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新たな旅 ー王都ー

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 離宮・シグマでは朝食の時間が始まり、ヒューゴは見当たらないイオリを心配していた。

「イオリ様でしたら、朝早くから教会に行くとゼン様を連れて行かれました。」

 ヒューゴの表情を読んだのであろう。
 執事・ハミルトンが報告をしに来た。

「教会に?・・・そうですか。
 わかりました。」

「お子様達のお食事もご用意しましょう。
 そろそろ起きて来られるでしょうから。」

 頭を下げるヒューゴをテオルドが手招きをした。

「昨日から、考え込んでいた。
 1人の時間が欲しかったのだろう。」

「教会と聞いて安心しました。
 1人で、ミズガルドに突撃したんじゃないかと心配してたんです。」

 テオルドはヒューゴの心配を理解し頷いた。

「「「「「おはようございます!」」」」」

「あらあらあら!みんな、おはよう。
 今日もしっかり眠れたかしら?」

「うん。パティがベットから落ちそうになってたよ。」

「シー!秘密って言ったでしょ!」

 双子の会話を聞き微笑んでいるナギは椅子に座るとキョロキョロとした。

「イオリは?」

「「本当だ!イオリは?」」

 ヒューゴはラックとニナを椅子に座らせるとニッコリとした。

「今、ゼンとお散歩中だ。
 すぐに帰ってくるさ。」

「「そっかー。」」

「・・・・うん。」

 双子とは違い、どこか納得していないナギは不安そうに頷いた。

「さぁ、イオリが帰ってくるのまでに朝ごはんを食べなさい。
 きっとイオリもお腹を減らしてくるぞ。」

「「「「「はーい。」」」」」

 ハミルトンと侍女達が素早く朝食の準備を進めると子供達は嬉しそうにスプーンを持ち始めた。





「テオさん!!」

 それから、1時間程経った時だった。
 イオリが庭から食堂に飛び込んでくると子供達は嬉しそうに抱きついた。

「おっと!みんな、おはよう。
 朝いなくてゴメンね。」

「「おはよう!イオリお腹すいた?」」

 双子がイオリを見上げてニッコリした。

「空いたよ。みんなは食べた?」

「うん。お腹いっぱいよ。」
「ボクも。」

 ニナとラックは嬉しそうに頷いた。

「イオリ・・・。大丈夫?」

 1人、不安そうなナギをイオリは思いっきり抱きしめた。

「うん。大丈夫。
 ナギ。ありがとう。」

 イオリの、その一言でナギは満面な笑みを浮かべて頷いた。

「うん!!」


 イオリと子供達のやりとりを見ていた公爵夫婦とヒューゴは安心したように微笑んだ。

「いつもと変わらないイオリだ。」

「良い時もあれば、悪い時もある。
 人生なんてそんなものよ。」

 オルガ夫人は機嫌良くカモミールティーを一口飲んだ。


「おかえり。もう良いのか?」

「ご心配おかけしてすみません。
 大丈夫です。
 ヒューゴさんにも聞いて欲しい事があります。」

「分かった。その前に、朝飯を食え。
 腹が減ったら、良い考えも浮かばないだろう?」

 ヒューゴはイオリの頭をガシガシと撫でると、無理やり椅子に座らせた。

「・・・はい。
 そうします。」

 ドミトリー・ドナードの名前を聞いた時から、様子がおかしかったイオリに笑顔が戻った事に離宮・シグマは明るい空気が戻ったのであった。

「このスープ旨っ!
 お腹に染みるー!!
 
 今度はこんなスープでパイ包作ろう!」

 イオリのお腹は満たされていった。
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