拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

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新たな旅 ー王都ー

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 今や当たり前のようにイオリが離宮・シグマの庭で野営調理をしていると食いしん坊達が顔を出していた。

「今日はなんだ?」

「ヤキニク丼ですよ。ヴァルトさん。
 ゼンのリクエストなんです。
 今日は退屈だったのに付き合ってくれたからお礼です。」

 肉だけでなくナスやピーマンの野菜も載せて玉ねぎで作ったソースをたっぷりとかけ真ん中に温泉卵をのせた。
 付け合わせにはしっかりと出汁を聞かせたお味噌汁と塩と昆布で味付けをしたパリッとしたキャベツを沢山用意した。

 執事ハミルトンやメイドさん達の力を借りて人数分作るとイオリはニッコリした。

「さぁ、食べましょうか。」

「「「「「わーい!!」」」」

 子供達と共にヴァルトも意気揚々と椅子に座るとトゥーレが呆れたように言った。

「貴方は子供ですか。全く。
 騒いでいる王都の令嬢達に見せて差し上げたいですよ。」

「うるさい!」

 トゥーレの嫌味に反撃すヴァルトは剥れながらも焼肉丼の匂いを嗅ぎ笑顔になった。

「令嬢に騒がれてるんですか?」

 イオリは首を傾げるとマルクルが笑った。

「あはは。
 そりゃそうだろう。王弟のポーレット公爵の御曹司だぞ?
 そりゃ結婚相手に望む声も多いさ。
 ヴァルトよりもニコライ様なんて王城を歩いてれば柱という柱から令嬢やメイドが飛び出てくるよ。
 ニコライ様に御執心だったタヴァロス侯爵家のギゼラ嬢が退場したんだ。群がる人数も跳ね上がってるよ。」

「へー。」

「へーじゃないよ。」

 マルクルの説明に相槌を打っていたイオリの後ろからニコライが苦笑しながら歩いてきた。

「イオリも関係あるんだからな。
 こんなに美味しい料理に菓子がある家なんて、さぞ毎日良い物を食べられるんだろうって、評価が高いんだよ。
 否定はしないけどね。
 ますます、変なのが寄って来るようになったよ。」

 肩を落とすニコライにイオリは笑った。

「どなたか素敵な人はいなかったんですか? 」

「さあね。最初から穿った目で見ているから曇ってよく見えなかったよ。
 それよりも、ヒル将軍との勝負に勝ったって?流石だな。」

 話を変えたニコライにイオリは微笑むと頷いた。

「はい。ゴブリン退治で勝負したんですけど、集落を見つけられてラッキーでしたよ。」

「いやいや、ラッキーじゃないだろ。
 ジェネラルからロードもいたんです。
 全部1人で倒しちゃったんでザックスさんも呆れていましたよ。」

 ヒューゴの言葉に驚く面々であったが当のイオリがケロっとしている為に苦笑せずにはいられなかった。

「そうだ!ナギ。サブマスのミラさんがゴブリン集落の浄化を頼めないかって言ってたよ。」

 頬にコメを沢山詰めたナギが頷きながらも返事をした。

ひひよいいよ!」

「それなら、明日にでもみんなで行こうか?
 お弁当持って。ラックも行くだろう?」

 イオリの誘いの言葉にラックはおずおずと頷いた。

「良いの?」

「良いさ!行こう。時々は緑に触れた方がいいよ。」

「うん!」

「「やったー!ピクニックだね!」」

 喜ぶ子供達は焼肉丼をモリモリと食べ進めた。

「私も行きたい!」

「貴方はダメです。やらねばいけない事もあるでしょう?」

 澄ました顔のトゥーレに待ったをかけられるヴァルトであった。
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