめた。



「今帰った！クリストフ、皆！ご苦労だった。
　変わった事は無いか？」

　予定通り帰還したポーレット公爵一家の出迎えには屋敷の者が総動員でお出迎えをした。
　オルガ夫人やニコライ・ヴァルトの兄弟全てが無事な事に安堵したクリストフは頭を下げた。

「旦那様。お帰りなさいませ。　
　王都での話を聞かれた貴族や他領の商人達がポーレットに滞在し数件の揉め事もございましたが、治安維持隊やギルドの働きによって大事には至っておりません。
　本日も数名の貴族の方が訪問の許可を求めて来られましたが、お断りをいたしました。

　さぁ、お疲れでございましょう。
　まずはお休みくださいませ。」

　一家に寛ぎを提供し、報告や談笑をしていると直ぐに夜になった。
　クリストフの予想通り、イオリ達の帰宅はまだである。
　ソワソワしだす使用人達に苦笑しつつもクリストフも待ち遠しい思い出いた。

「帰ってきましたよ！」

　外を確認していた者が飛び込んでくると、屋敷の者が外にゾロゾロと出始めた。

「全く、皆して・・・。」

　苦笑する侍女頭モーナの肩を叩き、クリストフも迎え出た。

「カカシさんが立ってるね。」

　子供達の賑やかな声に頬が緩むクリストフだった。

「お帰りさないませ。」