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帰還 ー王都ー

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 街に広がった薄霧が晴れ始めた頃、人通りの少ない道をポーレット公爵家の馬車を騎士達が誘導して移動するのを数人の市民達が目撃していた。
 太陽が登り始めると一斉に噂が流れ出し、貴族達の耳にも届いていった。

 慌てた多くの貴族は真相を確かめるように王城へ詰めかけ、宰相グレン・ターナーに説明を求めた。

「ポーレット公爵家は本来、この時期一年の中で一番忙しい時期に入ります。
 国王陛下のお呼び出しにより、忙しい合間を練って王都へお越しいただいたのです。
 公爵は領地を守ってくれている民に迷惑はかけられないと最低限のお付き合いをされてから王都をお立ちになられました。
 
 王命にございます。
 しばらくの間、ポーレット公爵家に赴く事も招待状や手紙など連絡を取る事は禁じます。
 仕事の上でどうしてもと言うお方がいれば、私に一報下さい。」

 グレンは集まった貴族に伝えると足早に去って行った。

「それでは、お茶会にお呼びしてはいけないと?」

「それでは、御子息に娘を会わせられないではないか!」

「秘密裏に連絡を取っても、後で痛い目に合うしな。」

「八方塞がりだ・・・。」

 大きな溜息が謁見の間に広がるのを王太子ギルバートと第2王子ディビットは苦笑して見ていた。

「早めに動いて正解だったな。」

「はい。あとは無事に領地にお帰りになれば問題ありません。」

 王家の兄弟は帯同する小さな馬車の主人を想い、「「それは大丈夫だな・・・。」」と微笑んだ。




「貴族達は諦めそうか?」

「どうでしょう?
 時間の問題かと思いますよ?」

 宰相グレンが執務室に現れると国王アルフレッドは顔を上げた。

「まぁ、甥2人に関しては、いつかは貴族の勤めを果たして貰わねばならんからな。
 あとは産業の問題か?
 王都も積極的にポーレットと取引をせよ。
 それに、ダグスクともな。」

「畏まりましてございます。」

 国王と宰相は未知なる未来を考察しながらも、今回訪れた真っ黒な青年との出会いに感謝していた。
 規格外な力を持ちながらも優しさを忘れず、己の心に素直な青年・・・。
 彼が大好きだと言った、この国の先人達の苦労に思いを馳せ、国王アルフレッドは微笑むと執務に戻った。






「王都、面白かったね。」

 イオリは馬車の後ろにかたまり、名残惜しそうに王都の方角を見つめている子供達と従魔達に声をかけた。

「「「「・・・・うん。」」」」

「また来ようね。アルさんがおいでって言ってたし。」

「「「「!!!うん!!!」」」」

 王都が気に入ったのか、人が気に入ったのか、子供達が王都に愛着を持って良かったと安堵したイオリは腰バックから飴を取り出し子供達の口に入れていった。

「「「「甘ーーーい!」」」」

「フフフ。最後まで、飴が口に残っているのは誰でしょう?」

 イオリの悪戯顔に子供達はクスクスとすると、様々な顔で飴を残す努力に興じた。
 フワフワの毛を撫でながらイオリはゼンに呟いた。

「さぁ、ポーレットへ帰ろう。そうしたら、次は魔の森の泉に帰ろうね。」

『うん!楽しみだな。楽しみだな。』


 ポーレットへ向かう小さな馬車は笑い声を乗せて進んで行く。
 イオリの二回目の旅の終わりはもうすぐのようだ。

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