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初めての旅 〜ダグスク〜
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『こんにちわ。相沢さん。この街はいかがですか?』
「こんにちわ。リュオン様。
景色が綺麗で人も元気な良い街です。」
微笑むとリュオンは戯れてくるゼンとソルの頭を撫でた。
『ジュウゾウは物静かな人物でした。
しかし、一つの事に打ち込む情熱は人一倍でした。』
唐突に話し出すリュオンにイオリは注目した。
「もしかして、スカイヤに挑んだのも・・・。」
『ジュウゾウです。相手にされなくて残念がっていましたよ。』
クスクスと笑うリュオンはイオリの様子を見てなんとも言えない顔をした。
『ジュウゾウの存在が複雑ですか?』
「いいえ。
以前に愛し子がいた事は知ってしましたし、侍の時代の人かな?と思っていたので複雑な感情はありません。
しかし、ジュウゾウさんが望郷の念に駆られていた事と祖先の皆さんの割り切れなかったであろう想いを知って涙が出てしまいました。」
リュオンは綺麗な虹色の髪を靡かせながら、思い出すように話し始めた。
『ジュウゾウ・・・。十蔵は海の地域の出身です。
海が当たり前のようにあり、魚などの海産物の扱いなどはイオリさんが動物を捌くのと同じくらい身に付いていました。
人生の転機になってしまったのは、彼が23の年の頃。
武士としての仕事に従事し私生活では結婚して子供が2人いました。』
「ご家族がいた・・・。」
イオリは話が暗い道に進んでいく予感がして眉間にシワがよった。
『十蔵には3歳下の妹がいました。その妹が長年の恋仲にあった者と結婚する事になりました。
それは、十蔵にとって同僚であり親友でもあり兄弟のような人物で2人の結婚に彼は大喜びでした。
しかし、現実は甘くなかった。
十蔵達の上司・・・代官の息子が妹を見染めたのです。
代官は妹の婚約者を戦の最前線へ送り、結果死なせてしまった。
妹は失意のもと結婚を迫る代官親子を恨み海へ身を落としてしまったのです。
恥をかかされたと代官親子は責任を十蔵一家へ向けました。
父・母・妻・可愛い2人の子供までが処罰されてしまった。
十蔵は最後の反抗と一太刀を上司の息子に負わせ、死した息子を確認すると自刃にかかって世を終えました。』
ジュウゾウの壮絶な人生に言葉が出ないイオリにリュオンは話を続けた。
『その時、海の神があまりの悲恋に悲しみました。
同時に十蔵の意思の強さに心を揺さぶられ私の元に救いを求めてきたのです。
私の世界も荒れ果てた時代でした。
彼らが何かを変えてくれるかもしれないと願いを込めてこの世界へ招いたのです。』
「・・・。そんな事が・・・。
あれ?今、彼らって・・・。」
リュオンはニッコリ微笑むと頷いた。
『十蔵は、前世の記憶を持って転移した愛し子です。
そして、記憶を持たずに他人に魂が移された親友・和馬がマテオ・アースガイルです。』
!!!!
