拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

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新たな旅 ー王都ー

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 一つの事件が終わり、アースガイル城では一連の働きに軍・文官から侍女やメイド・使用人にまで労いの酒やご馳走が振る舞われた。
 賑わいを見せる中、国王が住う王城の奥には作戦に当たった面々や奥方達、リード伯爵父娘にイオリの子供達とラックが集まり食事をしていた。

「あーあー。私もう少しロザリンダちゃんとお話したかったわ。」

 オルガ夫人の言葉に苦笑する面々であったが、当の本人は至って真面目であった。

「もう少し仕掛けてくるかと思ったけど、案外優しい子ね。」

「オルガにかかれば皆んな優しい子になるな。」

 国王アルフレッドが笑った。

「笑い事ではありませんよ。結局、王太子選抜まで中止にして・・・。
 私は娘ができると喜んでおりましたのよ。」

 シシリア王妃はギルバートに向かい頬を膨らませた。
 そんなギルバートはイオリの作った唐揚げに夢中で気にもしていない様であった。

「どの道いつか決める時がくるんだ。
 今はいっぱい飯でも食ってろ。」

 そう笑うザックスの言葉にギルバートは済ました顔で爆弾を落とした。

「私はもう決めてるよ。
 私はオーブリーを妻にする。」

 モグモグと口を止めないギルバートに一同は沈黙の後、驚きの声をあげた。

「「「「えーーーー!??」」」」

 当の本人であるオーブリーは持っていた皿を落とし愕然としていた。

「おま・・おま・・お前!!」

 流石のザックス・ヒルも開いた口が塞がらないようでギルバートとオーブリーを交互に見ていた。

「殿下・・・何を言ってるのですか?」

 いつも冷静なオーブリーも慌てたようにギルバートに詰め寄った。

「ひゃっへいったひゃろ?」

「この子は!!大事な事は食べてから言いなさい!!」

 口に唐揚げを詰め込んだギルバートにシシリアは叱りつけた。

「いや、こんな時にバクバクとよく食べれますね。」

 ディビットが呆れたように溜息を吐くと隣に座った婚約者のココはクスクスと笑った。

「んあ。唐揚げ旨い!!
 だから、ロザリンダ嬢を送り出す時に伝えただろう。
 生涯側にいてくれと。」

 『あの忙しい時にそんな暇あったか?』と誰もが首を傾げたが、唐揚げを食べ終わったギルバートはオーブリーにニカっとした。

「・・・!あれ・・あれは!!
 お仕えする意味だと思っていたのです。」

「お前は膝をついて、了承した。」

「そうですが!!
 だからそれは!!」

 2人のやりとりを見ていた周りは呆れていた。
 前触れもなくプロポーズをした王太子と、その手の勘が鈍い軍の副官。
 目の前で繰り返される言い合いに、ついに国王が声を掛けた。

「待て!2人とも落ち着きなさい。
 まずはギルバート。
 お前は本気でオーブリーを妃にするつもりか?」

「はい!
 今回の選考で気づきました。
 私は守られるだけの妃はいらないのです。
 共に立ち、共に戦い、共に国民を愛する者でなければ、私は求めません。」

 ギルバートの決意に国王は微かに微笑んだ。

「次にオーブリー。
 ギルバートの言葉に驚いた事は理解する。
 事は国の一大事、今すぐ決めろとは言わん。
 しかし考えてみてはくれんか。」

「しかし、私は軍人にございます。
 妃の事を学んでおりません。」

 顔を下に向けるオーブリーにクスクス笑う声が聞こえた。

「そんなの私もそうですよ。
 かつての私は国王の妃候補ですらなかった、おてんばな侯爵令嬢でした。
 そんな私が長年、国王の隣に座っているのは何も己の力ではないのですよ?
 支えてくれる仲間がいます。
 1人で抱え込むのではなく、皆を巻き込みなさい。

 美しく聡明に見える魔法をかけてくれるメイドや使用人達、毎日王城を見上げ微笑む国民。
 王妃は彼らのお陰で誰よりも輝くのです。
 私はその期待に見合う努力をしたい。
 ただそれだけ。

 もし・・・もし、貴方がギルバートの手を取ってくれるのなら私も貴方に魔法をかけましょう。 
 貴方が輝く手助けをしましょう。
 だから、貴方は受け取った想いを磨き輝かせなさい。
 
 軍人として努力をし続け、女の身ながら副官まで上り詰めた貴方なら国王の隣に座る資格があると私は思います。
 
 勇気を出しなさい。
 オーブリー・

 いつもニコニコポワポワしているシシリア王妃の言葉に場が圧倒される中、ギルバートはオーブリーに近づき膝をついた。

「私の全ては国の物。
 何よりも優先するのは国民の事。
 共に薔薇いばらの道を裸足で歩いてくれと言う私は君にとって酷い男なんだろう。
 
 しかし、心は君に捧げよう。
 私があげられるものは、形のない物だ。
 オーブリー。
 私と共に国の礎になってはくれないか?」

 オーブリーは顔を赤らめ小さく「はい」と答えた。


 
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