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新たな旅 ーミズガルドー
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ミズガルド新国王トーレチカとアースガイル王太子ギルバートの会談が行われたのは翌日の事であった。
事件によって貴賓をもてなす謁見の間は壊れ、その代わりに美しさを保った庭園でテーブルを用意して行われることになった。
「アースガイルの王太子殿に対し挨拶も早々に、この様な会談にお越しいただき申し訳もない。
私が国王になったトーレチカだ。
前国王政権の事とは言え、アースガイルには迷惑をかけた。
加えて、ポーレット公爵子息には大変力になってもらった。
感謝しようがない。」
口を切ったのはミズガルド新国王トーレチカだった。
国王だけでなく同席するイグナート・カレリン公爵や再び将軍になったグロトフ将軍に内政官達も神妙に頭を下げた。
それに対し、アースガイルを代表して来たギルバート王太子は従兄弟のヴァルトを含め自身達の従者を連れて現れた。
「トーレチカ新国王の即位にお祝い申し上げます。
我が国としては生まれ変わる貴国に期待し、新しき関係を築きたいと考えております。
今日はその一歩と考え、より良き話ができればと思います。。
新国王のお気持ちは我が父、アルフレッドに伝えましょう。」
こうして2国間での話し合いが始まったのであった。
ギルバートは自国で起こった事を書面を含め説明し、ルッツ・ヴァハマンとドミトリー・ドナードの行いが他国にも影響を及ぼせていたと自覚したミズガルド陣営は顔を青ざめた。
これから、国の変革に金銭が必要なために賠償金の話し合いには難をしそうである。
「そして、今回の騒動に尽力をしてくれた者達についてお聞きしたい。」
順当に話し合いが進められていく中、ついにイオリが議題に上がっていく。
ギルバートはニッコリ笑うと頷いた。
「冒険者イオリの事ですね。
彼はポーレット公爵の専属冒険者の為に、我が国も王家としても直接命令はできません。
我が王はポーレット公爵の意見を尊重していますし、ポーレット公爵はイオリに自由に活動をする事を認めています。」
「では、イオリ殿がミズガルドにとどまる自由もあると言う事ですか?」
イグナートは思わず身を乗り出した。
「それは、どうでしょう?
確かに我々は彼には自由に世界を見て欲しいと願っていますが、1つの国に留まるとは考えていません。
尚且つ、アースガイルには彼が大事にしている住処がある。
逆に言うと、そこがあるからアースガイルに留まってくれているのですよ。
彼を束縛する事は難しい。
それは、皆さんもお分かりの筈ですが・・・?」
ギルバートがフェンリルとドラゴンの事を言っているのが分かるとミズガルド陣営は青い顔をしている。
「トーレチカ様が国王になられた時に真紅のドラゴンが現れたのです。
国民の中から、ドラゴンに祝福された王と話が広まっています。」
グロトフ将軍の言葉にギルバートは首を振った。
「ドラゴンは瓦礫に叩きつけられたイオリを守る為に現れたのです。
イオリはダンジョン攻略で出会った天空のドラゴンに真紅のドラゴンを与えられました。
国民は信じたい事を広めます。
それを否定するのはあなた方の仕事だ。
ドラゴンに愛された者を利用する気なら、それ相応の覚悟が必要ですよ。」
淡々と話すギルバートの言葉にグロトフ将軍は目を伏せた。
「話は分かった・・・。
アースガイルが、かの者を大切にしている事が分かって安心した。
彼には大蛇と化したドミトリー・ドナードを止め、我が臣下に心のケリを付けさせて貰ったのだ。
これ以上、望む事などない。
我らは噂とやらの訂正に努めよう。
そして、また彼がこの国に来てくれる様に努力をしよう。」
トーレチカの言葉にイグナードとグロトフ将軍は頷いた。
「それなんですがね。
