281 / 433
新たな旅 ー王都ー
395
しおりを挟む
一つの事件が終わり、アースガイル城では一連の働きに軍・文官から侍女やメイド・使用人にまで労いの酒やご馳走が振る舞われた。
賑わいを見せる中、国王が住う王城の奥には作戦に当たった面々や奥方達、リード伯爵父娘にイオリの子供達とラックが集まり食事をしていた。
「あーあー。私もう少しロザリンダちゃんとお話したかったわ。」
オルガ夫人の言葉に苦笑する面々であったが、当の本人は至って真面目であった。
「もう少し仕掛けてくるかと思ったけど、案外優しい子ね。」
「オルガにかかれば皆んな優しい子になるな。」
国王アルフレッドが笑った。
「笑い事ではありませんよ。結局、王太子選抜まで中止にして・・・。
私は娘ができると喜んでおりましたのよ。」
シシリア王妃はギルバートに向かい頬を膨らませた。
そんなギルバートはイオリの作った唐揚げに夢中で気にもしていない様であった。
「どの道いつか決める時がくるんだ。
今はいっぱい飯でも食ってろ。」
そう笑うザックスの言葉にギルバートは済ました顔で爆弾を落とした。
「私はもう決めてるよ。
私はオーブリーを妻にする。」
モグモグと口を止めないギルバートに一同は沈黙の後、驚きの声をあげた。
「「「「えーーーー!??」」」」
当の本人であるオーブリーは持っていた皿を落とし愕然としていた。
「おま・・おま・・お前!!」
流石のザックス・ヒルも開いた口が塞がらないようでギルバートとオーブリーを交互に見ていた。
「殿下・・・何を言ってるのですか?」
いつも冷静なオーブリーも慌てたようにギルバートに詰め寄った。
「ひゃっへいったひゃろ?」
「この子は!!大事な事は食べてから言いなさい!!」
口に唐揚げを詰め込んだギルバートにシシリアは叱りつけた。
「いや、こんな時にバクバクとよく食べれますね。」
ディビットが呆れたように溜息を吐くと隣に座った婚約者のココはクスクスと笑った。
「んあ。唐揚げ旨い!!
だから、ロザリンダ嬢を送り出す時に伝えただろう。
生涯側にいてくれと。」
『あの忙しい時にそんな暇あったか?』と誰もが首を傾げたが、唐揚げを食べ終わったギルバートはオーブリーにニカっとした。
「・・・!あれ・・あれは!!
お仕えする意味だと思っていたのです。」
「お前は膝をついて、了承した。」
「そうですが!!
だからそれは!!」
2人のやりとりを見ていた周りは呆れていた。
前触れもなくプロポーズをした王太子と、その手の勘が鈍い軍の副官。
目の前で繰り返される言い合いに、ついに国王が声を掛けた。
「待て!2人とも落ち着きなさい。
まずはギルバート。
お前は本気でオーブリーを妃にするつもりか?」
「はい!
今回の選考で気づきました。
私は守られるだけの妃はいらないのです。
共に立ち、共に戦い、共に国民を愛する者でなければ、私は求めません。」
ギルバートの決意に国王は微かに微笑んだ。
「次にオーブリー。
ギルバートの言葉に驚いた事は理解する。
事は国の一大事、今すぐ決めろとは言わん。
しかし考えてみてはくれんか。」
「しかし、私は軍人にございます。
妃の事を学んでおりません。」
顔を下に向けるオーブリーにクスクス笑う声が聞こえた。
「そんなの私もそうですよ。
かつての私は国王の妃候補ですらなかった、おてんばな侯爵令嬢でした。
そんな私が長年、国王の隣に座っているのは何も己の力ではないのですよ?