「えー!!そんな事が・・・。
それじゃ、この国は俺の故郷の人間達で作り上げられたと言う事ですか??」
『結果、そうなります。
しかし、記憶を持って転移したのは十蔵のみ。カズマに記憶を授ける事が出来ませんでした。
十蔵は初めてマテオに会った時、彼が和馬なのだと気づきました。
十蔵は記憶の持たない新たな和馬・・・マテオと新たに友情を育んだのです。』
「辛くはなかったのでしょうか・・・。
本来、沢山の思い出を共有していたはずなのに1人でその想いを抱え込むのは辛くなかったのでしょうか。」
『辛かったはずです。しかし、それよりもマテオとの友情は本物でした。
十蔵は国づくりという大仕事を終わらせると、王都から離れた港街へと移り一市民として生きる事を願い出ました。
十蔵にとってこの街は故郷の海に似ていたからです。
何よりも・・・死に別れた妻と子供が待つ街だったから。』
何という運命だったのだろう・・・。
イオリは十蔵の人生の重さを推し量れないでいた。
それでも、何よりも妻子と共に生きる事が出来て良かったと目端から流れる涙を拭った。
『彼の父と母は、新しい世界に行くのではなく天寿を全うしたいと転移を拒みました。
十蔵は子には辛い思い出を忘れて欲しいと再び生まれてくる事を望みました。
妻は前世の記憶を持ち、十蔵がマテオと共に国づくりに奔走する中、グダスクの街で健気に待ち続けたのです。
そして現在、十蔵の子孫はエマさんのお孫さんまで続いているのですよ。』
十蔵という人物の一代スペクタルを聞かされイオリは汗をかかずにはいられなかった。
「それでは・・・十蔵さんだけでなく、奥さんとマテオさんも愛し子という事ですか・・・。」
『まぁ、そうなりますがマテオは自分がそうだとは認識していませんし妻の志乃さんは純然たる主婦の方ですよ。
そして、もう1人・・・妹の紗奈さんはマテオの妻、初代・王妃のラサナ妃となりました。』
イオリは嬉しさのあまり声すら出なくなった。
『ラサナ妃も記憶を持たずに他人の魂に移りました。
しかし、しっかりとマテオと愛という絆を持ち、このアースガイルを支える存在になってくれましたよ。
十蔵にとって、2人の行く末を見守る事が出来て満足だったのでしょう。
その後は、適度な距離を保ちつつ穏やかに人生を全うしました。』
「ダグスクという街は・・・。奇跡の塊ですね。
誰が忘れようと、彼らが生きた証が確かに残っている。
俺も、そうありたいと思います。」
『ふふふ。イオリさんは色々とやらかしていますから大丈夫でしょう。
最後に、教会の脇にある石碑を見ていくといいでしょう。
さぁ、今日は沢山話しましたね。家族の元へお帰りなさい。
また会いましょう。』
イオリ達が目を開けると真っ白な教会に戻っていた。
「こんにちわ。リュオン様。
景色が綺麗で人も元気な良い街です。」
微笑むとリュオンは戯れてくるゼンとソルの頭を撫でた。
『ジュウゾウは物静かな人物でした。
しかし、一つの事に打ち込む情熱は人一倍でした。』
唐突に話し出すリュオンにイオリは注目した。
「もしかして、スカイヤに挑んだのも・・・。」
『ジュウゾウです。相手にされなくて残念がっていましたよ。』
クスクスと笑うリュオンはイオリの様子を見てなんとも言えない顔をした。
『ジュウゾウの存在が複雑ですか?』
「いいえ。
以前に愛し子がいた事は知ってしましたし、侍の時代の人かな?と思っていたので複雑な感情はありません。
しかし、ジュウゾウさんが望郷の念に駆られていた事と祖先の皆さんの割り切れなかったであろう想いを知って涙が出てしまいました。」
リュオンは綺麗な虹色の髪を靡かせながら、思い出すように話し始めた。
『ジュウゾウ・・・。十蔵は海の地域の出身です。
海が当たり前のようにあり、魚などの海産物の扱いなどはイオリさんが動物を捌くのと同じくらい身に付いていました。
人生の転機になってしまったのは、彼が23の年の頃。
武士としての仕事に従事し私生活では結婚して子供が2人いました。』
「ご家族がいた・・・。」
イオリは話が暗い道に進んでいく予感がして眉間にシワがよった。
『十蔵には3歳下の妹がいました。その妹が長年の恋仲にあった者と結婚する事になりました。
それは、十蔵にとって同僚であり親友でもあり兄弟のような人物で2人の結婚に彼は大喜びでした。
しかし、現実は甘くなかった。
十蔵達の上司・・・代官の息子が妹を見染めたのです。
代官は妹の婚約者を戦の最前線へ送り、結果死なせてしまった。
妹は失意のもと結婚を迫る代官親子を恨み海へ身を落としてしまったのです。
恥をかかされたと代官親子は責任を十蔵一家へ向けました。
父・母・妻・可愛い2人の子供までが処罰されてしまった。
十蔵は最後の反抗と一太刀を上司の息子に負わせ、死した息子を確認すると自刃にかかって世を終えました。』
ジュウゾウの壮絶な人生に言葉が出ないイオリにリュオンは話を続けた。
『その時、海の神があまりの悲恋に悲しみました。
同時に十蔵の意思の強さに心を揺さぶられ私の元に救いを求めてきたのです。
私の世界も荒れ果てた時代でした。
彼らが何かを変えてくれるかもしれないと願いを込めてこの世界へ招いたのです。』
「・・・。そんな事が・・・。
あれ?今、彼らって・・・。」
リュオンはニッコリ微笑むと頷いた。
『十蔵は、前世の記憶を持って転移した愛し子です。
そして、記憶を持たずに他人に魂が移された親友・和馬がマテオ・アースガイルです。』
!!!!
