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束の間のポーレット

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「何!?また、旅に出るだと?」

 ポーレット公爵領にある“日暮れの暖炉”という名の宿の店主・ダンは笑顔で報告する子供達に驚いた。

「「うん!修行!!」」

 双子は出されたジューシーな鶏肉に齧り付きながらも頷いた。

「ついこの間、帰ってきたばかりじゃない!」

 ダンの妻で宿の女将であるローズはナギの口元を吹きながらも眉を下げた。

「そうなんですけど・・・。アイツが・・・。
 今回はミズガルドで目立ちすぎたんで、アースガイルで噂が広まるのも時間の問題だから面倒に巻き込まれる前に逃げるって言ってましたよ。
 慌ただしいですけど、俺もそう思います。」

 ヒューゴはニナに鶏肉を取り分けながらもダン達に話した。
 ダンは唸ると納得しながらも寂しさを隠そうとしなかった。

「そうは言ってもな・・・。
 で、アイツは何処に行ってんだ?」

「ギルドに呼び出されてるのと、教会に行くって言ってました。」

 ヒューゴはニッコリと鶏肉を頬ばった。






 テオルド・ドゥ・ポーレット公爵一行が自領ポーレットの街に帰ってきたのは2日前の事だった。

 領主の帰りを待っていた市民達は大いに出迎え、街の至る所から鐘の音が響き主人の帰りを祝っていた。

「凄い綺麗な音だね。
 出発の時も凄かったけど、出迎えの方が派手な気がする。」

 イオリは夢中になって外を見ている子供達と一緒に顔を出した。

「テオルド様がそれだけ市民達に好かれているという事だろう?」

 御者席に座り手綱を持っているヒューゴが微笑んだ。

 イオリ達は懐かしく感じる壁門に近づくと治安維持隊に身分証を提示した。

「お帰り!!元気そうで安心したよ。」

 駆け寄ってきたポルトスに気づくと笑顔でブンブンと手を振っている。

 検問を通り過ぎると馬車置き場で降り、腰バックに馬車を閉まった。
 当たり前のように驚かれたがイオリ達は慣れたもので気にしない。
 近づいてきたポルトスに子供達は走り寄っていった。

「「「「ただいまー!!」」」」

「あはは。長旅なのに元気だな。
 直ぐに帰るのかい?
 今日到着するって伝えたら、ダンさんが朝からソワソワしてたよ。
 顔出して行くだろう?」

 ポルトスは子供達の後でニコニコしているイオリに顔を向けた。

「勿論です。
 “日暮れの暖炉”を無視して通れませんよ。
 にしても、凄い出迎えでしたね。
 遠くからも綺麗な鐘の音が聞こえましたよ。」

「そうだろう?
 何たって公爵様の帰還だからな。
 ポーレットの市民としてはシケタ事出来ないさ。
 領主の帰還は派手に迎えるのさ。」

 ポルトスの後ろから治安維持隊隊長・ロディがやって来た。

「隊長さん!ただいま帰りました。」

「おうよ。お帰り。」

 イオリとロディは握手するとニッコリと再会を喜んだ。

「ポーレットに変わりはありませんか?」

「ポーレット公爵が王都で菓子やらを紹介してから多方面から商人の往来が多くなった。
 それに伴い犯罪も増えたからな、一時期は冒険者ギルドの手を借りて一掃するのに忙しかったよ。
 今は落ち着いてきたって所だな。」

 ロディは腰に手を当てながらも溜息をついた。

「王都でも話題になりましたからね。
 公爵が帰ってきたとしたら、また煩いのが増えそうですね。」

 ヒューゴは眉間を寄せていた。

「まぁ、コツコツやるさ。
 さぁ、行きな。
 待ってる奴らがいるだろう?」

 苦笑していたロディはイオリの肩を叩いた。

「はい!それじゃ、また。」

 子供達はイオリから包紙を受け取るとポルトスに差し出した。

「これ、お土産!」
「治安維持隊のみんなで食べてね。」
「こっちはポルトスさんのね。」
「ばいばい。」

 ポルトスは微笑むと手を振りながら街へ消えていくイオリ達を見送り呟いた。

「お帰り・・・。」

「おい。その土産は俺のでもあるんだろ。
 寄越せ!」

「分かってますよ!
 こんなとこで騒がないで下さいよ。
 隊長!!
  
 あっ!独り占めは駄目ですってばー!!」

 今日のポーレットは平和のようである。 
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