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新たな旅 ー王都ー
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「「いーやー!!一緒に行く!!」」
離宮・シグマに双子の叫びが響き渡った。
困って立ち尽くすイオリの両足にはナギとニナがしがみついている。
「ただ待っていて欲しいわけじゃないよ。
俺の代わりにテオさん達の護衛を頼みたいんだ。」
「「うぅぅぅ。」」
両目に涙を溜めた双子が抱きついてくるとイオリは2人のすみれ色の髪を撫でた。
「お兄ちゃん。お姉ちゃん。
弟と妹を頼むよ。
仕事が終わったら、帰ってくるよ。
それまで、王都を守って。」
「「・・・・うん。」」
イオリは笑顔で子供達を一人一人抱きしめた。
「お土産を持って帰ってくるよ。
だから良い子でいてね。」
「「「「うわぁぁぁん!!」」」」
号泣する子供達をイオリはいつまでも抱きしめていた。
「お前は良いのか?」
その様子を見ていたヒューゴにヴァルトが声をかけた。
「勘弁してくださいよ。
俺は抱かれるより、抱きしめる派です。」
「あははは!」
笑うヴァルトにヒューゴは頭を下げた。
「イオリをお願いします。
冷静な内はミスなどしないでしょうが、子供のことになると見境なくなります。」
「任せてくれ。
と言っても、私も中々の大役に震えているのだがな。」
ヴァルトは己の掌を見つめるとグッと握りしめた。
「ヒューゴが残ってくれるのは心強い。
父上と兄上・・・母上を頼む。」
「お任せください。」
ヴァルトは泣いている子供達を優しい顔で抱きしめるイオリをいつまでも見つめていた。
翌日、早朝に王都を離れたイオリはアウラに乗り森を目指した。
アウラの前にはゼンが先行しソルが空を飛んでいる。
「そろそろ、見えてきますよ。」
イオリは振り向くと後ろを走るヴァルト、トゥーレ、マルクルに声をかけた。
「分かった。リルラ達が待ってるはずだ。
そのまま進もう。」
森に入り暫くするとゼンが進路を変えた。
『こっち!』
ゼンについて行くと開けた岩山にリルラとラックが待っていた。
「お待たせしました。
大丈夫?ラック。」
「うん!平気。」
可愛らしい笑顔を向けるが今日は動きやすい戦闘服を着ている。
ミズガルドへ入ると聞けば人手がいるとリルラがラックを推したのだ。
「ぼくは、小さいし素早いから役立つよ。」
ニッコリとしたラックにイオリ達は何とも言えない顔をした。
「ラックは強い。
何かあれば私がカバーする。
だから、あなた達は自分で自分の身を守って欲しい。」
「あぁ、分かった。
バレずにミズガルドへ入るには山越と聞いた。
魔の森も入るのだな?」
ヴァルトは眉間にシワを寄せると肩にいるクロムスとルチアを撫でながら岩山から続く森の道を見つめた。
「はい。険しい道ですが、馬も通れてちょうど良い。
ミズガルドに近づけばゴロツキも出てくるから気をつけて。」
「国抜けする国民から身包みを剥がすのですね?
アースガイル側から抜けても魔の森で疲弊しているから襲いやすい。」
トゥーレの言葉にリルラは頷くと腰バックから包みを出した。
「これは眠り薬。
王城の魔法師が飛散の魔法をかけてくれた。
最悪、コレで眠らせる。」
イオリの顔が険しい事に気付いたヴァルトは背中をパンと叩いた。
「そのゴロツキ共が双子の親の仇とは限らないぞ。
確かに、ミズガルドは命の重さがわが国とは違う。
しかし、ミズガルドの全てがそうではないだろう。
それに、双子の仇は冒険者だろう。」
「・・・はい。
大丈夫です。行きましょう!
