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新たな旅 ー王都ー

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「会頭。初めまして。
 アーベルさんとバートさんに大変お世話になっています。
 冒険者をしています。イオリです。
 従魔のゼンとアウラにソル。
 双子のスコルとパティ。
 エルフのナギ
 それと・・・。」

「ヒューゴ・・・。」

 ロスは呆れたように微笑んだ。

「ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした。」

 ヒューゴは深々と頭を下げた。

「話は聞いています。
 イオリさんが救い上げてくれたとね。どうだい?今の暮らしは?」

「恵まれた主に出会い、願ってもない生活を送っています。
 こちらが妹のニナです。」

 ロスはヒューゴに隠れていたニナを覗き見ると微笑んだ。

「そうかい。君がニナか・・・。
 可愛い子じゃないか、大切にしておやり。」

 そしてイオリに深々と頭を下げたのであった。

「この度は我々の恩人をお救いくださり有難うございました。
 父アーベルよりヒューゴが恩人だと聞き及んでいるかと思います。
 それは父と一緒に旅に出ていた息子と娘達が暴漢に襲われていたのを、このヒューゴに助けられたのです。」

「それは・・・。」

 言い淀むイオリにロスは座るように促した。

「グラトニー商会とは先祖達が守りし要塞のような物。
 中には恨みも買います。
 その標的が若い子供らに向けられた時は生きた心地がしませんでした。
 そんな我が家の宝を助けてくれたヒューゴを我らは助けることが出来なかった。
 こんな罪深い事があるかと苦心しておりました・・・。」

 居心地悪そうにするヒューゴに構わずイオリはロスの話を聞いた。

「そんな時、父からヒューゴが買い取られたと連絡があったのです。
 心配していました。
 怪我も負い小さな妹とどんな人間に買い取られてしまったのかと・・・。
 
 しかし、イオリ様が主人になったと聞いて大変安堵致しました。
 その時にはすでにホワイトキャビンを始め我々の中でイオリ様は驚くべき傑物と認識していましたからね。
 小さなニナも笑顔でいると・・・ヒューゴの望み通りの主人に会えたのだと・・・。」

「どんなに1人で生きてきたと思っていても人は繋がりを持っている事を知った方がいい。
 ヒューゴさん。
 どんなに心苦しくても、こんなに貴方の事を心配してくれていた人がいるんです。
 甘んじて受け入れましょう。」

 真っ直ぐなイオリの目に見据えられヒューゴは小さくなりながらも頷いた。

「ああ。俺が悪い・・・。
 会頭、ご心配をかけて本当に申し訳ありませんでした。
 そしてお心を砕いてくださり有り難うございました。」

 頭を下げるヒューゴを真似るようにニナも小さな頭を下げたのであった。

「良かった。本当に良かった。
 どうぞ、皆さん。
 ポーレットのように、グラトニー商会王都本店もお力にならせて頂きたい。」

 泣き顔を隠すようにロイ・グラトニーはリロイから書類を受け取った。

「アンティティラやダグスクでも多くの知識をお出しになったとか?
 何はともあれ、砂糖ですね。
 大変に驚きましたよ。」

 子供達は砂糖と聞き、それぞれのバックからお菓子を取り出しロイとリロイに差し出した。
 立派な営業である。

「イオリのお菓子は美味しいよ。」

「お店に並んだのも食べた事あるけど、全然違うの。」

「飴玉もいろんな味があるんだよ。」

「ニナ。ボーロ好き。」

 そんな子供達に泣く子も黙るグラトニーの会頭が微笑んだのであった。
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