上 下
384 / 472
新たな旅 ーミズガルドー

456

しおりを挟む
「僕もみんなと一緒に行くよ!」

 子供達とお菓子を食べていたラックがトコトコとゴヴァンの隣に来てイオリを見上げた。

「お前はイオリ様の側に居て良いんだぞ?」

 慌てるゴヴァンにラックは首を振った。

「一緒に拐われたライオンのお兄ちゃんやウサギのお姉ちゃんを助けたい。
 他にも村の子供達が拐われたんだ。
 僕も皆んなを助けたい!
 そりゃ、僕だってイオリ達と一緒にいたいよ?
 でも、助けを待ってる人がいるなら、僕は行くよ。
 
 おじさんも、僕が居た方が嬉しいでしょ?」

「このやろー!!」

 ゴヴァンはラックの頭をクシャクシャすると目を擦った。

「ラック。おいで。」

 イオリの声にラックは前に出てきた。

「ラックの気持ちは分かった。
 俺がラックの立場でも同じ様に言っただろう。
 でもね。ラックが全てを背負わなくていいんだよ?
 疲れたら、俺達のところにおいで。
 どんな時でも美味しいご飯を作って待ってるから。
 ラックは俺の友達だ。
 そうだろ?」

 嬉しそうに頷くラックはイオリに抱きついた。

「ありがとう。イオリ。
 助けてくれた事も、優しくしてくれた事も、イオリのご飯大好きだ。」

「行っておいで。
 友よ、また会おう。」

 イオリはラックを強く抱きしめた。

「「「「ラック!!」」」」

 子供達もラックに駆け寄ると抱きしめた。

「遊びにきてね。」
「体に気をつけて。」
「お腹空いたらおいでね。」
「友達を見つけろよ。」

「うん!!みんな、行ってくるね。」

 ギルバートとヴァルトはラックの覚悟を受け取りミズガルド側と交渉するのであった。
 大きな戦力となる、元暗部のメンバーの去就については様々な意見があったがトーレチカの一言で無罪放免となった。

「私は、みんなとアースガイルの橋渡しに時々は顔を出す事にしよう。」

 リルラはギルバートに手を出すとギルバートはギュッと握り返した。

「気をつけて。」

「世話になりました。」

 そして、イオリの前に来たリルラは膝をついてイオリの手をとった。

「我らはアースガイルに恩があれど、忠誠を誓うはイオリ様でございます。
 どうか、手助けがいる時はお呼びください。
 必ず駆けつけますから。」

「イオリ様ってやめてよ。
 いつもと同じでいいよ。
 リルラのおかげで、多くの命が救われたし、俺個人的にも心配事が減ったよ。
 ありがとう。
 また会おうね。」

 リルラはニッコリと頷くとラックや仲間達を連れて部屋を出ていった。

「「「「「バイバイ、またね!」」」」」

 手を振る子供達に最後までラックは手を振っていた。
 イオリの手にはリルラから渡された小さな笛があった。

「それは・・・聞いた事があります。
 エルフが信頼する者に渡す、連絡用の笛があるとか。
 確か、自身の魔力を移しているらしいです。
 どこにいても連絡が取れるそうですよ。」

 オーブリーの言葉にナギが興味深そうに覗き込んだ。

「そんな大切な物を・・・。
 大事にしなきゃ。」

 イオリは静かに腰バックに仕舞い込んだのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士
ファンタジー
役立たずの烙印を押されパーティを追放された少年、ルカ。 しかし、彼には秘められたスキルと目標に向けて努力するひたむきさがあった。 そんな彼を認め、敬愛する新たな仲間が周囲に集まっていく。少年は仲間と共に冒険者の最高峰を目指す。 ※ノベルアップ+にも投稿しています。

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ~【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 俺は社畜だ。  ふと気が付くと見知らぬ場所に立っていた。  諸々の情報を整理するに、ここはどうやら異世界のようである。  『ジョブ設定』や『ミッション』という概念があるあたり、俺がかつてやり込んだ『ソード&マジック・クロニクル』というVRMMOに酷似したシステムを持つ異世界のようだ。  俺に初期スキルとして与えられた『ジョブ設定』は、相当に便利そうだ。  このスキルを使えば可愛い女の子たちを強化することができる。  俺だけの最強ハーレムパーティを築くことも夢ではない。  え?  ああ、『ミッション』の件?  何か『30年後の世界滅亡を回避せよ』とか書いてあるな。  まだまだ先のことだし、実感が湧かない。  ハーレム作戦のついでに、ほどほどに取り組んでいくよ。  ……むっ!?  あれは……。  馬車がゴブリンの群れに追われている。  さっそく助けてやることにしよう。  美少女が乗っている気配も感じるしな!  俺を止めようとしてもムダだぜ?  最強ハーレムを築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!  ※主人公陣営に死者や離反者は出ません。  ※主人公の精神的挫折はありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。