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新たな旅 ーミズガルドー

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 ヴァハマン侯爵が叩きつけた指輪が壊れると黒い煙りが立ち込め10人ほどの人影が現れた

「くはははは! 
 このヴァハマンの手駒が暗部だけと思ってか!!」

 ヴァハマン侯爵を囲むように立っていたのは武装したエルフ達だった。
 しかし、この場にいる者達が知っているエルフ達とは違い、美しいと言うよりは強堅さを持ち煌びやかなエルフと違い闇を背負い込んでいた。
 耳は尖り一目でエルフと分かるが、一言で言うと異形だったのである。

「・・・エルフの里の者か?
 わざわざ不可侵の制約を破ってまで、その男に手を貸すか?」

 イグナートは顔を顰めると、母と妻を自身の背に隠した。

「ダークエルフ・ルミエール様の名の下に我々は人間の支配など恐れない。
 この男は我らにとって利用価値があるだけの事。
 ルミエール様は再び世界を手にする為の第一歩に、この国を御所望だ。
 
 邪魔な者は排除する。
 人間は無様に這いずっていればいい。」

 ポツポツと話すエルフの戦士は槍を構えた。

「その人数で、王宮の全ての人間を抹消する気かい?」

 トーレチカは動揺した様子でもなく淡々とエルフの戦士に声をかけた。

「生温いこの国の貴族など、安易に殺せる。
 この国の貴族は市民に非道と聞いた。
 我らがお前らを皆殺しにすれば、平民達に感謝されるだろう。
 後は操るなど簡単だ。」

「言い得て妙だね。
 我が国の貴族達は物の見方が歪でいてね。
 つくづく救えないんだ。
 本来ならお前の言い分に同意しているところだが、そうはいかなくてね。
 残念だよ。」

 トーレチカはエルフの戦士を睨みつけると前ミズガルド軍・将軍グロトフ伯爵に合図をした。

 グロトフ伯爵を含めた貴族達がエルフの戦士達を囲い込むと武器を手にとった。

「ワハハハハ!
 相手はエルフの里の戦士達だぞ?
 お前ら若きごときが叶うはずがなかろうに!」

 醜悪な笑いをするヴァハマン侯爵にエルフの戦士は裏拳を食らわせた。

「黙れ。我らの力は我らの物。
 わざわざ、お前に言われる筋合いは無い。
 我らは戦士、生温いお前らと一緒にするな。」

 鼻から血を流すヴァハマンは怒りか恐れか、顔を真っ赤にして全身を震わせた。

「躾が出来ていないようだなヴァハマン。
 お前に此奴らを扱う事は出来んよ。
 かといって、我らも安穏とはしていられないが・・・・。」

 トーレチカは玉座の後で震えている国王イヴァンを呆れた顔で見て、イグナートと共に溜息を吐いた。

「私達は関係ない!!帰せ!!」

「そうよ!私を誰と思っているの?」

「争いなどゴメンだ!だから、ヴァハマンについていたというのに・・・。
 こんな事になるなんて!」

 壁側に張り付いていた貴族達が喚き扉に押しかけようとしたが、扉が一向に開かない。

「何故だ!出せ!出してくれ!!」

「嫌よ!死にたくないわ!」

「この国はお終いだ!!」

 会場が混乱に陥っている中、グロトフ伯爵を始めとした戦う意志を持った貴族達はトーレチカとイグナートを守ように陣形を変えた。

「我らの手で、会場を掌握した。
 誰も障壁を超えてくる事など出来ない。
 この部屋にいるものは皆殺しだ・・・。」

 エルフの戦士が惨劇を始めようとした時だった。

 パリンッ!ガチャ。

 大きな音がしたと思うと、会場の扉が静かに開いた。

「お取り込み中、失礼します。
 トーレチカ大公閣下のご招待により参りました。
 アースガイル国ポーレット公爵家が次男ヴァルト・ドゥ・ポーレットにございます。
 
 国王陛下にご挨拶したいのですが、何やらお忙しいご様子。
 お手伝い致しましょう。」

ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 場違いな挨拶の後、会場に聞いた事のない破裂音が響いた。
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