「えー!!そんな事が・・・。
それじゃ、この国は俺の故郷の人間達で作り上げられたと言う事ですか??」
『結果、そうなります。
しかし、記憶を持って転移したのは十蔵のみ。カズマに記憶を授ける事が出来ませんでした。
十蔵は初めてマテオに会った時、彼が和馬なのだと気づきました。
十蔵は記憶の持たない新たな和馬・・・マテオと新たに友情を育んだのです。』
「辛くはなかったのでしょうか・・・。
本来、沢山の思い出を共有していたはずなのに1人でその想いを抱え込むのは辛くなかったのでしょうか。」
『辛かったはずです。しかし、それよりもマテオとの友情は本物でした。
十蔵は国づくりという大仕事を終わらせると、王都から離れた港街へと移り一市民として生きる事を願い出ました。
十蔵にとってこの街は故郷の海に似ていたからです。
何よりも・・・死に別れた妻と子供が待つ街だったから。』
何という運命だったのだろう・・・。
イオリは十蔵の人生の重さを推し量れないでいた。
それでも、何よりも妻子と共に生きる事が出来て良かったと目端から流れる涙を拭った。
『彼の父と母は、新しい世界に行くのではなく天寿を全うしたいと転移を拒みました。
十蔵は子には辛い思い出を忘れて欲しいと再び生まれてくる事を望みました。
妻は前世の記憶を持ち、十蔵がマテオと共に国づくりに奔走する中、グダスクの街で健気に待ち続けたのです。
そして現在、十蔵の子孫はエマさんのお孫さんまで続いているのですよ。』
十蔵という人物の一代スペクタルを聞かされイオリは汗をかかずにはいられなかった。
「それでは・・・十蔵さんだけでなく、奥さんとマテオさんも愛し子という事ですか・・・。」
『まぁ、そうなりますがマテオは自分がそうだとは認識していませんし妻の志乃さんは純然たる主婦の方ですよ。
そして、もう1人・・・妹の紗奈さんはマテオの妻、初代・王妃のラサナ妃となりました。』
イオリは嬉しさのあまり声すら出なくなった。
『ラサナ妃も記憶を持たずに他人の魂に移りました。
しかし、しっかりとマテオと愛という絆を持ち、このアースガイルを支える存在になってくれましたよ。
十蔵にとって、2人の行く末を見守る事が出来て満足だったのでしょう。
その後は、適度な距離を保ちつつ穏やかに人生を全うしました。』
「ダグスクという街は・・・。奇跡の塊ですね。
誰が忘れようと、彼らが生きた証が確かに残っている。
俺も、そうありたいと思います。」
『ふふふ。イオリさんは色々とやらかしていますから大丈夫でしょう。
最後に、教会の脇にある石碑を見ていくといいでしょう。
さぁ、今日は沢山話しましたね。家族の元へお帰りなさい。
また会いましょう。』
イオリ達が目を開けると真っ白な教会に戻っていた。
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