支えてくれる仲間がいます。
1人で抱え込むのではなく、皆を巻き込みなさい。
美しく聡明に見える魔法をかけてくれるメイドや使用人達、毎日王城を見上げ微笑む国民。
王妃は彼らのお陰で誰よりも輝くのです。
私はその期待に見合う努力をしたい。
ただそれだけ。
もし・・・もし、貴方がギルバートの手を取ってくれるのなら私も貴方に魔法をかけましょう。
貴方が輝く手助けをしましょう。
だから、貴方は受け取った想いを磨き輝かせなさい。
軍人として努力をし続け、女の身ながら副官まで上り詰めた貴方なら国王の隣に座る資格があると私は思います。
勇気を出しなさい。
オーブリー・ポートマン公爵令嬢」
いつもニコニコポワポワしているシシリア王妃の言葉に場が圧倒される中、ギルバートはオーブリーに近づき膝をついた。
「私の全ては国の物。
何よりも優先するのは国民の事。
共に薔薇の道を裸足で歩いてくれと言う私は君にとって酷い男なんだろう。
しかし、心は君に捧げよう。
私があげられるものは、形のない物だ。
オーブリー。
私と共に国の礎になってはくれないか?」
オーブリーは顔を赤らめ小さく「はい」と答えた。
賑わいを見せる中、国王が住う王城の奥には作戦に当たった面々や奥方達、リード伯爵父娘にイオリの子供達とラックが集まり食事をしていた。
「あーあー。私もう少しロザリンダちゃんとお話したかったわ。」
オルガ夫人の言葉に苦笑する面々であったが、当の本人は至って真面目であった。
「もう少し仕掛けてくるかと思ったけど、案外優しい子ね。」
「オルガにかかれば皆んな優しい子になるな。」
国王アルフレッドが笑った。
「笑い事ではありませんよ。結局、王太子選抜まで中止にして・・・。
私は娘ができると喜んでおりましたのよ。」
シシリア王妃はギルバートに向かい頬を膨らませた。
そんなギルバートはイオリの作った唐揚げに夢中で気にもしていない様であった。
「どの道いつか決める時がくるんだ。
今はいっぱい飯でも食ってろ。」
そう笑うザックスの言葉にギルバートは済ました顔で爆弾を落とした。
「私はもう決めてるよ。
私はオーブリーを妻にする。」
モグモグと口を止めないギルバートに一同は沈黙の後、驚きの声をあげた。
「「「「えーーーー!??」」」」
当の本人であるオーブリーは持っていた皿を落とし愕然としていた。
「おま・・おま・・お前!!」
流石のザックス・ヒルも開いた口が塞がらないようでギルバートとオーブリーを交互に見ていた。
「殿下・・・何を言ってるのですか?」
いつも冷静なオーブリーも慌てたようにギルバートに詰め寄った。
「ひゃっへいったひゃろ?」
「この子は!!大事な事は食べてから言いなさい!!」
口に唐揚げを詰め込んだギルバートにシシリアは叱りつけた。
「いや、こんな時にバクバクとよく食べれますね。」
ディビットが呆れたように溜息を吐くと隣に座った婚約者のココはクスクスと笑った。
「んあ。唐揚げ旨い!!
だから、ロザリンダ嬢を送り出す時に伝えただろう。
生涯側にいてくれと。」
『あの忙しい時にそんな暇あったか?』と誰もが首を傾げたが、唐揚げを食べ終わったギルバートはオーブリーにニカっとした。
「・・・!あれ・・あれは!!
お仕えする意味だと思っていたのです。」
「お前は膝をついて、了承した。」
「そうですが!!
だからそれは!!」
2人のやりとりを見ていた周りは呆れていた。
前触れもなくプロポーズをした王太子と、その手の勘が鈍い軍の副官。
目の前で繰り返される言い合いに、ついに国王が声を掛けた。
「待て!2人とも落ち着きなさい。
まずはギルバート。
お前は本気でオーブリーを妃にするつもりか?」
「はい!
今回の選考で気づきました。
私は守られるだけの妃はいらないのです。
共に立ち、共に戦い、共に国民を愛する者でなければ、私は求めません。」
ギルバートの決意に国王は微かに微笑んだ。
「次にオーブリー。
ギルバートの言葉に驚いた事は理解する。
事は国の一大事、今すぐ決めろとは言わん。
しかし考えてみてはくれんか。」
「しかし、私は軍人にございます。
妃の事を学んでおりません。」
顔を下に向けるオーブリーにクスクス笑う声が聞こえた。
「そんなの私もそうですよ。
かつての私は国王の妃候補ですらなかった、おてんばな侯爵令嬢でした。
そんな私が長年、国王の隣に座っているのは何も己の力ではないのですよ?
支えてくれる仲間がいます。
1人で抱え込むのではなく、皆を巻き込みなさい。
美しく聡明に見える魔法をかけてくれるメイドや使用人達、毎日王城を見上げ微笑む国民。
王妃は彼らのお陰で誰よりも輝くのです。
私はその期待に見合う努力をしたい。
ただそれだけ。
もし・・・もし、貴方がギルバートの手を取ってくれるのなら私も貴方に魔法をかけましょう。
貴方が輝く手助けをしましょう。
だから、貴方は受け取った想いを磨き輝かせなさい。
軍人として努力をし続け、女の身ながら副官まで上り詰めた貴方なら国王の隣に座る資格があると私は思います。
勇気を出しなさい。
オーブリー・ポートマン公爵令嬢」
いつもニコニコポワポワしているシシリア王妃の言葉に場が圧倒される中、ギルバートはオーブリーに近づき膝をついた。
「私の全ては国の物。
何よりも優先するのは国民の事。
共に薔薇の道を裸足で歩いてくれと言う私は君にとって酷い男なんだろう。
しかし、心は君に捧げよう。
私があげられるものは、形のない物だ。
オーブリー。
私と共に国の礎になってはくれないか?」
オーブリーは顔を赤らめ小さく「はい」と答えた。
1,587
お気に入りに追加
18,914
あなたにおすすめの小説
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。