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新たな旅 ーミズガルドー
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「ラック・・・それがお前の名なのか?」
「うん!父さんがつけてくれた大切な名前だ!
おじさんの名前は?」
泣くに泣いたエルフの男は鼻を啜ると、ずっと離れなかったラックに声をかけた。
「・・・エルブだ。」
「・・それは、あの人がつけた名前でしょ?
本当の名前は?」
ブルブルと震える男に、そっと手鏡が差し出された。
男は恐々と鏡を覗くと、一転驚いた様に鏡の中の自分を見つめた。
「喉にあった奴隷印。消えたでしょう?
リルラとラックも同じ様に呪いから解放されたんですよ。
貴方も同じです。
もう怖がらないで。」
青年の声に男は見上げると真っ黒な青年がニコニコとラックの頭を撫でていた。
「俺は冒険者をしているイオリといいます。
リルラとラックと出会って、貴方達に会いにきました。」
手を差し出すイオリに男は涙を流しながら微笑んだ。
「私の名は・・・“ゴヴァン”だ。
母は私をそう呼んでいた。」
「初めまして、ゴヴァンさん。
お会い出来て嬉しいです。」
イオリの手をゴヴァンはしっかりと握り返したのであった。
それからしばらくして、森から出た草原でイオリは料理を始めた。
マルクルが焚き火を始め、トゥーレが解放された者達の体調を見て回っている。
リルラとラックは、そんなトゥーレの後を追いかけ甲斐甲斐しく世話をしていた。
『イオリー!大丈夫。
周りに危険な気配なかったよ。
今日はここでキャンプする?』
「そうだね。
みんな休みたいだろうしね。
ご飯が出来たから、まずは食べよう。
栄養たっぷりなオジヤ作ったから、火傷しないでね。」
『わーい!!
ヴァルト!クロムス!ご飯だって!ご飯だって!!』
辺り一帯にシールドと余計なモノが来ない様に聖域を作り出していたヴァルトと従魔の2匹はゼンの呼び声に嬉しそうに近寄って来た。
「みんな、固形の物は厳しいと思ってオジヤにしました。
熱いですからね。気をつけて食べてくださいね。」
そう言うと、イオリは一人一人に皿を配り始めた。
もと奴隷達は、それを嬉しそうに受け取ると、ゆっくりと食べ始めた。
イオリはゴヴァンの元に行くと皿を差し出した。
「熱いから気をつけて下さいね。
体の不調はありますか?」
ゴヴァンは皿を受け取ると首を振った。
「いや、無い。
起き抜けは体が重かったが、今は楽になってきた。
・・・・旨い。
飯が旨いと感じたのは久々だ。
礼を言う。」
笑顔のゴヴァンにイオリは微笑んだ。
「食べながらで良いから聞いてくれ。
私はアースガイルにある、ポーレットの地を任されている公爵の次男ヴァルトだ。
アースガイルの地で、そこのリルラに出会ってな。
お前達の境遇を聞いた。
私達の手伝いをしてくれているリルラの願いもあって、お前達の解放に来た。
まさか、こんなに早く会えると思っていなかったが皆の笑顔が見れて嬉しい。
私達の王はミズガルドの我が国への干渉を危惧していてな。
それに伴い、ミズガルドの変革を望んでおられる。
お前達の奴隷印を消したのは、そこのイオリによるものだ。
イオリとリルラはお前達の自由を望んでいる。
それは私も同じ事。
故郷に帰りたい者、ミズガルドから出たい者。
己の考えで行く道を決めて良い。
まずは、長年の疲れを取る事だ。
今日はここをキャンプ地としよう。
シールドも張ったから安全だぞ。」
ニッコリと話すヴァルトに元奴隷達は唖然としていた。
ミズガルドでも有名なポーレットの次男といえば、王位継承権を持つ者。
