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初めての旅 〜ダグスク〜

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 庭に飛び出たイオリは目一杯に潮の匂いを嗅ぎ、楽しそうに走り回る子供達の元に行った。

「イオリ!!」

 気づいたナギが走りながら飛びついてきた。

「おっと!!楽しいかい?ナギ。」

「うん。海の向こうにも大陸があるんだって!!
 船で違う国に行くんだって!!」

 新しい知識を得て嬉しそうなナギはいつもに増してニコニコと笑った。

「お世話になってます。」

 微笑むカールやメイドさん達に頭を下げると、みんなニコニコと微笑んだ。

「お話は終わりましたか?」

「あー。いや、まだですね。
 恐らく客人が来ます。
 えっと・・・ミケルセンさんって人です。」

「ミケルセン・・・様?それは大変です!
 私は失礼して主人にお伺いたてませんと!!」

 カールと1人のメイドが足早に屋敷に入って行った。

「イオリ様も紅茶はいかがですか?」

 1人のメイドがポットを片手に微笑んでいた。

「ありがとうございます。中でいただいたので大丈夫です。」

 イオリも微笑むとメイドは少し頬を赤くしたような気がした。

「イオリ!!見て見て!
 すごく綺麗なの!」
 
 ナギを抱き上げるイオリの裾をパティが掴み引っ張った。
 見てみるとカラフルな街並みが青い海と相まって、以前写真で見たヨーロッパのようだった。

「凄いね。綺麗だね。
 海の水ってね。しょっぱいんだ。」

「しょっぱいって塩みたいに?」

 首を傾げる子供達を代表してスコルが聞いた。

「そう。塩が含まれてるんだ。だから風も塩がついててね。建物は傷んじゃうだよ。
 だから、あーやって綺麗な派手な色で傷みを隠してるんじゃないかな。」

「誰がお塩を海に撒いたの??」

 心底不思議そうなパティは納得いかない顔をした。

「ふふふ・・・何故でしょう?
 俺も詳しいことは分からないけど誰かが塩を巻いたわけではないと思うよ。」

「ふーん。海って変なの!面白いね。
 パティは海好きだよ。ニナは?」

 ニナもニッコリと頷いた。そんなニナをナギとは反対の腕で抱き上げるとイオリは言った。

「どうだい?ニナ。世界は広いだろ?
 見る物は沢山あるね・・・。
 俺も知らない事だらけだよ。
 ニナもこれかは色んな事を知っていくんだね。」

 ニナはイオリの顔を見ていたが、海を見渡しジッと見つめるとコクンっと頷いた。

 しばらく遊んでいると、うたた寝を始めたニナを見てメイドの1人がイオリに部屋に案内すると言ってくれた。
 子供達と屋敷に入り部屋に案内されると部屋からも海が見える。
 ベットにニナを寝かせるとパティも一緒に布団に入って目を瞑った。

「楽しくってハシャギ過ぎたかな?2人は大丈夫?」

 スコルとナギは飽きずに海を見ている。

「「うん!」」

 一緒になって見ていたいが、そうもいかないらしい。
 ヒューゴが部屋の入り口で顔を出した。

「どうやら、外が騒がしい。
 客人が来たらしいぞ。」

「さーて、どんな展開になると思います?」

 イオリはニヤリと笑った。

「さぁな。お前の予想通りなら面白い事になりそうだ。」

 同じくニヤニヤ笑うヒューゴは眠るニナの頭を撫でた。

「一体!どーゆう事か説明してもらおうか!!」

 せっかく眠っている我が家の姫達を起こすわけにはいかないとイオリは部屋を出て行った。
 
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