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帰還  〜ポーレット〜

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 それからイオリはポーレットを出てから遭遇したミズガルドの貴族が絡んでいるであろう事件の話をし始めた。

「ちょっと待て。という事はアンティティラではメドゥイ侯爵の名が出てきて、ダグスクではヴァハマン侯爵・・・。
 どういう事だ?ミズガルドでは何が起こっているんだ?」

 呻くニコライにイオリは自分の考えを伝えた。

「メドゥイ侯爵に関しては確実性はないですよ。
 だって、罪を犯したとは言え騙された女・ロッタが聞いたのは《アンタのとこの名産だろうがロードクロサイトなんていらねーよ》と言う言葉だけ。
 メドゥイ侯爵家の領地でしか取れない鉱物だとか聞きましたが、犯罪を頼む依頼人が自分の領地でしか取れない品を報酬として渡すでしょうか?証拠を残すだけですよ?
 普通の金貨の方がバレにくいです。」

「確かに・・・。」

 考え込むニコライにイオリは続けた。

「しかし、ヴァハマン侯爵の方は信憑性は高いと思います。
 リルラは契約紋で縛られた奴隷・・・。ソルによって契約紋を消し去ると泣きながら笑っていました。
 ララノア・・・。ヴァハマン侯爵に付けられた名前をいたく嫌っている様でしたよ。
 ねぇ。ヒューゴさん。」

 イオリに意見を求められてヒューゴは静かに頷いた。

「アンティティラの事件はまだ奴隷商の元におりましたので分かりかねますが、ダグスクでの事件は主の意見に同意します。
 あの女は、心底ほっとしている様でした・・・。」

「そうか・・・。可哀想な生き方をしてきてしまったのだな。父上・・・。」

 ニコライはテオルドに顔を向けた。

「ふむ・・・。ヴァハマンという者は会ったことが無いが、メドゥイ侯爵は3度ほど会った事がある。
 機知に富んだ人物であったと記憶する。
 この様な稚拙な考えの持ち主とは考え辛いが、ノアの調べによると代替わりの噂がある。
 何があっても不思議ではないな。」

 ノアも傍で静かに頷いた。

「ヴァハマン侯爵・・・。調べる必要があるな・・・。私からも王都へ報告をしておこう。」

 テオルドの言葉に沈んだ空気の中イオリは1人、腰バックをゴソゴソと漁ると大きな箱をドカンっ!と出した。

「ぅわっ!ビックリした!!脅かすなイオリ!何だこれは?」

「心臓のバクバクが止まらないぞ・・・。」

「テオ、大丈夫か?」

「驚いたな・・・・。」

 クスクス笑うイオリは少し高級そうなタンスを取り出すと嬉しそうに摩った。

「難しい話が終わりそうだったんで、お土産出すことにしました!
 これ!俺が欲しかった冷蔵庫ですよ!!」

 満々の笑みのイオリにヴァルトを始め、一同が肩の力が落ちたのは言うまでもない。

『クククッ。やはりイオリは面白い。』

『国を揺るがしかねない話を難しい話で片付ける・・・プププっ。』

 番のカーバンクルだけは体を震わせ笑っていたのであった。
 
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