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新たな旅 ー王都ー

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 王都へ来て4日目。
 ようやく離宮・シグマに滞在していたポーレット公爵家が動き出した。
 朝早い時間帯に馬車を出し姿を現したのは教会であった。
 
 アースガイルの教会組織においてトップはいない。
 国王のもと5人の枢機卿が決め事や揉め事を話し合って決めている。

 それぞれにも職務がある。
 孤児や貧困な家庭の子供を教育する“ミゲル枢機卿”
 神父やシスターなど、教会に殉じる後継者の育成をする“ジョヴァンニ枢機卿”
 各地に散らばる教会の運営や調査を担当する“コッソ枢機卿”
 外国にある教会との外交を行う“カルド枢機卿”
 そして、ポーレット公爵の前に座るのは教会本部に足を運ぶ者の話を聞き運営に殉じる“ディマルコ枢機卿”であった。


「朝早い時間に申し訳ない。」

「教会はいつでも開かれています。どんな時でも歓迎しますよ。
 お久しぶりですね。ポーレット公爵閣下。」

 ニッコリとするディマルコ枢機卿にテオルドも微笑んだ。

「妻との結婚式も息子の洗礼式もここで行われたな。
 実に懐しい。」

 2人は紅茶を啜ると暫く静かに時間に身を委ねた。

「ところで、以前話した者の事だがな。」

「はい。愛し子様ですね。
 今回はご一緒に登城されてるとか・・・。」

「名をイオリという。
 本人はあくまでも冒険者として生きるつもりの欲がない青年でね。
 それでいて、決めた事は変えない意志の強さを持っている。
 教会が愛し子を利用すると分かるとすぐにでも国を出ていくだろう。
 我々も止めはしないだろうね。」

 テオルドの言葉に苦笑するディマルコは頷いていた。

「何年前でしたか、教会が愛し子様を囲おうとして滅亡した国がありましたね。
 最早、同じ鉄は踏みますまい。
 他の方々も重々、理解されておりました。
 教会は愛し子様に何かを強制するつもりはございませんし、愛し子様の事を触れ回るつもりもございません。」

「それを聞いて安心した。
 イオリは教会が好きでね。事あるごとに教会に報告に行くのだ。
 我が街のエドバルドとの仲も信頼関係で結ばれている。」

「聞き及んでおります。
 先日は、イオリ様がお伽話なる物を持ち込んできたとか。
 子供の教育に大層役立っていると報告がありました。
 王都でも取り入れようとミゲル枢機卿がお考えでしたよ。」

 テオルドは嬉しそうに頷くと子供達にお伽話をしていたイオリの事を思い出していた。

「本人は素直で頭のいい人間でな。
 自分が知っている知識がこの国にもたらす影響を恐れている。
 それでも、生活の向上については余念がなくてな。
 いつも試行錯誤しては我々を楽しませてくれているんだ。」

「是非にもお会いしたいですね。」

「丁度いい。
 一緒に来ているんだ。紹介しよう。」

 席を立つテオルドに続くようにディマルコ枢機卿は立ち上がった。




 一方、そのイオリといえば・・・。

「さぁ、皆んな。
 王都まで来た報告をしよう。」

「「「「はーい」」」」

 子供達と共に祭壇に向かい祈りを捧げていた。
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