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新たな旅 ー王都ー

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 少年の記憶にあるのは炎に包まれた家だった。
 父親と母親の記憶が薄れていく中、炎が村を包む光景だけは忘れる事が出来なかった。



 目が覚めた少年が背中の激痛に起きたのは冷たい檻の中だった。
 檻の中には自分と同じく小さい子供から大きな子供までがボロボロになった体を庇う様に丸めていた。

「起きたの?大丈夫?背中痛い?」

 自分よりも少し大きなウサギのお姉さんが少年の頭を撫でた。

「痛い・・・。お父さんとお母さんは?」

「みんな、大人達は殺されたの・・・。
 ここにいるのは子供だけ。」

「ヤダよ!お母さんのところに帰る!」
 
 騒ぐ少年をお姉さんは抱きしめた。

「うるせー!みんな同じなんだよ!
 俺たちは全員、人族に拐われたんだ!
 売られる奴隷なんだよ!!」

「やめて!この子は小さいのよ!!」

 1人のライオンのお兄さんが怒り出し、庇うウサギのお姉さんと喧嘩になった。
 そんな時だった。

「うるせーぞ!ガキども!!
 静かにしてろって言っただろが!!殺すぞ!」

 人族の大人の人が棒で檻をガンガンと叩いた。
 小さな悲鳴が上がる中、「ちっ!」と舌打ちして離れいく大人を目で追うと少年はウサギのお姉さんとライオンのお兄さんに謝った。

「ごめんなさい。静かにするから喧嘩しないで。」

「良いのよ。貴方は悪くない。」

 ウサギのお姉さんは少年を抱きしめた。
 ライオンのお兄さんは顔を歪めると乱暴に少年の頭を撫でた。

「お前が悪いわけじゃないのは分かってる・・・分かってるんだ!」

 ライオンのお兄さんの泣きそうな顔を見て少年は何も言えなくなってしまった。

 どれほどの時間が過ぎたかは分からない。
 突然、外が騒がしくなり沢山の大人が檻の向こうにやってきた。

「子供はこれで全部か?」

「へい!息のある奴は全部捕まえてあります。」

 檻を棒で叩いていた男の人がペコペコと頭を下げているのはキラキラした服を着た人だった。

「まずは、男と女を分けろ。
 あとは素質を見極め、処理をしていけ。」

「へい!」

 棒を持った男を始めにゾロゾロと大人の男の人が入ってきて女の子に手を伸ばしていく。

「いやー!!離して!!触らないで!!」

 泣き叫ぶ羊の少女の頭を鷲掴みにして引きずり外に連れ出す男達は淡々と作業をこなしていく。
 次々と少女達が引きづられていく中、少年は震えながら固まっていると、抱きしめてくれていたウサギのお姉さんに男の手が伸びた。

「触るな!!」

 ライオンのお兄ちゃんが男の前に出て、ウサギのお姉ちゃんを庇った。
 
「邪魔だ。お前らは後だ!」

 バシンッ!!

 殴られて吹っ飛ぶライオンのお兄ちゃんはグッタリとしていた。

「いやー!!」

 ウサギのお姉ちゃんの叫びが聞こえ、少年が男の足にしがみついた。

「離して!!お姉ちゃんを離して!!」

「やめて!その子を叩かないで!!小さいのよ!!」

 ウサギの少女の願い虚しく、少年を蹴り飛ばした男は舌打ちをした。

「面倒事を起こすな!!お前らは逃げられねーんだよ!!
 言うこと聞いてりゃ、飯にありつけんだ!!」

「イヤー!!!」

 怒鳴る男とウサギのお姉ちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえ少年はとっさに立ち上がり、男をよじ登り首元に噛み付いた。

「ギャャャャ!!」

 痛みでのたうち回る男から離れたウサギのお姉ちゃんに抱きつくと少年は号泣した。

「クソガキが!!殺してやる!!」

 男が少年に手を伸ばした時だった。

「やめろ!それは大事な商品だ!」

 キラキラした服をきた人が檻の中に入ってきて、少年を睨みつけた。

「こいつは私が貰おう。
 鍛え上げれば、使い物になる。」

 そう言うと、少年の顔を持っていたステッキで思いっきり殴り気絶をさせた。

「運べ!他もさっさと済ませろ!!」

「「「「いやーーー!!!」」」」

 意識薄れていく中で、少年はグッタリとしたライオンのお兄さんと泣いて手を伸ばすウサギのお姉さんを最後に気を失った。





 少年が次に目を覚ましたのは、汚い小部屋の中で辛うじ置いてあったマットの上だった。

「おい。起きたか?
 ご主人様がお待ちだ。行くぞ。」

 耳の尖った人が・・・後に聞けばエルフの男の人が少年を抱き上げて部屋を出た。
 男の人の喉に変な模様が付いていた。

「これ何?」

 少年が模様を指を刺すと男の人は顔を歪めた。

「奴隷印だ。ご主人様に逆らうと、痛み出す。
 最悪は死ぬんだ。
 お前にもあるぞ。だから、ご主人様には逆らうな。
 分かったか?」

「・・・うん。」

 嫌だからとか、何処に?とかも聞けずに少年は震えた。
 エルフの男の人に連れられて入った部屋に、あのキラキラした人が立っていた。

「来たか。
 お前はこれから仕事で必要なスキルを身につける。
 そうすれば、食べ物には困らんし言う事を聞けば痛い思いもしない。
 分かったな?」

「・・・・。」

 少年が黙っているとバシンッ!と頬を叩かれた。

「分かったな?」

「・・・はい。」

「よし。良い子だ。
 お前に名前をやろう。」

 髪を掴まれ上を向けさせられるとキラキラした人が少年のオレンジ色の目を覗き込んだ。

「綺麗に印が入っているではないか。
 お前の名前はソレイユだ。」

 そして少年はソレイユになった。

 ソレイユは2年で訓練を終え実務をこなし始めた。
 体が小さく、すばしっこいソレイユは色々な屋敷に侵入し主が求めた物を入手した。

 そんなある日の事だった。

「お前はこれからアースガイルへ行き、前任の代わりにロザリンダ姫に使えよ。」

「・・・はい。」

「あちらに行けば、サヴァーノがいる。指示に従え。」

「・・・はい。」

「これよりお前の名は“ブリエ”だ。」

 ソレイユはブリエとしてアースガイルの地を踏んだのであった。
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