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初めての旅 〜ダグスク〜
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「おいおいおい!どーなんてんだ?!ソフィ!」
頭を掻きながらギルドに入ってきたブルックは冒険者達を前に腕組みをしたギルマス・ソフィアンヌに声をかけた。
現在、ダグスクの冒険者ギルドも慌ただしかった。
「知らないよ!報告では、突然のクラーケンですって。
そんなわけないわ!ここは穏やかなグダスクの港街よ?
上位冒険者は、すぐさま港に直行して!船の用意をするわ!
下位冒険者は住人の避難を!騎士団が率先してやってるから、手伝って頂戴!
ここからはフリーの仕事よ!急いで!!」
ソフィアンヌは武器を担いだブルックを捕まえると耳打ちした。
「おそらく、イオリが港にいるわ。朝市に行くって言ってたからね。
見つけ次第、声をかけてね。」
「分かった。行ってくる。お前は・・・。」
「分かってるわ。ここに居て対処に備えるわ。」
かつての相棒を見送るとソフィアンヌは侯爵家へと連絡を急いだ。
「サブマス!クラーケンって何だよ!」
「知らねーよ!突然現れたんだとよ。さっさと覚悟決めろよ!海の魔獣は厄介だぞ。」
「オィオィオィ!もうすぐそこまで来てるじゃねーかよ!やべーよ。」
「ここまで来たら、どこへ逃げようと一緒だ!行くぞ!」
冒険者達を連れて港にやって来たブルックの目に入って来たのは、すでに入江まで侵入して来た巨大なクラーケンだった。
最早、やる事などないこの状況で一矢報いてやろうと船まで急ぐとそこに居たのはイオリのパーティの子供達とヒューゴだった。
「おい!お前達!!」
振り返ったヒューゴはブルックに会釈すると視線をクラーケンに戻した。
「イオリは!?子供達までこんな所にいて良いのか?」
ブルックの叫びにヒューゴは指をさした。
「イオリはあそこです。まぁ、大丈夫でしょう。
そういえば、シールドのスキル持ってる奴います?」
見上げたクレーンの先に何やら構えて立っているイオリを見たブルックは驚いた。
「あれは・・・。」
「あれがイオリの武器です。イオリしか使用できないようになってるんで悪しからず。
で、この一帯にシールドを貼ろうと思います。手伝って貰いたい。」
「ああ・・・!!分かった!誰か!シールド張れるやつはいるか?!」
ブルックの叫びに何人かが手をあげた。
「でも、港一帯なんて無理ですよ?!」
そんな魔法使いの女性冒険者にヒューゴは笑いかけた。
「全部なんていいんだ。手を貸してくれると助かる。」
そう言うとシールドスキルを発動した。
港の前に一瞬で分厚いシールドを張ったヒューゴに驚きの声が上がり、シールドのスキル持ち達はそんなヒューゴの背に手を当てると自分達の力を渡していった。
ヒューゴ達の大きなシールドの壁を見て一安心したブルックはイオリを見つめた。
「ありゃ、何だ?」
「イオリ格好良いんだー。」
ニコニコする子供達に悲壮感はない。
あんなに巨大な魔獣を前にしているにも関わらず、イオリが倒すと確信しているのだ。
「アイツは一体・・・。」
そんな時だった。イオリの従魔であるゼンが視線を建物の影に向けた。
ピチチチっ
イオリは肩に止まったソルに微笑んだ。
「うん。もう少し引き付けたいところだよね。
でも、波が大きくなっちゃうよ?」
ピチチチっ
「ふふ。確かにね。もう良いか。」
イオリは鑑定を使いクラーケンの弱点を探した。
「よし。」
一呼吸したイオリはスナイパーライフルの引き金を引いた。
ドギューン!ドギューン!
2発の硬化弾は真っ直ぐとクラーケンの眉間に打ち込まれ肉が弾けるように散った。
ギャーーー!!ギュルギュル・・・・
クラーケンは巨体をくねらせる様に絶命し大きな飛沫と共に海に身を落とした。
その反動か波が大きく動き、街を襲うかのようにやって来た。
「来るぞ!」
ヒューゴはシールドの力を強め波に対抗すべく全力で力を注いだ。
分厚いシールドに強く大きな波がぶつかるとヒューゴは踏ん張るように息を止めた。
「フンッ!!!ダァァァァァ!!」
何度目かの波のぶつかりを最後に徐々に落ち着いて来た波を確認するとヒューゴはシールドを解除した。
「あぁぁ!しんどい!イオリ!終わりか?!」
シールドに衝突した大波のしぶきが雨の様に降ってきた。
クレーンの先端から、状況を確認するとイオリが飛び降りて来た。
「そうですね。おしまいみたいです。
サブマスお疲れ様です。」
ケロっとしているイオリにブルックは力が抜けたように溜息を吐いた。
「お前・・・はぁ・・・。終わったんだな?」
「はい。あのクラーケンだけみたいです。
あのままじゃ邪魔ですよね?どうしましょう??」
「それは、ギルドが請け負うよ。船を出して解体したり牽引すれば良い。」
その言葉にイオリは安心すると、ボー然としていた漁師達に言った。
「お魚下さい。」
頭を掻きながらギルドに入ってきたブルックは冒険者達を前に腕組みをしたギルマス・ソフィアンヌに声をかけた。
現在、ダグスクの冒険者ギルドも慌ただしかった。
「知らないよ!報告では、突然のクラーケンですって。
そんなわけないわ!ここは穏やかなグダスクの港街よ?