私の方から1つお願いが・・・。」
黙って聞いていたヴァルトが神妙な顔をして願い出た。
「とある、夫婦の遺体を引き取りたい。」
事件によって貴賓をもてなす謁見の間は壊れ、その代わりに美しさを保った庭園でテーブルを用意して行われることになった。
「アースガイルの王太子殿に対し挨拶も早々に、この様な会談にお越しいただき申し訳もない。
私が国王になったトーレチカだ。
前国王政権の事とは言え、アースガイルには迷惑をかけた。
加えて、ポーレット公爵子息には大変力になってもらった。
感謝しようがない。」
口を切ったのはミズガルド新国王トーレチカだった。
国王だけでなく同席するイグナート・カレリン公爵や再び将軍になったグロトフ将軍に内政官達も神妙に頭を下げた。
それに対し、アースガイルを代表して来たギルバート王太子は従兄弟のヴァルトを含め自身達の従者を連れて現れた。
「トーレチカ新国王の即位にお祝い申し上げます。
我が国としては生まれ変わる貴国に期待し、新しき関係を築きたいと考えております。
今日はその一歩と考え、より良き話ができればと思います。。
新国王のお気持ちは我が父、アルフレッドに伝えましょう。」
こうして2国間での話し合いが始まったのであった。
ギルバートは自国で起こった事を書面を含め説明し、ルッツ・ヴァハマンとドミトリー・ドナードの行いが他国にも影響を及ぼせていたと自覚したミズガルド陣営は顔を青ざめた。
これから、国の変革に金銭が必要なために賠償金の話し合いには難をしそうである。
「そして、今回の騒動に尽力をしてくれた者達についてお聞きしたい。」
順当に話し合いが進められていく中、ついにイオリが議題に上がっていく。
ギルバートはニッコリ笑うと頷いた。
「冒険者イオリの事ですね。
彼はポーレット公爵の専属冒険者の為に、我が国も王家としても直接命令はできません。
我が王はポーレット公爵の意見を尊重していますし、ポーレット公爵はイオリに自由に活動をする事を認めています。」
「では、イオリ殿がミズガルドにとどまる自由もあると言う事ですか?」
イグナートは思わず身を乗り出した。
「それは、どうでしょう?
確かに我々は彼には自由に世界を見て欲しいと願っていますが、1つの国に留まるとは考えていません。
尚且つ、アースガイルには彼が大事にしている住処がある。
逆に言うと、そこがあるからアースガイルに留まってくれているのですよ。
彼を束縛する事は難しい。
それは、皆さんもお分かりの筈ですが・・・?」
ギルバートがフェンリルとドラゴンの事を言っているのが分かるとミズガルド陣営は青い顔をしている。
「トーレチカ様が国王になられた時に真紅のドラゴンが現れたのです。
国民の中から、ドラゴンに祝福された王と話が広まっています。」
グロトフ将軍の言葉にギルバートは首を振った。
「ドラゴンは瓦礫に叩きつけられたイオリを守る為に現れたのです。
イオリはダンジョン攻略で出会った天空のドラゴンに真紅のドラゴンを与えられました。
国民は信じたい事を広めます。
それを否定するのはあなた方の仕事だ。
ドラゴンに愛された者を利用する気なら、それ相応の覚悟が必要ですよ。」
淡々と話すギルバートの言葉にグロトフ将軍は目を伏せた。
「話は分かった・・・。
アースガイルが、かの者を大切にしている事が分かって安心した。
彼には大蛇と化したドミトリー・ドナードを止め、我が臣下に心のケリを付けさせて貰ったのだ。
これ以上、望む事などない。
我らは噂とやらの訂正に努めよう。
そして、また彼がこの国に来てくれる様に努力をしよう。」
トーレチカの言葉にイグナードとグロトフ将軍は頷いた。
「それなんですがね。
私の方から1つお願いが・・・。」
黙って聞いていたヴァルトが神妙な顔をして願い出た。
「とある、夫婦の遺体を引き取りたい。」
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