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帰還  〜ポーレット〜

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 ぬいぐるみリュックを諦めたバートはアーベルの隣に座るとイオリが旅に出た後のポーレットの話を始めた。

「砂糖の反響が凄いです。
 元々、砂糖を扱っていた商会や貴族などの反発が凄まじいと言わずにはいられませんが、そんな事関係ないく市民の間での流通が速いですね。
 初めは紅茶に入れて楽しんでいましたが、グラトニーが出した菓子店を皮切りにお菓子の人気が爆発しています。

 イオリさんの言った通り、レシピを公開してから似た様な菓子を売りに出す店も増え、最初は粗悪品などの問題もありましたが今は商業ギルドの取締り強化のお陰で安定してきました。」

「へー。面白いですね・・・。
 使い方すら分かれば、みんな作れる物ですからね。」

 イオリの言葉にアーベルは首を振った。

「それでも、やはりイオリさんのが一番美味しい。
 何が違うんだと話題になっているよ。

 乳の事業も順調だ。な?」

「はい。今度はそちらの報告もします。
 乳屋の家族には商会内に牛の飼育管理・製造部署と販売部署、そして飲食店の開始をお願いしました。

 牧場の方も順調で砂糖を含めた工場の稼働も始まりました。

 何よりも、カッチェさんの店が繁盛しています。
 流行り物という事ではなく定着していける様にしていきたいと思います。」

 ハンスから書類を渡されバートは確認しながら報告した。

「それは良い報告ですね。
 ご家族はお元気ですか?会いたいなー。」

「喜ぶと思いますよ。
 ご家族は牧場で相変わらずお元気で、カッチェさんだけ街で暮らす様になりました。
 初めは他業種からも嫌がらせがありましたが、今では自信を持って励んでいます。」

 イオリはかつて行った牧場を思い出す様に微笑むと腰バックを漁った。

「アンティティラに行き、目的の物を手に入れてきましたよ。
 冷蔵庫と保温庫です。それと・・・。牧場の工場に設置して欲しい魔道具です。」

 大きな箱と数個の魔道具を前にグラトニーの面々は目を張った。

「冷蔵庫は冷たい環境を保ってくれます。
 開けると冷気が漏れるでしょ?牛乳の保存が長引くと思います。
 保温庫は暖かい温度を保ちます。礼のヨーグルトを作るのに良いかと思います。
 それに、製造には量も必要でしょ?
 部屋自体を冷蔵・保温にできる様に魔道具も作って貰いました。」

「・・・・・。これが冷蔵庫?
 冷たい!!素晴らしい・・・。
 凄いですね!まずは、カッチェさんのお店に設置しましょう。
 保温庫・・・これは牧場の家族に。
 魔道具は早速、工場に設置します。」

 すでに仕事モードのバートはハンスに指示を出すと直ぐに動き出した。

「気に入ってくれたら、アンナさんに言えば分かるので作ってもらえると思いますよ。
 これも、流行ると良いですね。」

 なんて事なく言ったイオリにアーベルは難しい顔をした。

「ある程度、量は制限した方がいいでしょうな。
 急な変化は反発を生みます。
 現に、商業ギルドからイオリさんの紹介をせっつかれています。

 ポーレット公爵の手前、強気に出れないのがもどかしいのでしょう。
 我らにグチグチと煩いのですよ。

 あやつらも商人ですからな。
 情報は早い。
 すでにイオリさんが帰還しているのは知っているでしょう。
 お気をつけて。何かあれば、テオルド様にご相談されるがいい。」

「はい。分かりました。
 ご心配おかけします。」

 イオリはニナを囲み笑っている子供達に目を向け守るべき幸せを改めて確認していた。
 
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