拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

束の間のポーレット

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　ポーレット公爵家へ続く道にはところどころに松明が立てられているが、空を見上げれば綺麗な星がチラついていた。
　カサドの工房を出て、やっと公爵家の屋敷に向かったイオリ達は畑の道を歩いている。

「カカシさんが立ってるね。」

　パティが指差す方を見ると、畑の中にカカシが悠然と立っているのがわかる。
　作物を食べに来る鳥の駆除は魔法や魔道具で十分であったが、イオリの話を聞いた畑人達が楽しんで作り置いてある。
　今では守り人のように愛されていて、ちょっとした名物だ。

「今の旬はなんだろうね？」

「「旬？」」

　イオリの言葉に首を捻った双子は「「なーに？」」と聞いてくる。

「一番食べ頃。
　野菜とか、その時に食べると美味しいよ。っていう期間の事だよ。
　今は何の野菜が一番美味しいのかな？」

　双子は一番美味しいという言葉に目を輝かせ畑の中を探すように首を動かした。

「そんな時期があるのか？
　気にした事ないな・・・。」

　ニナを胸に抱いたヒューゴが双子と同じく首を左右に動かしていた。

「作物を育てるのに魔法とか使っちゃいますもんね。
　季節の野菜が分からなくなっちゃいますね。
　明日にでもボーさんに聞いてみましょうね。」

　たわいも無い話をしていると、ポーレット公爵家の入り口が見えてきた。
　人が集まって手を振っている。

「あー！！クリストフさんだ！！」
「モーナさんもいるよ！」

　双子達はポーレット公爵家の侍女や使用人達の出迎えに大興奮して走って行った。

「「ただいまー！！」」

　スコルはクリストフに抱きつきパティは侍女頭モーナに飛びついた。

「おかえりさないませ。長旅でお疲れでは無いですか？」

「さぁさぁ、今夜はお屋敷でお休みをと旦那様からの言いつけです。
　ゆっくり休んでくださいませ。」

　クリストフとモーナは双子を抱きとめると嬉しそうな顔を向けていた。

「ただいま帰りました。
　皆さん待っていてくださったんですね？
　ありがとうございます。」

　イオリとヒューゴが頭を下げると皆んなは微笑んで迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。イオリさん。
　護衛役、お疲れ様でございました。
　今晩ぐらいは気兼ねなくお屋敷でお休みください。」

　使用人や侍女達はイオリ達の帰宅を見届けると、クリストフの指示で仕事に戻って行った。
　こんなに多くの人が出迎えてくれた事にイオリは暖かい気持ちで屋敷に入り、子供達を用意された部屋に運んだ。

「どうぞ、湯浴みも済ませてください。
　旦那様方はお寛ぎでございます。
　《ゆっくりしてからおいで》との事でございます。」

　気遣いに感謝しつつイオリとヒューゴはそれぞれの部屋で風呂に入った。
　子供達はモーナの手によって速やかにお風呂に放り込まれ、イオリ達が風呂から出て覗きに来るとニナだけでなく双子とナギまで眠りについていたのであった。

「流石に疲れましたかね。
　また、明日・・・。」

　イオリはアウラに子供達を頼み静かに扉を閉めた。

「さぁ、俺達もテオさん達に挨拶して今日は早めに休むとしよう。
　明日も行く所があるからね。」

　イオリ達はテオルド達が待つ部屋へ向かっていった。