拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

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新たな旅 ー王都ー

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 朝露を持ってして煌く王城の庭を嬉しそうに歩くのはタヴァロス侯爵家息女ギゼラであった。

 何故に早い時間の王城へ足を運んだかと言えば昨夜のうちに内々の手紙が届いたからである。
 手紙の主を待たせてはいけないと足早に歩くギゼラが目にしたのは、与えられた庭で朝食をとるミズガルドの姫ロザリンダであった。

 世話をしている老婆と目が合うとギゼラは会釈をした。
 老婆が耳打ちをするとロザリンダは涼しい笑顔と共に立ち上がった。

「おはようございす。
 タヴァロス侯爵の御息女ギゼラさん。」

「朝食のお時間にお邪魔をいたしまして申し訳ございません。
 昨夜のお手紙にてお呼びいただき参りました次第です。」

 恐縮するギゼラに対し、ロザリンダは微笑むと座る様に促した。

「先日の王妃様主催のお茶会は見事な物でございましたね。
 我が国ミズガルドでもお菓子など見た事がありません。
 アースガイルは豊かな国ですね。」

「はい。私も驚きました。
 どれもこれも美味しくて帰り次第、使用人を商会へ走らせましたの。」

「でしょうね。」

 大きな体をドレスに捻じ込んみ、嬉々として話すギゼラを見てロザリンダは小さく呟いた。

「え?」

「いいえ。なんでもなくってよ。
 時に、ギゼラさんは最後にお声掛けしたポーレット公爵家の・・・。」

「ニコライ様です!」

 嬉しそうに話すギゼラにロザリンダは扇で顔を隠して笑った。

「確かご長男ですとか?
 もしかして、ギゼラさんの恋人かしら?」

「そんな!!
 恋人だなんて・・・。憧れておりますの。
 ニコライ様は婚約者をお持ちでないので選ばれる様に励んでおりますわ。」

「それは健気な事ですわ。
 私も王太子殿下のお隣を望む者。ギゼラさんとはお友達になれそうですわね。」

「それは光栄なお話です!
 是非とも、お付き合い下さい。
 アースガイルでの生活にお困りはございませんか?
 我が家は侯爵家の位を頂いております。何かとお力をお貸しできるかもしれません。」

 そんなギゼラにロザリンダは口を歪ませた顔を扇で隠し微笑んだ。

「とても心強いお言葉です。
 有り難う。
 そういえば、貴方のニコライ様ですけれど毎朝、離宮近くのガーデンで剣を振っておいでとか。
 今から行けばお会い出来るかもしれませんね。」

「えっ・・・そうなんですか?
 どうしましょう・・・。
 父より、1人で勝手に行動するなと言われているのです。」

「私もご一緒すれば大丈夫でしょう。
 さあ、参りましょう。婆や。」

 老婆がロザリンダとギゼラを連れて離宮・シグマの手前にあるガーデンに行くと確かにニコライが従者を伴って剣を振っていた。

「まぁ、ニコライ様・・・。
 やっぱり素敵ですわ」

「さぁ、恥ずかしがらずにいらっしゃい。」

 ロザリンダがギゼラを伴いニコライの元に行くと従者が警戒する様に行く手を阻んだ。

「ここは通っては行けない庭なのかしら?」

「いいえ。主人が剣を振っておりますので危のうございます。」

「あら、本当ね。
 そちらにいらっしゃるのは確か・・・。」

 ロザリンダは従者に先を促すが、彼らは答える気などないようで静かに佇んだままだった。

「ポーレット公爵家の方よね?」

 我慢できずに声にするロザリンダの前に剣を振っていた本人がやってきた。

「これはこれは、ミズガルドの姫君ではないですか?
 こんな朝からいかがしました?」

「ニコライ様、おはようございます。
 先日の茶会でお知り合いになった友人と朝のお散歩をしておりましたの。
 ご存知?タヴァロス侯爵家のギゼラさんです。」

「おはようございます。ギゼラ嬢。
 何度かお会いしましたね。
 そうでしたか、ロザリンダ嬢とご友人でいらっしゃるとは知りませんでした。」

「はい!光栄な事です。」

 憧れのニコライを前にして赤面するギゼラにニコライは優しく微笑んだ。

 そんな2人を放っておいてロザリンダの目を釘付けにしたのは、一緒にいた真っ黒な出立の青年と真っ白な狼が戯れている姿だった。
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