417 / 473
束の間のポーレット
489
しおりを挟む
「何!?また、旅に出るだと?」
ポーレット公爵領にある“日暮れの暖炉”という名の宿の店主・ダンは笑顔で報告する子供達に驚いた。
「「うん!修行!!」」
双子は出されたジューシーな鶏肉に齧り付きながらも頷いた。
「ついこの間、帰ってきたばかりじゃない!」
ダンの妻で宿の女将であるローズはナギの口元を吹きながらも眉を下げた。
「そうなんですけど・・・。アイツが・・・。
今回はミズガルドで目立ちすぎたんで、アースガイルで噂が広まるのも時間の問題だから面倒に巻き込まれる前に逃げるって言ってましたよ。
慌ただしいですけど、俺もそう思います。」
ヒューゴはニナに鶏肉を取り分けながらもダン達に話した。
ダンは唸ると納得しながらも寂しさを隠そうとしなかった。
「そうは言ってもな・・・。
で、アイツは何処に行ってんだ?」
「ギルドに呼び出されてるのと、教会に行くって言ってました。」
ヒューゴはニッコリと鶏肉を頬ばった。
テオルド・ドゥ・ポーレット公爵一行が自領ポーレットの街に帰ってきたのは2日前の事だった。
領主の帰りを待っていた市民達は大いに出迎え、街の至る所から鐘の音が響き主人の帰りを祝っていた。
「凄い綺麗な音だね。
出発の時も凄かったけど、出迎えの方が派手な気がする。」
イオリは夢中になって外を見ている子供達と一緒に顔を出した。
「テオルド様がそれだけ市民達に好かれているという事だろう?」
御者席に座り手綱を持っているヒューゴが微笑んだ。
イオリ達は懐かしく感じる壁門に近づくと治安維持隊に身分証を提示した。
「お帰り!!元気そうで安心したよ。」
駆け寄ってきたポルトスに気づくと笑顔でブンブンと手を振っている。
検問を通り過ぎると馬車置き場で降り、腰バックに馬車を閉まった。
当たり前のように驚かれたがイオリ達は慣れたもので気にしない。
近づいてきたポルトスに子供達は走り寄っていった。
「「「「ただいまー!!」」」」
「あはは。長旅なのに元気だな。
直ぐに帰るのかい?
今日到着するって伝えたら、ダンさんが朝からソワソワしてたよ。
顔出して行くだろう?」
ポルトスは子供達の後でニコニコしているイオリに顔を向けた。
「勿論です。
“日暮れの暖炉”を無視して通れませんよ。
にしても、凄い出迎えでしたね。
遠くからも綺麗な鐘の音が聞こえましたよ。」
「そうだろう?
何たって公爵様の帰還だからな。
ポーレットの市民としてはシケタ事出来ないさ。
領主の帰還は派手に迎えるのさ。」
ポルトスの後ろから治安維持隊隊長・ロディがやって来た。
「隊長さん!ただいま帰りました。」
「おうよ。お帰り。」
イオリとロディは握手するとニッコリと再会を喜んだ。
「ポーレットに変わりはありませんか?」
「ポーレット公爵が王都で菓子やらを紹介してから多方面から商人の往来が多くなった。
それに伴い犯罪も増えたからな、一時期は冒険者ギルドの手を借りて一掃するのに忙しかったよ。
今は落ち着いてきたって所だな。」
ロディは腰に手を当てながらも溜息をついた。
「王都でも話題になりましたからね。
公爵が帰ってきたとしたら、また煩いのが増えそうですね。」
ヒューゴは眉間を寄せていた。
「まぁ、コツコツやるさ。
さぁ、行きな。
待ってる奴らがいるだろう?」
苦笑していたロディはイオリの肩を叩いた。
「はい!それじゃ、また。」
子供達はイオリから包紙を受け取るとポルトスに差し出した。
「これ、お土産!」
「治安維持隊のみんなで食べてね。」
「こっちはポルトスさんのね。」
「ばいばい。」
ポルトスは微笑むと手を振りながら街へ消えていくイオリ達を見送り呟いた。
「お帰り・・・。」
「おい。その土産は俺のでもあるんだろ。
寄越せ!」
「分かってますよ!
こんなとこで騒がないで下さいよ。
隊長!!