しかも、自分達の忌まわしき奴隷印を解放してくれたのが目の前の青年である事。
何よりも・・・自由・・・長年、求めていた物が手に入った。
再び歓喜に震える元奴隷達をヴァルト達やイオリは微笑んで見ていた。
そして同じ様に喜ぶラックとリルラに安堵するのだった。
「自由を頂いていながら、正直何をしていいか分からない。
どれほど感謝しているか、伝えるのも難しい・・・。
だから、まずは貴方達を手伝わせて欲しい。
ミズガルドの変革・・・それは何よりも望ましいものだ。
だから、私を使ってくれ。」
そう話したゴヴァンに我も我もと元奴隷達は手をあげた。
「しかし、お前達はもう危ない事をしなくて良いのだぞ?」
ヴァルトの困った顔にリルラは首を振った。
「違うね。私達はケリをつけなければいけない相手がいる。
ヴァハマンは無理でも暗部のリーダー・サヴァーノは私達がやる!」
リルラの言葉に同胞達は深く頷き同意した。
________________
「「「「キャーーーーーー!!」」」」
令嬢達の悲鳴が会場に響き渡る中、サヴァーノは四方から刺されている状況に理解が出来ないでいた。
「お・・前・たち・・何故?」
「私と同じさ。
みんな、お前達の奴隷印から解放された。
今はお前達の恐怖から解き放たれて、命令に従うフリをしていたのさ。」
リルラはゆっくりとサヴァーノに近づくと持っていた短剣を喉元に押し付けた。
「私達はお前を始末して本当の意味で解放される。
そして、ようやく前に進めるんだ。」
「ああ。その通りだ。
死んでいった同胞達の仇だ。」
リルラに続きゴヴァンも手に力を込めた。
「グアぁぁぁ・・・主・・様。」
サヴァーノは力を失うと階段から転がっていき、ヴァハマンの近くで絶命した。
自分の手駒達の反旗にヴァハマンは歯軋りをすると横たわったサヴァーノを一瞥した。
「使えぬ男め。」
「お前が1番頼りにしていた男にそれはなかろう?」
トーレチカとイグナートが眉を潜めた時だった。
ヴァハマンは指輪を外すと床に叩きつけた。
「まだ終わりではない!
本当の私の力はこんなもんじゃない!!」
ヴァハマンが気味の悪い笑みを見せたのであった。
「うん!父さんがつけてくれた大切な名前だ!
おじさんの名前は?」
泣くに泣いたエルフの男は鼻を啜ると、ずっと離れなかったラックに声をかけた。
「・・・エルブだ。」
「・・それは、あの人がつけた名前でしょ?
本当の名前は?」
ブルブルと震える男に、そっと手鏡が差し出された。
男は恐々と鏡を覗くと、一転驚いた様に鏡の中の自分を見つめた。
「喉にあった奴隷印。消えたでしょう?
リルラとラックも同じ様に呪いから解放されたんですよ。
貴方も同じです。
もう怖がらないで。」
青年の声に男は見上げると真っ黒な青年がニコニコとラックの頭を撫でていた。
「俺は冒険者をしているイオリといいます。
リルラとラックと出会って、貴方達に会いにきました。」
手を差し出すイオリに男は涙を流しながら微笑んだ。
「私の名は・・・“ゴヴァン”だ。
母は私をそう呼んでいた。」
「初めまして、ゴヴァンさん。
お会い出来て嬉しいです。」
イオリの手をゴヴァンはしっかりと握り返したのであった。
それからしばらくして、森から出た草原でイオリは料理を始めた。
マルクルが焚き火を始め、トゥーレが解放された者達の体調を見て回っている。
リルラとラックは、そんなトゥーレの後を追いかけ甲斐甲斐しく世話をしていた。
『イオリー!大丈夫。
周りに危険な気配なかったよ。
今日はここでキャンプする?』
「そうだね。
みんな休みたいだろうしね。
ご飯が出来たから、まずは食べよう。
栄養たっぷりなオジヤ作ったから、火傷しないでね。」
『わーい!!
