拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

帰還 〜ポーレット〜

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「紹介します。新しい家族になったヒューゴさんとニナの兄妹です。
　アンティティラから一緒に旅をしてきました。」

　ポーレット公爵であるテオルドはイオリの側で膝をついて首を垂れるヒューゴに目をやると微笑みながら挨拶をした。

「そうか。イオリと共に旅をするのは楽かろうが、苦労もしただろう？よく、ポーレットまで来てくれた。
　イオリの家族というのなら、このポーレット公爵家も家族だ遠慮などせずに暮らすがいい。
　ニナと言ったか？ウチには女の子がいなかったからパティがいてくれると妻が悦ぶ。お前も一緒に相手してくれると嬉しい。」

　ヒューゴは顔を上げると目にうっすらと涙を浮かべて微笑んだ。

「お初にお目に掛かります。私はヒューゴ。そして、妹のニナでございます。
　良き主人に恵まれ、分不相応にもお目通りでき万感の思いでございます。
　公爵様のお屋敷でお世話になると知ったのも先日の魔の森の中での事。
　恐悦至極ではございますが主共々、よろしくお願いいたします。」

　そんなヒューゴに双子はニヤニヤしながら近寄り

「「ヒューゴがまた泣いてる！」」
　
　とイオリに言いつけるように指をさした。

「人を指差さないよ。今日は良いんだ。
　2人もただいまのご挨拶だよ。」

「「はーい！ナギ！ニナ！」」

　パティはナギをスコルはニナの手を引くとテオルドの側にやってくると頭を下げた。

「「ただいま帰りました！」」

「ただいま帰りました！」

　ぺこっ

　そんな子供達を愛おしそうに見るとテオルドは1人1人の頭を撫でた。

「よく帰ってきた。旅で見てきた、体験した経験は大人になった時の実になるものだ。
　大切にしなさい。」

　子供達は嬉しそうに頷き、今度はニコライに手を振った。

「明日にでも、土産話を聞かせてくれ。」

　ニコライはニコニコと頷くとクリストフに合図をした。

「今日は屋敷に泊まっていけ。母上も喜ぶ。
　子供達は先に休ませよう。」

　クリストフに連れられて子供達とアウラが退出するとイオリはルチアとデニに頭を下げた。

「ただいま帰りました。ルチアさん、デニさん。」

『お帰りなさい。良き旅のようで何よりです。』

『ゼンもお疲れ様。ダンジョンまで行ったって聞いたけど、無事で何よりだよ。』

『ただいま！！ルチアもデニも久しぶり！クロムスも明日からまた遊べるね！小さなバンデは？』

　カーバンクルの番2匹にゼンは鼻を擦り付けて挨拶をした。

『今はテオルドの右のポケットの中で眠っています。最近はそこがお気に入りなんです。ふふふ』

　こんもりとしているテオのポケットに視線を向けるとイオリとゼンは微笑んだ。

「そうだ。こちらにも紹介したい子がいるんです。
　フェニックスのソルレカランテ、通称・ソルです。」

　イオリは肩の上で首をクィクィっと動かしていたソルを手にのせてルチアとデニの前に下ろした。

「おぉ・・・。本当に生きている内にフェニックスを見ることが出来るとは・・・。」

　テオルドは勿論、大人達は驚くように覗き込んだ。
　ソルは気にするようでもなくルチアとデニに近づくと再びクィクィっと首を動かしていた。
　カーバンクルの番はクスクスと笑いながらソルを両側から抱きしめるようにギュッとした。
　
『どうやら随分と名前を気に入っているようですね。名前の説明をしてくれましたよ。
　夕陽という意味なのですね。ええ、美しい貴方にピッタリです。』

　ルチアの言葉に満足したのかソルはゼンの頭に移りクロムスと改めて挨拶を交わしていた。

「もう覚醒しているのかい？」

　ノアがソルから目を離さずにイオリに尋ねた。

「うーん。ヒューゴさん。」

　イオリの呼びかけにヒューゴは頷き前に出た。

「お聞きでしょうが、私は奴隷商におりました際に怪我をして足を引きずっておりました。
　しかし、ソルによってこの様に何の支障もなく動けています。
　むしろ、元の現役時代よりも体の調子がいい様に感じます。」

　驚く面々にイオリはソルの頭を撫でながら、首を傾げた。

「それが覚醒というのですか？
　この子は天空の守護者・スカイヤに託されました。
　確か成長によって姿を変えるとか言ってましたけど、俺たちは小さなソルと成獣になったソルしか見ていません。」

「ふむ。それなら、もう一段階変化する可能性があるな。」

　ノアは思案しながらもテオルドに頷いた。

「見ているとイオリに従順であり、デニ・ルチアの両カーバンクルも認めている事から大丈夫でしょう。」

「そうか・・・。うん。ますますイオリの周りは騒がしくなりそうだな。」

　不安そうなヒューゴにテオルドは微笑みながら首を横に振った。

「目をつけられようとも、名だけの公爵が側にいるのだ。
　簡単には手を出せまいよ。この街にいる時は安心しなさい。」

　ヒューゴは眉を下げながらも頷き後ろに下がった。

「ところで、イオリ各地でミズガルド絡みの事件にあったって？
　聞かせてくれないか？」

　ニコライの言葉にイオリはカモミールティーを口にしてから話し始めた。