あっ!独り占めは駄目ですってばー!!」
今日のポーレットは平和のようである。
ポーレット公爵領にある“日暮れの暖炉”という名の宿の店主・ダンは笑顔で報告する子供達に驚いた。
「「うん!修行!!」」
双子は出されたジューシーな鶏肉に齧り付きながらも頷いた。
「ついこの間、帰ってきたばかりじゃない!」
ダンの妻で宿の女将であるローズはナギの口元を吹きながらも眉を下げた。
「そうなんですけど・・・。アイツが・・・。
今回はミズガルドで目立ちすぎたんで、アースガイルで噂が広まるのも時間の問題だから面倒に巻き込まれる前に逃げるって言ってましたよ。
慌ただしいですけど、俺もそう思います。」
ヒューゴはニナに鶏肉を取り分けながらもダン達に話した。
ダンは唸ると納得しながらも寂しさを隠そうとしなかった。
「そうは言ってもな・・・。
で、アイツは何処に行ってんだ?」
「ギルドに呼び出されてるのと、教会に行くって言ってました。」
ヒューゴはニッコリと鶏肉を頬ばった。
テオルド・ドゥ・ポーレット公爵一行が自領ポーレットの街に帰ってきたのは2日前の事だった。
領主の帰りを待っていた市民達は大いに出迎え、街の至る所から鐘の音が響き主人の帰りを祝っていた。
「凄い綺麗な音だね。
出発の時も凄かったけど、出迎えの方が派手な気がする。」
イオリは夢中になって外を見ている子供達と一緒に顔を出した。
「テオルド様がそれだけ市民達に好かれているという事だろう?」
御者席に座り手綱を持っているヒューゴが微笑んだ。
イオリ達は懐かしく感じる壁門に近づくと治安維持隊に身分証を提示した。
「お帰り!!元気そうで安心したよ。」
駆け寄ってきたポルトスに気づくと笑顔でブンブンと手を振っている。
検問を通り過ぎると馬車置き場で降り、腰バックに馬車を閉まった。
当たり前のように驚かれたがイオリ達は慣れたもので気にしない。
近づいてきたポルトスに子供達は走り寄っていった。
「「「「ただいまー!!」」」」
「あはは。長旅なのに元気だな。
直ぐに帰るのかい?
今日到着するって伝えたら、ダンさんが朝からソワソワしてたよ。
顔出して行くだろう?」
ポルトスは子供達の後でニコニコしているイオリに顔を向けた。
「勿論です。
“日暮れの暖炉”を無視して通れませんよ。
にしても、凄い出迎えでしたね。
遠くからも綺麗な鐘の音が聞こえましたよ。」
「そうだろう?
何たって公爵様の帰還だからな。
ポーレットの市民としてはシケタ事出来ないさ。
領主の帰還は派手に迎えるのさ。」
ポルトスの後ろから治安維持隊隊長・ロディがやって来た。
「隊長さん!ただいま帰りました。」
「おうよ。お帰り。」
イオリとロディは握手するとニッコリと再会を喜んだ。
「ポーレットに変わりはありませんか?」
「ポーレット公爵が王都で菓子やらを紹介してから多方面から商人の往来が多くなった。
それに伴い犯罪も増えたからな、一時期は冒険者ギルドの手を借りて一掃するのに忙しかったよ。
今は落ち着いてきたって所だな。」
ロディは腰に手を当てながらも溜息をついた。
「王都でも話題になりましたからね。
公爵が帰ってきたとしたら、また煩いのが増えそうですね。」
ヒューゴは眉間を寄せていた。
「まぁ、コツコツやるさ。
さぁ、行きな。
待ってる奴らがいるだろう?」
苦笑していたロディはイオリの肩を叩いた。
「はい!それじゃ、また。」
子供達はイオリから包紙を受け取るとポルトスに差し出した。
「これ、お土産!」
「治安維持隊のみんなで食べてね。」
「こっちはポルトスさんのね。」
「ばいばい。」
ポルトスは微笑むと手を振りながら街へ消えていくイオリ達を見送り呟いた。
「お帰り・・・。」
「おい。その土産は俺のでもあるんだろ。
寄越せ!」
「分かってますよ!
こんなとこで騒がないで下さいよ。
隊長!!
あっ!独り占めは駄目ですってばー!!」
今日のポーレットは平和のようである。
988
お気に入りに追加
18,278
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。