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束の間のポーレット

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「気をつけて帰れよ!!」

「またね。」

 手を振っているダンとローズの夫婦に別れを告げ、暗くなり街灯が明るくなり出した道を歩き出したイオリ達は武防具職人のカサドの工房へ向かった。

 夕飯を食べ、疲れたのかニナはスヤスヤと眠ってしまい、ヒューゴに抱かれている。

「双子とナギは疲れてないかい?」

「「平気!」」
「ぼくも」

 双子は本当に平気そうにピョンピョン飛んでいるが、ナギは少しばかり疲れてそうだ。
 イオリが抱き上げるとナギは嬉しそうに抱きついてきた。

「カサドさん元気かなー。」
「また、ドンドン叩いたらさ。
 ウルセー!!って出て来るんじゃない?」

 双子はクスクスと笑いながら、目の前まで来たカサドの工房まで走っていくと扉をドンドンと叩き出した。

「ウルセー!!
 静かに帰ってこれねーのか!?」

 ゲラゲラ笑う双子に苦笑しイオリはカサドに手を振った。

「すみません。
 ただいま帰りました。武防具のメンテナンスをお願いしたいんですけど、今から良いですか?」

 カサドは元気な姿のイオリ達を見て安心したのか、ニヤッと笑い手招きした。

「入れよ。
 王都の噂はここいらでも聞こえてたぜ。
 オークの集落を潰したんだって?冒険者どもが騒がしいのなんの。
 何処かで知ったのか、お前らの武防具を俺が作ってるのを聞いた客が後を立たねー。
 面倒だから、冒険者ギルドで対応してもらって俺は作る事に専念してる。
 ダメな客はキッパリ断ってるがな。」

 変わらず剛気なカサドは散乱していたテーブルを一気に手で払い除けイオリ達が武防具を置く場所を作った。
 真っ先に置いた双子の剣を手に取るとカサドは唸った。

「使い方が様になってきたんじゃねーか?
 以前のような、無駄切りが少ねーな。
 特にパティは手数が多いからな。
 調整しておこう。
 スコルはグリップだな。よしよし・・・。」

 イオリ達は奥で普段着に着替えると旅でお世話になった防具達をテーブルに並べた。

「おうおうおう。
 なかなか酷使してやがんな。
 イオリ!お前背中から落ちたのか?大丈夫かよ。」

「大丈夫でした。
 防具のおかげで軽症ですみましたよ。」

 イオリの言葉にニッコリとしたカサドは次々に手に取っては、直す箇所を記憶し始めた。

「それと、ニナ何ですけど魔法が使えるようになったんです。
 まだまだ威力や魔力量はないけれど力の使い方は学ばせようと思って、戦闘服を作ってもらえませんか?
 他にも子供達は成長も早いしカサドさんの目から見て最適なのをお願いします。
 新しいのでも構いません。」

 カサドはソファーに寝かされているニナを驚いた顔で見てから、頷いた。

「分かった。魔法使いとなれば、それなりの準備も必要だな。
 測量は眠らせたままでやろう。
 お前らも測量するぞ。
 特にナギは新しい動き方や力の使い方を教えろ。
 お前は予測し辛いからな。」

 ヒューゴとイオリの手を借りてカサドはニナの測量を進めた。

「やっぱり、小せえな。
 こんな小せえ体に魔力を溜め続けると良い事ないぜ。
 お前らは武器職だろう?ちびっ子に師匠はいるのか?」

「サブマスのエルノールさんが教えてくれる事になりました。
 修行に入ります。」

 カサドは満足したように頷いた。

「エルノールなら良い。間違いないからな。
 修行って、街を離れるのか?
 急がないとまずいな。」

「いつも急かしてスミマセン。
 魔の森の奥に行こうと思います。」

 カサドは目を見開くと小さいニナの頭を撫でた。

「そうか・・・。
 それなら最高なのを作らないとな。
 任せとけ。」

 その後は順調に子供達を測量し直し、イオリとヒューゴはメンテナンスの依頼だけにとどまった。
 カサドは子供達から貰ったお土産をニコニコしながらも「仕事が終わったら」と棚に仕舞い込んだ。

 イオリはデザインを《あーでもない、こーでもない》と話し合うカサドと子供達を見てヒューゴと苦笑した。
 カサドに頼んだ武防具ができれば“明けない魔の森”に出発する。

 イオリは1人、数日後に迫る魔の森へ思いを馳せた。
 
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