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新たな旅 ーミズガルドー

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 それから数日経ち、国交について、貿易や軍事、賠償などについて難航すると思われていた事もトーレチカ新国王が全てを飲み込んだ事、それに伴いアースガイルが多額の賠償金を請求しなかった事にすんなりと決まっていった。

 残された貴族の中には不満を漏らす者もいたが、それはこれからトーレチカ新国王の手腕で国をまとめ上げていくしかない。
 それにはイグナートを含め、トーレチカ新国王を親愛する貴族達が手を貸していくだろう。
 
 ギルバートは大仕事を終え、本日帰国の途につく。

「滞在中は世話になりました。」

 手を差し出すギルバートにトーレチカは握り返した。

「こちらこそ、本当に世話になった。
 アースガイル王によろしく伝えてくれ。
 貴方の国の様に目指すと。」

「それは父が喜びます。
 初代アースガイル王も国を立ち上げた後、大変苦労したと聞きます。
 しかし、仲間に支えられて今のアースガイルの基盤を作り上げました。
 我が国もまだまだ成長していかなければなりません。
 どうか、トーレチカ新国王。お一人で抱え込まれないようになさってください。
 アースガイルはトーレチカ新国王を応援いたします。
 またお会いできます事がありますれば、いずれまた・・・。」

 ギルバートは馬車に乗り込んだ。
 ヴァルトもトーレチカと握手をすると頭を下げた。

「世話になった。ヴァルト殿。」

「トーレチカ新国王もイグナート様もお世話になりました。
 私の様な若輩者の話を聞いてくれて感謝いたします。
 両国の友好に希望を持って帰ります。
 どうぞ、お身体をご自愛ください。
 
 イグナート様、奥方様にもよろしくお伝えください。
 それでは。」

 続けて馬車に乗り込んだ。
 それぞれの従者も馬に乗り込んだのを確認するとザックス・ヒル将軍の掛け声で一団は出発するのだった。

「出発!!」

 手付かずの瓦礫の城を背に出発したアースガイル国の一行を一目見ようと王都に集まった市民の姿があった。
 軍1つをとっても美しいアースガイルにミズガルドの市民達は目を輝かしていたのであった。

 アースガイル一行の1番後ろに可愛らしい馬車があった。
 その目立たない小さな馬車を気にする者などいなかった。
 そんな中、新国王と弟であるイグナートはその馬車の脇に立っている青年を見つめていた。
 子供達が顔を出し手を振るのをトーレチカは目を細めて微笑みイグナートは手を振り返した。
 ヒューゴが御者席に座りアウラに合図をすると馬車が動き出した。
 外に立っていたイオリは一礼すると馬車の荷台に飛び乗った。

 馬車から真っ赤な小鳥が飛び出てきて、小さな手紙を加えてやってきた。
 トーレチカの掌に落とすと再び馬車に戻っていく。
 微笑みながらも開いた手紙には短く一言《また、会いましょう。》と書かれていた。

 正式に発表できない英雄に新国王は静かに頭を下げた。
 彼が・・・彼の家族と共に安心して訪れる事が出来る国造りをしよう。
 “ひきこもり公”だった男は決意を胸に王宮に戻っていった。

 
 
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