上位冒険者は、すぐさま港に直行して!船の用意をするわ!
下位冒険者は住人の避難を!騎士団が率先してやってるから、手伝って頂戴!
ここからはフリーの仕事よ!急いで!!」
ソフィアンヌは武器を担いだブルックを捕まえると耳打ちした。
「おそらく、イオリが港にいるわ。朝市に行くって言ってたからね。
見つけ次第、声をかけてね。」
「分かった。行ってくる。お前は・・・。」
「分かってるわ。ここに居て対処に備えるわ。」
かつての相棒を見送るとソフィアンヌは侯爵家へと連絡を急いだ。
「サブマス!クラーケンって何だよ!」
「知らねーよ!突然現れたんだとよ。さっさと覚悟決めろよ!海の魔獣は厄介だぞ。」
「オィオィオィ!もうすぐそこまで来てるじゃねーかよ!やべーよ。」
「ここまで来たら、どこへ逃げようと一緒だ!行くぞ!」
冒険者達を連れて港にやって来たブルックの目に入って来たのは、すでに入江まで侵入して来た巨大なクラーケンだった。
最早、やる事などないこの状況で一矢報いてやろうと船まで急ぐとそこに居たのはイオリのパーティの子供達とヒューゴだった。
「おい!お前達!!」
振り返ったヒューゴはブルックに会釈すると視線をクラーケンに戻した。
「イオリは!?子供達までこんな所にいて良いのか?」
ブルックの叫びにヒューゴは指をさした。
「イオリはあそこです。まぁ、大丈夫でしょう。
そういえば、シールドのスキル持ってる奴います?」
見上げたクレーンの先に何やら構えて立っているイオリを見たブルックは驚いた。
「あれは・・・。」
「あれがイオリの武器です。イオリしか使用できないようになってるんで悪しからず。
で、この一帯にシールドを貼ろうと思います。手伝って貰いたい。」
「ああ・・・!!分かった!誰か!シールド張れるやつはいるか?!」
ブルックの叫びに何人かが手をあげた。
「でも、港一帯なんて無理ですよ?!」
そんな魔法使いの女性冒険者にヒューゴは笑いかけた。
「全部なんていいんだ。手を貸してくれると助かる。」
そう言うとシールドスキルを発動した。
港の前に一瞬で分厚いシールドを張ったヒューゴに驚きの声が上がり、シールドのスキル持ち達はそんなヒューゴの背に手を当てると自分達の力を渡していった。
ヒューゴ達の大きなシールドの壁を見て一安心したブルックはイオリを見つめた。
「ありゃ、何だ?」
「イオリ格好良いんだー。」
ニコニコする子供達に悲壮感はない。
あんなに巨大な魔獣を前にしているにも関わらず、イオリが倒すと確信しているのだ。
「アイツは一体・・・。」
そんな時だった。イオリの従魔であるゼンが視線を建物の影に向けた。
ピチチチっ
イオリは肩に止まったソルに微笑んだ。
「うん。もう少し引き付けたいところだよね。
でも、波が大きくなっちゃうよ?」
ピチチチっ
「ふふ。確かにね。もう良いか。」
イオリは鑑定を使いクラーケンの弱点を探した。
「よし。」
一呼吸したイオリはスナイパーライフルの引き金を引いた。
ドギューン!ドギューン!
2発の硬化弾は真っ直ぐとクラーケンの眉間に打ち込まれ肉が弾けるように散った。
ギャーーー!!ギュルギュル・・・・
クラーケンは巨体をくねらせる様に絶命し大きな飛沫と共に海に身を落とした。
その反動か波が大きく動き、街を襲うかのようにやって来た。
「来るぞ!」
ヒューゴはシールドの力を強め波に対抗すべく全力で力を注いだ。
分厚いシールドに強く大きな波がぶつかるとヒューゴは踏ん張るように息を止めた。
「フンッ!!!ダァァァァァ!!」
何度目かの波のぶつかりを最後に徐々に落ち着いて来た波を確認するとヒューゴはシールドを解除した。
「あぁぁ!しんどい!イオリ!終わりか?!」
シールドに衝突した大波のしぶきが雨の様に降ってきた。
クレーンの先端から、状況を確認するとイオリが飛び降りて来た。
「そうですね。おしまいみたいです。
サブマスお疲れ様です。」
ケロっとしているイオリにブルックは力が抜けたように溜息を吐いた。
「お前・・・はぁ・・・。終わったんだな?」
「はい。あのクラーケンだけみたいです。
あのままじゃ邪魔ですよね?どうしましょう??」
「それは、ギルドが請け負うよ。船を出して解体したり牽引すれば良い。」
その言葉にイオリは安心すると、ボー然としていた漁師達に言った。
「お魚下さい。」
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