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帰還  〜ポーレット〜

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「あっ。バートさん。
 ただいまです。」

「あっ。バートさん。
 じゃありませんよ!
 何、各街で新しい物を作ってくるんですか!
 アンティティラやダグスクから続々とイオリ案件が舞い込んでくるんですけど!

 言いましたよね?砂糖と牛の乳の案件で忙しくなるって!」

 パニックになっているバートの話をイオリはニヤニヤしながら聞いた。
 そんなバートにアーベルは呆れた様に首を振っていた。

「ヒューゴ!お前!心配したんだからな!
 良かった・・・良かったよぉぉぉぉ。
 お帰りー!!」

 情緒不安定なバートに、これはこれで子供達に見せたら面白がるだろうなと思ったイオリだった。

「すみません。バートさん。そんなつもりなかったんですけど、アンナさんとカイさんが目敏いんですよ。」

 バートはグスグスと鼻水を啜るとソファーに座った。

「そりゃ、グラトニーですもん。
 アンナ姉さんなんて、ぬいぐるみリュックを早く商品化しろと催促してくるし、カイさんは出汁の活用法を開示しろと脅してくるし・・・。
 でも、アンティティラは先に木酢液から勧めた方がいいし、ダグスクは塩の話を進めた方がいいから・・・。」

「分かっているじゃないか!あの子達は自分が欲しいだけだろう。
 お前はやらなければいけない事をちゃんとやれてる。
 そんな、感情の起伏があってどうするんだ!」

 アーベルの叱責とは違う励ましにバートは顔をパンパンとさせた。

「はい。大丈夫です。やれます。
 ・・・駄目ならハンスに任せます!!」

 ゲラゲラと笑うイオリをヒューゴは苦笑して見ていた。

「進めるにしても、後でぬいぐるみリュックをお見せしますね。
 持ち主が貸してくれるかは別ですけどね。
 出汁は近々、ご賞味いただける様にします。
 悪いですけど・・・後は任せます!」

「あぁぁぁぁ。また、それだ!!
 分かりましたよ!やりますよ!やります!ハンスが!!」

 ブルーノと共に壁際に立っているハンスが青筋を立てているので、後でお土産の一つもあげておこうと思うイオリだった。



 それから、しばらくして子供達が入ってくると一層賑やかになった執務室で微笑むアーベルは一際小さい子供に目をやった。

「大旦那様、妹のニナです。
 ニナ・・・。俺達の恩人の方だよ。アーベル・グラトニー様だ。
 イオリと俺達を引き合わせてくれた人だよ。」

 ヒューゴに抱かれたニナはアーベルを凝視した。

「なんて綺麗な子だ。よく、ここまで来てくれたね。
 旅は楽しかったかい?」

「うん。」

「そうか。良かった。怖い想いはしなかったかい?」

「うん。」

「さぁ、こっちにおいで。抱っこさせておくれ。」

「うん。」

 ・・・・・・・・。

「あれー。ニナお話してるー!」

 ナギの言葉に大人達は止まった。

「本当だ!!今、うんって言った!!」

「「言ってた!ニナ!言った!」」

「うん。」

 ぎゃー!!!と騒ぐ、双子とナギそしてイオリに関係なくヒューゴはただひたすら涙を流し小さな妹を抱きしめた。
 そんな兄妹をアーベルは静かに自分の腕の中に包み込んだ。
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