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帰還 ー王都ー
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離宮・シグマに尋ねてきたダグスク侯爵オーウェンと婚約者リサ嬢との時間は和やかに過ぎていった。
「ところで、よく俺が王都に来ているって知りましたね。」
イオリの疑問にオーウェンはクスクスと笑った。
「王城にポーレット公爵がいらっしゃるのは知っていましたから、初めは公爵だけにご挨拶をと思っていたんです。
そうしたら、衛兵達の話が聞こえてきましてね。
《ポーレット公爵の護衛役は白い狼を連れている真っ黒な衣装の青年》だって。
それを聞いたらイオリさんだろうなって。」
オーウェンの後ろに立つレイナードも笑いながら頷いた。
「それは・・・衛兵の口も止めるのは難しいか。」
テオルドは苦笑しながらも目だけは笑っていなかった。
「他にも、ミズガルドの件で多少なりとも噂はされています。
最近の発展も含めてポーレット公爵と繋ぎを付けたい貴族は増えているはずです。」
オーウェンの心配はテオルドも感じている事だった。
「早めに会いに来てくれて良かった。
我々は近日中にも領地に戻る予定であったんだ。」
「そうでしたか。
勇気を出して良かったです。」
若き侯爵にテオルドは微笑むと、次世代のニコライにも信頼できる人物が出来たと安心していた。
「邪魔するぞ!!」
そんな時、乱暴に現れた人物にオーウェンとリサ嬢は驚き硬直した。
「あっ、アルさん。
お菓子いりますか?」
「おお、貰おう。」
気軽なイオリと国王の会話に怯えつつ、オーウェン達は立ち上がった。
「客であったか?
そなたはダグスク侯爵ではないか。」
ハミルトンが用意した紅茶に口をつけつつ、アルフレッドはオーウェンに声を掛けた。
「はっ!ダグスク領より参りました。
オーウェン・ダグスクでございます。
若年の私を覚えて頂きまして有り難うございます。」
「以前に会ったのは後継の承認を受けに王都へ参った時であったな。
苦難があったと聞いたが、今はどうだ?」
「はい。ポーレット公爵やイオリさんのお陰で道筋が見えて参りました。
市民も街を上げて助けてくれていますので、近年中にも良いご報告ができればと思っています。」
「そうか。焦らず励みなさい。
分かっていると思うが、1人で抱え込まないように。
民は馬鹿ではないぞ。」
国王の助言に頷くとオーウェンは婚約者を紹介し国王自ら大いに祝いの言葉を貰った。
「で?どうしたんです?兄上。」
一連を黙って見ていたテオルドはどら焼きを頬張るアルフレッドに呆れながら聞いた。
「そうだった。ダグスクもいるのなら、ちょうど良い。
イオリを借りるぞ。
約束の物を見せようと思って、誘いに来たのだ。」
「それなら、言付けでいいではないですか。」
首を傾げるテオルドに隣にいたオルガ夫人がクスクスした。
「分かっていないのね。貴方は。
直接来ないと、美味しいおやつが手に入らないではないの。」
オルガ夫人は琥珀糖に手を伸ばす国王が、子供達に糖分の摂取量についてお小言を貰っている姿を見せるとリサ嬢と共に笑った。
「兄上・・・。」
「くっ・・・子供らは守りが鉄壁だな。
まぁ、良い。
男達はついて来い。初代の残した記述を見せてやろう。
オルガ、リサ嬢。夕飯までに戻る、それまで此奴らを借りていくぞ。」
「ええ、どうぞ。
私達はゆっくりお茶でもしております。」
オルガ夫人に続きリサも微笑むとアルフレッドは席を立った。
何がなんだか分かっていないオーウェンは慌てたようにテオルド達について行く。
「じゃあ、行ってきます。
みんな、留守を頼むね。
ゼン。初代の記述だって行こう。」
イオリはゼンを連れてアルフレッド達の後を追った。
「ところで、よく俺が王都に来ているって知りましたね。」
イオリの疑問にオーウェンはクスクスと笑った。
「王城にポーレット公爵がいらっしゃるのは知っていましたから、初めは公爵だけにご挨拶をと思っていたんです。
そうしたら、衛兵達の話が聞こえてきましてね。
《ポーレット公爵の護衛役は白い狼を連れている真っ黒な衣装の青年》だって。
それを聞いたらイオリさんだろうなって。」
オーウェンの後ろに立つレイナードも笑いながら頷いた。
「それは・・・衛兵の口も止めるのは難しいか。」
テオルドは苦笑しながらも目だけは笑っていなかった。
「他にも、ミズガルドの件で多少なりとも噂はされています。
最近の発展も含めてポーレット公爵と繋ぎを付けたい貴族は増えているはずです。」
オーウェンの心配はテオルドも感じている事だった。
「早めに会いに来てくれて良かった。
我々は近日中にも領地に戻る予定であったんだ。」
「そうでしたか。
勇気を出して良かったです。」
若き侯爵にテオルドは微笑むと、次世代のニコライにも信頼できる人物が出来たと安心していた。
「邪魔するぞ!!」
そんな時、乱暴に現れた人物にオーウェンとリサ嬢は驚き硬直した。
「あっ、アルさん。
お菓子いりますか?」
「おお、貰おう。」
気軽なイオリと国王の会話に怯えつつ、オーウェン達は立ち上がった。
「客であったか?
そなたはダグスク侯爵ではないか。」
ハミルトンが用意した紅茶に口をつけつつ、アルフレッドはオーウェンに声を掛けた。
「はっ!ダグスク領より参りました。
オーウェン・ダグスクでございます。
若年の私を覚えて頂きまして有り難うございます。」
「以前に会ったのは後継の承認を受けに王都へ参った時であったな。
苦難があったと聞いたが、今はどうだ?」
「はい。ポーレット公爵やイオリさんのお陰で道筋が見えて参りました。
市民も街を上げて助けてくれていますので、近年中にも良いご報告ができればと思っています。」
「そうか。焦らず励みなさい。
分かっていると思うが、1人で抱え込まないように。
民は馬鹿ではないぞ。」
国王の助言に頷くとオーウェンは婚約者を紹介し国王自ら大いに祝いの言葉を貰った。
「で?どうしたんです?兄上。」
一連を黙って見ていたテオルドはどら焼きを頬張るアルフレッドに呆れながら聞いた。
「そうだった。ダグスクもいるのなら、ちょうど良い。
イオリを借りるぞ。
約束の物を見せようと思って、誘いに来たのだ。」
「それなら、言付けでいいではないですか。」
首を傾げるテオルドに隣にいたオルガ夫人がクスクスした。
「分かっていないのね。貴方は。
直接来ないと、美味しいおやつが手に入らないではないの。」
オルガ夫人は琥珀糖に手を伸ばす国王が、子供達に糖分の摂取量についてお小言を貰っている姿を見せるとリサ嬢と共に笑った。
「兄上・・・。」
「くっ・・・子供らは守りが鉄壁だな。
まぁ、良い。
男達はついて来い。初代の残した記述を見せてやろう。
オルガ、リサ嬢。夕飯までに戻る、それまで此奴らを借りていくぞ。」
「ええ、どうぞ。
私達はゆっくりお茶でもしております。」
オルガ夫人に続きリサも微笑むとアルフレッドは席を立った。
何がなんだか分かっていないオーウェンは慌てたようにテオルド達について行く。
「じゃあ、行ってきます。
みんな、留守を頼むね。
ゼン。初代の記述だって行こう。」
イオリはゼンを連れてアルフレッド達の後を追った。
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