拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

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新たな旅 ー王都ー

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 1日の騒動の後始末に追われた面々は疲れた体を押し王の執務室に集まった。

「今日はご苦労であった。
 何とも荒々しい日であったな・・・。
 報告を頼む。」

 国王アルフレッドが促すと王太子ギルバートが話し始めた。

「ロザリンダ姫が狂気を持ってイオリとゼンを引き剥がしにかかり、ゼンの・・・
 いや、フェンリルの怒りに触れました。
 その後、先の情報の通りに首飾りを回収し現在は解析中です。

 ロザリンダは騒動の後に放心状態のため、部屋にて隔離中です。」

「そうか・・・。
 イオリにもゼンにも嫌な思いをさせて、すまない。」

「いいえ。俺の発案ですから。」

 ロザリンダにゼンを見せ、欲望を誘発させる。
 イオリとゼンの案に国王が乗ったのは、当初からの狙いにあったのであろう。
 国王は気まずそうに眉を下げた。
 そんなゼンは、興味がないのか小さい体を丸まらせてイオリの膝の上で眠っていた。

「トレバー。」

「はっ。
 ロザリンダがミズガルドから連れて来た侍女は実は男でございました。」

 トレバーの言葉に一同が唖然とした。

「あの“婆や”が男?」

 ディビットは驚いた様に呟いた。

「詳しい事はこの者から・・・。」

 トレバーに連れられ入って来たのは美しいエルフ・ララノア改めリルラであった。

「あっ・・・。君は。」

 イオリの声に微笑むとリルラは会釈した。

「イオリ殿はご存知ですが、この者は元はヴァハマンの暗部にいた者です。
 奴隷印を刻まれ、傀儡の様に使われていました。
 イオリ殿がダグスクにて拘束したのち、奴隷印を解いた為に我々に協力をしてくれています。」

 トレバーの言葉に王子達は顔を顰めた。
 宰相グレンが現在のリルラの事を教えてくれた。

「たとえ、奴隷といえど罪を犯した身。
 ただで開放というわけにはいきませんでした。
 それを、本人の要望により我々に力を貸してくれているのです。」

「私は人族が嫌い。 
 小さい時から、ひどい目に遭わされてきたから。
 正直、アースガイルもミズガルドもどうでも良い。
 でも、イオリは違う。
 助けてくれた。闇から開放してくれた恩人。」

 リルラはイオリの方を向いて再び頭を下げた。

「良いよ。
 できる事をしただけだよ。
 簡単に罪が消えると思っていなかったし、重い処分をされていると思ってたから会えて嬉しいよ。」

 イオリの言葉にリルラは嬉しそうに頷いた。

「今回、ロザリンダと共に来た老婆は暗部のリーダー・サヴァーノ。
 偽名の可能性が高い。本名は知らない。
 
 魔法と特殊な液体で顔を変化させていた。暗部よく使う。
 ロザリンダから首飾りが外された事に気付いて逃亡を図った。
 私とトレバーで戦った。
 逃した。ごめんなさい。」

 緊張しているのか多少片言になっているリルラはサヴァーノを逃した事を悔やんでいた。

「逃亡直前に、リルラがサヴァーノの右腕を切り落とし負傷させませした。
 逃亡には他に2人が絡んでいます。
 即座に追っ手を放ちましたが、見失ったとの事です。
 申し訳ありません。」

 リルラと共に頭を下げたトレバーに隣にいた将軍・ザッカスが背中を軽く叩き諫めていた。

「2人ともよくやってくれた。
 ともあれ、ミズガルドというよりか敵はヴァハマンという事が確証が取れたな。
 さて、グレンよ。どうするか?」

 アルフレッドは宰相グレンに問いかけた。

「まずは、ロザリンダ姫の処遇でしょうね。
 厄介ですよ。
 逗留をさせれば人質と言われかねませんし、返せば戦争の火蓋が切られる可能性もあります。」

「ロザリンダが首輪に操られていたかどうかは分からないのか?」

 ポーレット公爵・テオルドが宰相に問いかけるとリルラが代わりに答えた。

「あの石はメドゥイ侯爵領で見つかったロードクロサイトの原石に、魔素が溜まって変化したもの。
 持っている人間の欲望を餌に力を蓄えていくらしい。
 ロザリンダがいつから身につけていたかは分からない。
 でも、欲望が元々増大じゃないと利用する価値はない。」

「なるほど・・・。
 ロザリンダは生粋の欲深い性質であるか。」

 納得したテオルドがアルフレッドに顔を向けると、国王は目を瞑り深く考え込んでいた。

「よし。決めた。
 話を聞いたのちにミズガルドへ帰そう。
 どの道、我が息子はロザリンダと生涯を共にする気はないそうだからな。」

「ありませんね。
 しかし、返して不都合はありませんか?」

 ギルバートは今後の不安を口にした。

「あったとしても、居続けられても困る。
 ミズガルドに近い我が貴族達も増長させるのも腹立たしいしな。」

 アルフレッドの意見に反論は出ず、ロザリンダの処遇は決まったのであった。
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