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帰還  〜ポーレット〜

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 カサドに注文してから2週間が経った。イオリ達は昼をすぎた時間に工房の扉を叩いた。

「「「カーサードーさーん!!」」」

 子供達の声が響くと、ぎーっと扉が力なく開いた。

「おお。来たか。入れ。」

 どうみてもお疲れなカサドを心配そうにイオリは声をかけた。

「また、無理してくれたんですか?」

「いや。
 作り始めると色々とアイディアが沸いてな。試してたら、こんな感じになっちまった。
 気にすんな。奥に用意してる。」

 カサドの後をついて作業場に足を踏み入れるとイオリ達は思わず声をあげた。

「うわー。カッコいい。」

「うん!これ、ヒューゴのでしょ?カッコイイ!」
「パティもそう思う!絶対に合うよ!」

「ナギも!」

「とりあえず、着てみてくれ最後の調整をする。」

 目の前のものが自分の防具と見て戸惑うヒューゴはカサドに連れられ試着室に入っていった。

「ちびっ子嬢ちゃんのはこっちだ。パティ手伝ってやれ。」

「はーい!行こうニナ。」

 パティと手を繋いで試着室に向かうニナに手を振るとイオリはスコルとナギとソファーに腰掛けた。

 最初に出てきたのはヒューゴだった。

「おお。良いな!よし、苦しいとこはないか?」

「ないです・・・。これ本当に俺が着ていいんですか?」

 カサドとイオリの顔を交互に見るとヒューゴは照れたように頬を描いた。

「お前さんにピッタリに作ったんだ。
 お前さん以外に誰が着るんだよ。」

 背中をバシっと叩かれながらもイオリの元にやってきたヒューゴの防具は

 キャメルのベストにグレーのワイシャツにズボンそしてブーツ。背にはキャメルのコートを羽織っていた。

「似合ってますよ。動きづらいとかないですか?」

「ない。どちらかと言うと、服に近いな。防御は大丈夫ですか?」

「あぁ、通常の戦闘なら問題ない。色々と守護をつけているからな。
 双子との連携が大事って聞いたから動きやすさを優先した。
 しかし、大型魔獣や防御を優先するならもっと重いのが良いと思って別のも作った。
 この指輪を嵌めてみろ。」

 出された金の指輪を嵌め、カサドに言われたように触ると一瞬で全身、真っ黒な甲冑姿になっていた。

「なっ!」
「すごい!」
「びっくりした・・・。」

 イオリ達が驚く中、当の本人が一番驚いたように身構えていた。

「頭から、先までウルツアライトっていう火山でしか採れない鉱石で作ってある。
 硬くて重みがあるがその分、防御量は膨大だ。
 お前さんのシールドのスキルと合わせれば、防御力は格段に上がる。
 
 ただな。その都度、着替えるわけにいかんだろう?
 だから、指輪にイベントリーの機能を組み合わせて好きな時に着替えられるように細工しといた。」

「そんな事ができるんですか?」

 驚いたヒューゴは再び指輪に触れ元の防具に戻った。

「それを思いついたのがイオリ達が旅に行ってからだ。
 試行錯誤して完成した。お前らのも全部そうしてるからな。」

 テーブルの横には指輪が並べられていた。

「おお!ありがとうございます!
 めちゃくちゃ便利じゃないですか!さすが名工!」

 イオリは真っ黒な指輪を手に微笑んだ。

 スコルは青、パティは赤、ナギは緑、ニナはピンク。
 それぞれが綺麗な光を放っていた。

「説明は後だ。とりあえず、ヒューゴはいいとして。ちびっ子嬢ちゃんはどうだい?」

 試着室に声をかけるとパティが高揚した顔で出てきた。

「すっごい可愛いの!
 あっ、ヒューゴとお揃いだ。」

 そう話すパティの後ろからテトテト出てきたニナは
 キャメルのベストにグレーのワイシャツ、キュロットスカートにブーツ。そして薄ピンクのフード付きケープを身につけていた。

「「可愛い!!」」

 声を揃えたスコルとナギはニナの元に走り寄った。

「ちびっ子嬢ちゃんのは完全に防御特化。
 お前達みたいにバカはどうせ危ない場所に行くんだろう?
 身軽だがらな。抱えられるようにしてるし、狼のリュックも背負えるようにしてある。
 ヒュドラとブラックパンサーの素材を利用して黒い装束も登録してあるから確認しろ。形は変わらんけどな。」

「ありがとうございます!」

 ヒューゴはお礼を言うとニナを抱き上げた。

「おしょろい?」

「あぁ、お揃いだ。似合ってるぞニナ。」

 「キャッキャ」と笑うニナに微笑むとイオリもお礼を言った。

「ありがとうございます。
 指輪に戦闘服なんて思いつきませんでした。」

「おう、お前らのもセットしてあるからな。
 後、手入れと改造を施した。帰って試しな。
 ヒューゴ!最後にお前の武器だ。こっち来い。」

 さらに奥に行くと大きな大剣が立てかけられていた。

「“ムーン・ライト”と名付けた。月の光だ。
 暗闇の中でも光があればお前さんは迷わないし、輝くだろうて。」

 震えるヒューゴは黒光る大剣を手に真剣に振り回し始めた。

「今までの中で一番、手にしっくりきます。
 いつまでも持っていられそうだ。」

 ヒューゴの反応に満足するとカサドはドカッと椅子に座った。

「流石にしんどいな。おい、イオリ今回も持ってきたんだろうな。」

 カサドの言っている事がわかるイオリは腰バックから取り出した。

「こっちから、角煮にポテトサラダ、出汁巻卵、味噌汁におかかおにぎりですよ。
 今日はこのお酒にしました。」

 並べられた料理とチャポンっと音のする木筒にニンマリするとカサドは飛び上がって喜んだ。

「これの為に仕事をしてんだよ!
 早速、食わせろ!!」

 残りの説明を後回しにカサドはイオリの料理で英気を取り戻していった。

「クァァァ!これだよ!これ!この一杯が美味いんだ。」
 
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