227 / 473
帰還 〜ポーレット〜
299
しおりを挟む
「はぁー。昨日のカツ丼は格別に旨かったな・・・。」
天井を仰ぎ見るヴァルトは思い出すかの様に目を細めた。
「えぇ、そうですね。聞けば味付けの決め手は海で取れる干し魚だそうです。
山の物と海の物の癒合が昨夜のカツ丼なのですね。」
なんだかんだ言って、大食漢のトゥーレもお気に入りだったのかヴァルトに同調して目を細めていた。
「米は良いな。単体で食べると何だか分からないが、味の濃い料理が出されると米が無性に食べたくなる。
イオリはそれをよく知ってるぜ。」
マルクルなんて食通にでもなったかの様に批評を始めると、3人は顔を見合わせニヤリとした。
「さぁ、イオリにばかり気を取られてはいられませんよ。
また書類が溜まらないように仕事を進めましょう。」
トゥーレの言葉にヴァルトは溜息を吐きながら書類の束を手にとった。
クロムスがテーブルの端で齧っているのは、昨夜イオリから貰った飴がけのアーモンドだろう。
手を伸ばそうとすると、小さな手でパチンっ!と叩かれた。
「そう言えば、聞きました?商人ギルドから、イオリへの面会を嘆願する手紙が届いたらしいですよ。」
自身も仕事の書類から目を離さずにトゥーレは言った。
「やっとか・・・。いつ来るものかと思っていたが、想像より遅かったな。
で?父上はどうするって?」
「イオリに聞いてから返事をする様で後ほどガーデンに招待すると言っていましたよ。」
「それなら、その時一緒に休憩を取ろう。
父上達の話も聞けるだろうからな。」
一先ずは仕事に没頭することになったヴァルトであったが一枚の報告書で手が止まった。
「昨日、イオリに絡んだ冒険者達の処分はどうなった?」
「街からの退去は免れませんが、冒険者ギルドの判断はまだついてませんよ?
どうしました?」
ヴァルトが一枚の書類をトゥーレに差し出した。
「なるほど、貴族の依頼を受けた冒険者達なのですね。
これは・・・。冒険者ギルドへ伝えておきましょう。
正式な依頼の裏に違法依頼を受ける冒険者がいるとはね。
小銭稼ぎの裏には大金が動くと言うやつですか?」
マルクルも席を立ち、トゥーレの持っている紙を覗くと顔を顰めた。
「これは泥棒じゃないか?ホワイトキャビンの製造元から砂糖のレシピを盗めって事だろう?」
「正確には違いますね。どの様な製造工程の元、安値が実現できるのか確認を取れです。」
「一緒だろうが!」
怒るマルクルは詰め寄られ、呆れたトゥーレは首を横に振った。
「私に怒らないでください。彼らの残した契約書類にそう書かれているんですから。」
「何はともあれ、あれを野放しにするな。面倒を起こすぞ。」
「承知しました。今すぐに、治安維持隊に伝えましょう。
ギルドには書面でよろしいですか?」
「あぁ、早い方がいい。
それと父上と兄上にも伝えてくれ。
タヴァロス侯爵が動いたとな。」
トゥーレとマルクルが足早に部屋を出ていくとヴァルトは呻く様に天井を仰いだ。
「面倒な人だ・・・。
自分の娘を兄上に押し付けようとして、断れると今度は砂糖か・・・。」
胸元をトントンとされ首を下げると、クロムスが飴がけアーモンドを一粒《まぁ、食え》という様に差し出してきた。
「ありがとう。もう少し頑張れるよ。」
ヴァルトは微笑むと飴がけアーモンドを口に入れた。
天井を仰ぎ見るヴァルトは思い出すかの様に目を細めた。
「えぇ、そうですね。聞けば味付けの決め手は海で取れる干し魚だそうです。
山の物と海の物の癒合が昨夜のカツ丼なのですね。」
なんだかんだ言って、大食漢のトゥーレもお気に入りだったのかヴァルトに同調して目を細めていた。
「米は良いな。単体で食べると何だか分からないが、味の濃い料理が出されると米が無性に食べたくなる。
イオリはそれをよく知ってるぜ。」
マルクルなんて食通にでもなったかの様に批評を始めると、3人は顔を見合わせニヤリとした。
「さぁ、イオリにばかり気を取られてはいられませんよ。
また書類が溜まらないように仕事を進めましょう。」
トゥーレの言葉にヴァルトは溜息を吐きながら書類の束を手にとった。
クロムスがテーブルの端で齧っているのは、昨夜イオリから貰った飴がけのアーモンドだろう。
手を伸ばそうとすると、小さな手でパチンっ!と叩かれた。
「そう言えば、聞きました?商人ギルドから、イオリへの面会を嘆願する手紙が届いたらしいですよ。」
自身も仕事の書類から目を離さずにトゥーレは言った。
「やっとか・・・。いつ来るものかと思っていたが、想像より遅かったな。
で?父上はどうするって?」
「イオリに聞いてから返事をする様で後ほどガーデンに招待すると言っていましたよ。」
「それなら、その時一緒に休憩を取ろう。
父上達の話も聞けるだろうからな。」
一先ずは仕事に没頭することになったヴァルトであったが一枚の報告書で手が止まった。
「昨日、イオリに絡んだ冒険者達の処分はどうなった?」
「街からの退去は免れませんが、冒険者ギルドの判断はまだついてませんよ?
どうしました?」
ヴァルトが一枚の書類をトゥーレに差し出した。
「なるほど、貴族の依頼を受けた冒険者達なのですね。
これは・・・。冒険者ギルドへ伝えておきましょう。
正式な依頼の裏に違法依頼を受ける冒険者がいるとはね。
小銭稼ぎの裏には大金が動くと言うやつですか?」
マルクルも席を立ち、トゥーレの持っている紙を覗くと顔を顰めた。
「これは泥棒じゃないか?ホワイトキャビンの製造元から砂糖のレシピを盗めって事だろう?」
「正確には違いますね。どの様な製造工程の元、安値が実現できるのか確認を取れです。」
「一緒だろうが!」
怒るマルクルは詰め寄られ、呆れたトゥーレは首を横に振った。
「私に怒らないでください。彼らの残した契約書類にそう書かれているんですから。」
「何はともあれ、あれを野放しにするな。面倒を起こすぞ。」
「承知しました。今すぐに、治安維持隊に伝えましょう。
ギルドには書面でよろしいですか?」
「あぁ、早い方がいい。
それと父上と兄上にも伝えてくれ。
タヴァロス侯爵が動いたとな。」
トゥーレとマルクルが足早に部屋を出ていくとヴァルトは呻く様に天井を仰いだ。
「面倒な人だ・・・。
自分の娘を兄上に押し付けようとして、断れると今度は砂糖か・・・。」
胸元をトントンとされ首を下げると、クロムスが飴がけアーモンドを一粒《まぁ、食え》という様に差し出してきた。
「ありがとう。もう少し頑張れるよ。」
ヴァルトは微笑むと飴がけアーモンドを口に入れた。
1,259
お気に入りに追加
18,278
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。