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初めての旅 〜ダグスク〜

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 イオリ達がオーウェン達の部屋に行こうとすると執事のカールが手で来ないでと合図していた。
 次の瞬間、なんともダグスク最上位を前にしても不遜な話し方をする男の声が聞こえた。

「何故、こんな取り調べの様なものを受けねばならない!
 屋敷に押しかけて来たかと思えば今度は呼びつけるなど!!
 侯爵は余程、私に恥をかかせたいらしいな!」

《あれ?貴族って年齢順に偉いんだっけ?》
 
 ふと、男の態度にイオリは片眉を上げてヒューゴを見た。
 すると、ヒューゴは呆れたような顔で首を振った。

「昨日、街に来たイオリという人物の身元引受人が貴殿だというから尋ねている。
 イオリという名の人物はそこにいる者で間違いないのだな?」

「何を言うかと思えば・・・。
 この者は私の手の者だ。
 侯爵と言えど失礼な物言い、抗議する!!」

 張り切ってるなー。と思いながらも、同じイオリと名乗る人物に興味がある。
 イオリは身振り手振りでカールに合図をするとカールは頷き隣の部屋に案内してくれた。

「こちらのお部屋から中を見ることができます。
 初代が商談相手を見定める時に作った物ですが、現在も利用されます。」

 壁にかかった絵を取ると、小さな穴が2つあった。
 向こうにはダグスク名物のお面がかかっているらしい。

 イオリが穴を覗くと、でっぷりと太った男性が杖を中央に足を開き偉そうにオーウェルと対峙していた。
 その後ろには何人かの男がいて一人一人鑑定して行った。

 すると、1人の男にイオリの目が止まった。
 じっと見つめるや、体を震わせて笑い堪える事が出来なかった。

「ムフフフフフ。」

「気持ち悪い笑い方をするな。どうした?知ってるやつか?」

「いや、これほど笑える事はないですよ。エルネがいるんです。
 やはり、イオリの名前を使ってるであろう人物がエルネなんです。」

 !!!!

 驚いたヒューゴとカールも堪えられないのか笑い始めた。

「お前の読み通りだったな・・・ププププ。」

「主人にどう伝えましょう・・・クククッ。」

 3人は落ち着くように大きく深呼吸するが笑うことはやめられなかったのであった。





「一体全体、どんな証拠があって言ってるんだ?
 大体、貴殿は街における信頼も薄い。
 私が聞いたところによると先日は負債を背負ったオービエ子爵を追い払ったとか。
 私が手を貸して差し上げたがね。
 他貴族を助けず何が領主でしょうね。  
 若いとはいえ領主を名乗っているのならしっかりなさった方がいい。
 亡くなったお父上もさぞ、ご心配でしょうな。」

「話をすり替えては困る。
 オービエ子爵に関しては、個人的散財に市民の血税を使うわけがないでしょう。
 貴族を守る?
 領主・貴族が守るのは市民であって、己の事しか考えない輩ではない!」

 嫌味をいうミケルセン伯爵を相手にオーウェンも負けじと応戦をする。
 しかし、ミケルセン伯爵は相手にならないと嫌な笑い。
 後ろに立つ男共も、オーウェンを馬鹿にしたように笑っている。

 そんな時、何気なく部屋に入ったカールがソファーの後ろに立つレイナードに小さい紙を渡した。
 それを見たレイナードは片眉も動かさずにオーウェンに見せた。

「なんだ?」

 不機嫌なミケルセン伯爵が声をかければオーウェンは笑い出し、カールが差し出した水が入った壺に紙を捨てた。

「いえ、こちらの話です。
 時に、そこの人物がイオリという者ですか?初めて見る顔なので。」

「そうだが?」

「こちらに来るまで何をしていたんでしょう?」

「貴殿に関係があるのか?
 ふっ、人様の部下を疑っておいて・・・まぁ、いい。教えてやれ」

 すると、男は前に出ると恭しく頭を下げるとニッコリ笑った。

「はい。冒険者をしてました。
 旦那様に声をかけていただき、ダグスクへ来た次第です。」

「なるほど・・・。と言ってますが、ソフィア?」

 別の扉からソフィアンヌが出てくるとミケルセン伯爵は嫌らしい目つきと笑顔を向けた。

「なんだ、ソフィー!来てたのか?
 どうだ?そろそろ、私の元へ来る気になったか?
 そんな仏頂面には飽きただろう?」

 ソフィアンヌは当てつけるようにレイナードに微笑み用意された椅子に座った。

「仏頂面は貴方にだけです。
 侯爵様、確かにイオリという名の冒険者はおります。
 その者がダグスクへ入ったとも記録がございます。
 現在はギルドへ顔を出しておりませんので、どのような容姿かは分かりかねます。」

 勝ち誇ったようにミケルセン伯爵と男はニヤリと笑った。
 そんな中、オーウェンがニッコリした。

「我が家にもイオリなる人物が訪ねて来ていてね。
 冒険者をされているんだ。紹介しましょう。お呼びしなさい。」

 静かに頭を下げて部屋を出ていくカールを見てミケルセン伯爵は眉を顰めた。

「何を言っているんだ。
 イオリなど他にいるはずがないだろう。
 だとしたら、そっちが偽物だ。」

 伯爵の言葉に男達が笑い出した。


「お連れしました。」

 カールによって連れてこられた男・・・いや青年は黒づくめの防具を着ていた。
 異様な雰囲気の青年が頭を一度下げ入って来て挨拶をした。

「はじめまして、ミケルセン伯爵。
 俺がSランクの称号を持った冒険者イオリと申します。」

 男達の笑顔が固まった瞬間だった。
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