早く帰らないと、子供達に説教されちゃう。」
気持ちを切り替えたイオリにヴァルトはニヤリとした。
「私はな、実はニナが1番厄介だと思っている。
あの、つぶらな目に叱られるとダメージ大きいぞ。
まぁ、頑張れよ。」
笑うヴァルトにイオリは苦笑した。
離宮・シグマに双子の叫びが響き渡った。
困って立ち尽くすイオリの両足にはナギとニナがしがみついている。
「ただ待っていて欲しいわけじゃないよ。
俺の代わりにテオさん達の護衛を頼みたいんだ。」
「「うぅぅぅ。」」
両目に涙を溜めた双子が抱きついてくるとイオリは2人のすみれ色の髪を撫でた。
「お兄ちゃん。お姉ちゃん。
弟と妹を頼むよ。
仕事が終わったら、帰ってくるよ。
それまで、王都を守って。」
「「・・・・うん。」」
イオリは笑顔で子供達を一人一人抱きしめた。
「お土産を持って帰ってくるよ。
だから良い子でいてね。」
「「「「うわぁぁぁん!!」」」」
号泣する子供達をイオリはいつまでも抱きしめていた。
「お前は良いのか?」
その様子を見ていたヒューゴにヴァルトが声をかけた。
「勘弁してくださいよ。
俺は抱かれるより、抱きしめる派です。」
「あははは!」
笑うヴァルトにヒューゴは頭を下げた。
「イオリをお願いします。
冷静な内はミスなどしないでしょうが、子供のことになると見境なくなります。」
「任せてくれ。
と言っても、私も中々の大役に震えているのだがな。」
ヴァルトは己の掌を見つめるとグッと握りしめた。
「ヒューゴが残ってくれるのは心強い。
父上と兄上・・・母上を頼む。」
「お任せください。」
ヴァルトは泣いている子供達を優しい顔で抱きしめるイオリをいつまでも見つめていた。
翌日、早朝に王都を離れたイオリはアウラに乗り森を目指した。
アウラの前にはゼンが先行しソルが空を飛んでいる。
「そろそろ、見えてきますよ。」
イオリは振り向くと後ろを走るヴァルト、トゥーレ、マルクルに声をかけた。
「分かった。リルラ達が待ってるはずだ。
そのまま進もう。」
森に入り暫くするとゼンが進路を変えた。
『こっち!』
ゼンについて行くと開けた岩山にリルラとラックが待っていた。
「お待たせしました。
大丈夫?ラック。」
「うん!平気。」
可愛らしい笑顔を向けるが今日は動きやすい戦闘服を着ている。
ミズガルドへ入ると聞けば人手がいるとリルラがラックを推したのだ。
「ぼくは、小さいし素早いから役立つよ。」
ニッコリとしたラックにイオリ達は何とも言えない顔をした。
「ラックは強い。
何かあれば私がカバーする。
だから、あなた達は自分で自分の身を守って欲しい。」
「あぁ、分かった。
バレずにミズガルドへ入るには山越と聞いた。
魔の森も入るのだな?」
ヴァルトは眉間にシワを寄せると肩にいるクロムスとルチアを撫でながら岩山から続く森の道を見つめた。
「はい。険しい道ですが、馬も通れてちょうど良い。
ミズガルドに近づけばゴロツキも出てくるから気をつけて。」
「国抜けする国民から身包みを剥がすのですね?
アースガイル側から抜けても魔の森で疲弊しているから襲いやすい。」
トゥーレの言葉にリルラは頷くと腰バックから包みを出した。
「これは眠り薬。
王城の魔法師が飛散の魔法をかけてくれた。
最悪、コレで眠らせる。」
イオリの顔が険しい事に気付いたヴァルトは背中をパンと叩いた。
「そのゴロツキ共が双子の親の仇とは限らないぞ。
確かに、ミズガルドは命の重さがわが国とは違う。
しかし、ミズガルドの全てがそうではないだろう。
それに、双子の仇は冒険者だろう。」
「・・・はい。
大丈夫です。行きましょう!
早く帰らないと、子供達に説教されちゃう。」
気持ちを切り替えたイオリにヴァルトはニヤリとした。
「私はな、実はニナが1番厄介だと思っている。
あの、つぶらな目に叱られるとダメージ大きいぞ。
まぁ、頑張れよ。」
笑うヴァルトにイオリは苦笑した。
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