ヴァルト!クロムス!ご飯だって!ご飯だって!!』
辺り一帯にシールドと余計なモノが来ない様に聖域を作り出していたヴァルトと従魔の2匹はゼンの呼び声に嬉しそうに近寄って来た。
「みんな、固形の物は厳しいと思ってオジヤにしました。
熱いですからね。気をつけて食べてくださいね。」
そう言うと、イオリは一人一人に皿を配り始めた。
もと奴隷達は、それを嬉しそうに受け取ると、ゆっくりと食べ始めた。
イオリはゴヴァンの元に行くと皿を差し出した。
「熱いから気をつけて下さいね。
体の不調はありますか?」
ゴヴァンは皿を受け取ると首を振った。
「いや、無い。
起き抜けは体が重かったが、今は楽になってきた。
・・・・旨い。
飯が旨いと感じたのは久々だ。
礼を言う。」
笑顔のゴヴァンにイオリは微笑んだ。
「食べながらで良いから聞いてくれ。
私はアースガイルにある、ポーレットの地を任されている公爵の次男ヴァルトだ。
アースガイルの地で、そこのリルラに出会ってな。
お前達の境遇を聞いた。
私達の手伝いをしてくれているリルラの願いもあって、お前達の解放に来た。
まさか、こんなに早く会えると思っていなかったが皆の笑顔が見れて嬉しい。
私達の王はミズガルドの我が国への干渉を危惧していてな。
それに伴い、ミズガルドの変革を望んでおられる。
お前達の奴隷印を消したのは、そこのイオリによるものだ。
イオリとリルラはお前達の自由を望んでいる。
それは私も同じ事。
故郷に帰りたい者、ミズガルドから出たい者。
己の考えで行く道を決めて良い。
まずは、長年の疲れを取る事だ。
今日はここをキャンプ地としよう。
シールドも張ったから安全だぞ。」
ニッコリと話すヴァルトに元奴隷達は唖然としていた。
ミズガルドでも有名なポーレットの次男といえば、王位継承権を持つ者。
しかも、自分達の忌まわしき奴隷印を解放してくれたのが目の前の青年である事。
何よりも・・・自由・・・長年、求めていた物が手に入った。
再び歓喜に震える元奴隷達をヴァルト達やイオリは微笑んで見ていた。
そして同じ様に喜ぶラックとリルラに安堵するのだった。
「自由を頂いていながら、正直何をしていいか分からない。
どれほど感謝しているか、伝えるのも難しい・・・。
だから、まずは貴方達を手伝わせて欲しい。
ミズガルドの変革・・・それは何よりも望ましいものだ。
だから、私を使ってくれ。」
そう話したゴヴァンに我も我もと元奴隷達は手をあげた。
「しかし、お前達はもう危ない事をしなくて良いのだぞ?」
ヴァルトの困った顔にリルラは首を振った。
「違うね。私達はケリをつけなければいけない相手がいる。
ヴァハマンは無理でも暗部のリーダー・サヴァーノは私達がやる!」
リルラの言葉に同胞達は深く頷き同意した。
________________
「「「「キャーーーーーー!!」」」」
令嬢達の悲鳴が会場に響き渡る中、サヴァーノは四方から刺されている状況に理解が出来ないでいた。
「お・・前・たち・・何故?」
「私と同じさ。
みんな、お前達の奴隷印から解放された。
今はお前達の恐怖から解き放たれて、命令に従うフリをしていたのさ。」
リルラはゆっくりとサヴァーノに近づくと持っていた短剣を喉元に押し付けた。
「私達はお前を始末して本当の意味で解放される。
そして、ようやく前に進めるんだ。」
「ああ。その通りだ。
死んでいった同胞達の仇だ。」
リルラに続きゴヴァンも手に力を込めた。
「グアぁぁぁ・・・主・・様。」
サヴァーノは力を失うと階段から転がっていき、ヴァハマンの近くで絶命した。
自分の手駒達の反旗にヴァハマンは歯軋りをすると横たわったサヴァーノを一瞥した。
「使えぬ男め。」
「お前が1番頼りにしていた男にそれはなかろう?」
トーレチカとイグナートが眉を潜めた時だった。
ヴァハマンは指輪を外すと床に叩きつけた。
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