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初めての旅 〜ダグスク〜

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「出来た・・・。」
 
 残りの仕上げも自らやり遂げたダグスク侯爵・オーウェンは真っ赤な顔に汗をかいているのも気にせずに笑顔でイオリを見た。

 イオリも頷くと鑑定して、しっかりと塩である事を確認した。
 予想通り、栄養素やミネラルをたっぷり含んだ良質な塩が出来上がった。

「このままで商品にする事もできるでしょうが、商品とするにはこれを陽に当てながら残りの水分を飛ばし冷やす事も大切だと思います。
 しかし、今日はこれで良いでしょう。
 
 オーウェンさん。よく頑張りましたね。
 実際に食べてみましょう。」

 屋敷の料理人に頼み、野菜や焼いただけの肉に塩をふってもらった。

 実食を試みるオーウェンは自分で作った塩をマジマジと見つめると、野菜の一つと共に口にした。

「・・・。美味しい・・・。
 ただ、生野菜に塩をふっただけなのに。」

 ボー然とするオーウェンにイオリは笑いながら言った。

「それは、美味しい塩を自ら作ったというのもあるでしょうが、オーウェンの体から塩分が不足していたのでしょうね。」

「体から塩分??」

 オーウェンだけでなく周りに居た者は皆首を傾げた。

「汗ってしょっぱいでしょう?
 それは体にも塩分が含まれているって事です。
 汗を掻くっていうのは良い事で、体の中の血液の循環を良くしてくれくれます。
 しかし、今日みたいに汗を掻きすぎると、必要な塩分が体からぬけて熱中症といって頭が痛くなったり、めまいがしたりひどい時には死に至ります。

 だから、適度に水を飲んだり塩分をとったりしながら補います。

 逆に塩分をとりすぎると、喉が乾きすぎたり頭痛がしたり最悪、心臓や頭を病んだりします。

 あくまでも極端な話をしています。
 要は常識的範囲なら問題がないんです。」

 ペラペラと講釈をするイオリに唖然とする一同を代表してレイナードが聞いた。

「イオリさんの知識はどの様に得られたのですか?」

「あぁ、俺は祖父母に育てられたんです。
 その祖父母から、生きる知恵を仕込まれまして・・・。はは。」

 レイナードは感心した様に唸った。
 
「イオリのお爺さんとお婆さんは天才なんだよね。」

 嬉しそうなパティが飛び跳ねる様に言った。

「そう。俺の祖父母は天才なんです。
 俺は2人から教えられたものを伝えているにすぎないんですよ。」

「しかし、その知識を使いこなすのも能力です。」

 レイナードの言葉にオーウェンも頷いた。

「この塩に出会えたのもイオリさんのおかげです。
 当然、報酬も支払わせて貰います。この様な場合はどれほどお支払いすれば良いものでしょう?」

 オーウェンが悩む様に顎に手を持っていった。
 イオリはニッコリと笑うと

「それならば、この街にもグラトニー商会があると思うのですが?」

「えぇ、ございます。
 4代前から、この地に店を構えています。
 グラトニーが何か?」

「ポーレットにいた時、グラトニー商会のアーベルさんと懇意にさせて頂きましてお世話になっていたんです。
 今回の様なことをポーレットでもしてたんで、グラトニー商会さんなら相談に乗ってくれると思います。」

「それは有難い。早速、話をもっていきましょう。
 ところでイオリさんはどちらに滞在されますか?」

「そういえば、まだ決めてませんね。」

 イオリはヒューゴと顔を見合わせた。

「それなら、ご紹介させて下さい。
 本来は我が家に滞在して頂きたいところですが、落ち着かないでしょう。
 実は敷地外になりますが別宅がありまして、そちらでお過ごし下さい。
 
 海も見えますし、我が家にも近い。
 聞けばお料理もするご様子、そちらにはキッチンもあります。」

「おお、助かります。
 街での食事も楽しみの一つですが、自由に料理ができるのは嬉しいです。
 よろしくお願いします。」

 そうと決まればと、オーウェンはカールに支持をだし別宅の準備とやらを急がせた。

「今しばらく、ごゆっくりなさって下さい。
 現在、グラトニー商会へも使いをやっています。じきにいらっしゃるでしょう。」

 そんなわけで、もうしばらく子供達と海で出来た塩を楽しむ事にした。

「フライドポテト食べたいな・・・。」





 
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