拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

帰還 〜ポーレット〜

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　屋台エリアに行くと早る気持ちを抑えて、イオリはかつて小麦粉を売ってくれたお兄さんの元へ向かった。
　いつもと同じ場所で商売をする屋台を除くとお兄さんは小麦を他の客に売っていた。

「お兄さん！冒険者ギルドで聞いて来たんだけど。」

「ん？おぉ、兄ちゃん！待ってたよ。
　旅に行ってたって？会えて良かった。」

　そう言うと、店の奥から麻袋を引っ張ってきてイオリに見せた。

「どうだい？言ってた餅米だ。まだ、籾殻をとってないから日持ちするよ。」

　手で救っている餅米を除くとイオリはニンマリとして腕輪を出した。

「ありったけください！いくらになります？」

　笑った小麦のお兄さん事、ミッケルさんは左手の指を5本、右手の指を2本出した。

「全部で5袋ある。普通の米より手に入りづらいから金貨2枚でどうだ？」

「買った！！全部買います！やった・・・。餅米だ。」

　腕輪から金貨2枚を払うとイオリは次々と腰バックに入れていった。

「また、無くなったら言いなよ。早めに手に入れとくから。」

「ありがとうございます。宜しくお願いします。」

　ホクホク顔で屋台から出ると、ヒューゴを含め子供達が呆れた顔で待っていた。

「お前、俺たちの事忘れてただろう。
　ゼンがついててくれたから良いものの、危ないだろう。」

「ごめんなさい。」

　申し訳なさそうに頭を下げたイオリにゼンが飛びかかった。

『それで？イオリが欲しいもの手に入ったの？
　美味しいのできる？できる？』

　キラキラした目を向けるゼンに柔かに頷くイオリに子供達も大喜びだった。

「みんな、ごめん。これだけは手に入れたくってさ。
　今日は難しいけど、近々作るよ。
　さぁ、今度こそカサドさんの工房へ行こう。」

　子供達と手を繋ぎながら歩くイオリは、もち米の利用法を頭に描きながら坂道を歩いた。

「もち米と言ったらせいろかぁ・・・。せいろって、作れるかな？
　まあ、やってみるか・・・。」

　呑気にもち米の事を考えていたイオリはカサドの工房の扉を叩いた。

「「カーサードーさーん！！」」

　双子の声が響いた時だった。木の扉がガバっと開いて、ポーレットの名工であるドワーフのカサドがニヤッとして立っていた。

「来たか！帰って来たって聞いて待ってたんだ。
　どうせ、防具も旅でくたびれてんだろう？出しな！メンテナンスしてやる。」

　ご機嫌なカサドにイオリはニッコリとして会釈した。

「ただいま帰りました。防具の点検もお願いしたいんですけど、今日は新しい仲間の武防具の注文もお願いしにきました。」

　そう言う、イオリに反応してヒューゴの体を全身見るとカサドは真剣な顔で頷いて顎でしゃくった。

「入んな！まずは、体のチェックからだ。お前さんの武器はなんだい？」

「大剣です。初めまして、ヒューゴです。宜しくお願いします。」

「おう！ワシはカサドってんだ。イオリの仲間なら、良いの作ってやるよ。
　どうせお前ら、旅の途中で良い素材持ってんだろ？
　見せろ！見せろ！」

　興奮したカサドの後をついていく子供達の後にイオリは扉を閉めながら笑った。



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　その様子を、別の建物の影から覗いていた男達がいた。

「あれは・・・。あの時のガキどもだな。」

「Sランクって言ってたから、あいつも名工に仕事依頼でもきたんじゃねーの？」

「俺たちの事はさっさと追い返したくせに・・・。イラつくぜ。」

「どうする？出て来たところを捕まえるか？」

　相談すると、男達は再び建物の影に隠れて行った。

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「外に変なのいますね？」

「あ？まだ、いるか？さっき来た奴らなんだがな。
　自分の実力も把握してねーんだ。合った武器の選び方をしていない。
　ありゃだめだ。
　双子の方が自分に見合った武器を選んでる。
　短剣が合う奴が弓だぞ？ありえねーだろ。」

「因縁でもつけようって言うんですかね？
　って、イオリを脅してきた奴らじゃねーか？」

　窓から、覗き込むとヒューゴは呆れた様に言った。

「なんだ？もうやりあったか？
　やっぱり話し聞かなくて正解だな。」

　「ワハハ」と笑うカサドは、カーテンを閉めるとヒューゴの肩を叩き奥へ入っていった。