上 下
157 / 472
初めての旅 〜ダグスク〜

229

しおりを挟む
 朝ごはんも食べ、片付けを終えるとイオリ達はいよいよダグスクの街へ繰り出した。
 別宅を出て道沿いに行けば海まで着くとの事だったので、軽い散歩だと徒歩で行くことにした。

 快晴の空は同じ空だというのに何故か山で見た色とは違う気がする。
 ささやかな違いを楽しみつつイオリ達は道を進んだ。



 大通りに出ると朝市とやらが終わった時間なのか人の出入りもあり賑わっていた。
 荷車や人の行き来の邪魔にならないようにイオリ達は避けながら歩いた。

「朝の時間はポーレットより人が多いな・・・。
 みんな逸れないようにね。」

 ゼンの背に双子を乗せ。ナギとニナをアウラに乗せた。
 イオリとヒューゴで挟むように歩いた。
 ソルはイオリの肩にとまり、首を動かし色んなものを見ていた。


「イオリ。アレだ。」
 
 ヒューゴが指さす建物には冒険者ギルドのマークが掲げられた看板があった。  
 木の扉を開くと、中は冒険者達で賑わっていた。

 ダグスクの冒険者ギルドは一回の正面に受付があり、左に依頼ボードがある。
 右側は酒場になっていた。
 今までのギルドと違うのは、裏にも出入り口があるのか、冒険者が出入りしている。

 イオリ達は受付に並ぶと新顔に興味深々の冒険者達が視線を向けて来た。
 順番になると受付の男性が笑顔で迎えた。

「おはようございます。
 ダグスクへは初めてですか?
 ギルドカードはお持ちですか?」

「はい。みんな出してー。」

 イオリ達がカードを出すと男性はそれぞれを確認していった。
 イオリのプラチナカードを手にするとビクっ!と止まったが笑顔を崩す事なくカードを返してくれた。

「確認しました。
 次回は2階の受付をお使い下さい。
 上位ランク依頼の受付は2階にございます。
 パーティーランクもAランクとあるので問題ないです。
 こちらで、何か御用はありますか?承ります。」

 そんな男性にイオリはギルマスへの取り継ぎを頼んだ。

「昨日、訪問すると約束したんです。
 イオリが来たと言えば分かると思います。」

「承りました。少々お待ちください。」

 足早に席を離れ、戻り次第、受付を別の人に任せイオリ達を案内した。

「お待たせしました。ギルマスのお部屋へ案内します。」

 男性についていくと3階まで階段で上った。

 3階には何個か扉があって男性はその中の赤い扉をノックした。

「お連れしました!」

 扉が開くと中にソフィアンヌと男性が待っていた。

「おはよう。早速、来てくれて良かったわ。
 この人はサブマスのブルック。
 私がいない時は頼りにすると良いわ。
 さぁ、入ってお座りなさい。」

 受付の男性に礼を言い。ブルックに会釈をした。

「イオリです。よろしくお願いします。」

 いつもの通り家族を紹介すると、ブルックは豪快に笑った。

「ワハハ!
 本当に新しいSランクがこんな若造とはな!?
 時々いるんだ。桁違いの奴が。」

 ハァーとソフィアンヌは溜息をつくとブルックの頭を殴りとソファーに座った。

「ごめんなさい。御行儀がなってないの。
 強い者をみれば今でもウズくって。
 何歳になっても、子供でしょう?」

「うるせー!!ババアの説教は面倒なんだよ。」

「あぁん!?」

 怖い顔で睨み合う2人を放ってイオリはソファーに座り子供達にも座らせた。
 ヒューゴだけはイオリの背後に立ち耳打ちした。

「本当にお前はこういう時、気にしないな・・・。
 普通だったらビビってるぞ?」

「そうですか?仲良さそうで良いじゃないですか?」

 イオリの言葉が耳に入ったのかギルマス・サブマスコンビは目くじらを立てて叫んだ。

「「仲良くねーよ(わよ)!!」」

「ほらー!」

 ゲラゲラとイオリが笑うと子供達もキャッキャと笑った。

「本当に馬鹿らしくなるわ・・・。
 イオリ、エルネの捕獲依頼は私の権限で完了と見なすわ。
 後で、受付に行きなさいな。
 2階の受付よ。Aランク以上はそっちを使うようになってるの。」

「ランクによって、階が分かれてるのは初めてです。
 意味があるんですか?」

「あぁ、ここは港町でしょう?
 上位ランクは此処を他国の依頼の出発地点としてるから集まりやすいのよ。」

「なるほど・・・。
 じゃあ、高ランクが集まる凄い街ですね。」

「そうもいかないの。
 高ランク冒険者ってのはプライドの塊が服を着てる連中ですからね。
 揉め事もしょっちゅう。
 アンタのような穏やかなのが珍しいのよ。」

 ソフィアンヌは苦笑すると話を続けた。

「アンタの依頼は完了だけどね。
 エルネが変な事を言ってたから一応伝えとくわね。

 イオリって名前を使ったのはフードをかぶった奴に指示されたんだって。
 ミケルセン伯爵のコインもその人物からもらっているし、アンティティラでの事件もその人物から依頼されたらしいわ。
 もっとも、その人物も裏に別の人物がいるみたいだけどね。

 イオリがSランク冒険者だったのは知らなかったらしいわ。」

「・・・・ふーん。
 その人が誰だかはわからないけど、裏にいるのはミズカルドのメンドー侯爵ですかね。」

「イオリ・・・メンドーじゃない。
 メドゥイ侯爵だ。」

 ヒューゴが言い直すとイオリは「それそれ」とニコニコした。
 
 ソフィアンヌは呆れたように笑った。

「アナタは・・・。
 メドゥイ侯爵・・・そうだろうと私たちも睨んでるの。
 でも、大きな証拠があるわけではないしわ。
 何にしても、イオリの名前を使いイオリの存在を利用しようとした人間がいる事は間違いないわ。
 注意しなさいな。」

「ありがとうございます。
 そうしましょう。俺はまだしも子供達に危害を加えられるのは本望じゃありませんから・・・。」

 ニコニコしていたイオリの目が光った事にソフィアンヌは気づき、相手が誰であろうと起こった狼を刺激している事に気づいた。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。