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初めての旅 〜アンティティラ〜

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 部屋に戻り、それぞれが腰バックの中を整理するとヒューゴの側で手伝いをしているニナの元にパティがトコトコと行くと自分の腰バックからクッキーを差し出した。

「美味しいよ。イオリのお菓子。」

「「あぁー。ずるーい!」」

 子供達なりにニナにお菓子をあげるのを我慢していたらしい。
 食い意地が張っているパティが我慢できずに自分のクッキーを分けているのにはイオリも苦笑して見ているしかない。

 スコルとナギも我のもと腰バックからオヤツを出してさしだした。

「お菓子?何だ?」

 ニナと共に首を傾げるヒューゴはスコルからクッキーを受け取った。
 匂いを嗅ぐと甘い匂いがする。

 半分に折るとニナに渡した。
 ニナもヒューゴを真似てクンクンと嗅ぐと徐に口に入れた。

 もぐもぐゴックンしたニナはニコッと笑うともう一度口に入れた。
 ヒューゴもニナの笑顔に誘われる様に口にすると初めての味にゴホゴホと咳き込んだ。

「な・・・なんだこれ?
 砂糖か?初めて食べた・・・。」

「イオリのお菓子美味しいでしょ!」

 パティの満面の笑みにヒューゴは笑顔で頷いた。

「美味い!これ、イオリが作ったのか?」

 先ほどから自分のベットの上で買ってきた布を針と糸で裁縫しているイオリに顔を向けるとニッコリ頷いた。

「ナギ。飴は喉に詰まっちゃうかもしれないから今日はやめておこう。
 ニナにはボーロが良いかもしれない。
 スコル。お茶いれるかい?」

 部屋のテーブルでコンロでお湯を沸かし、慣れた手付きでスコルはカモミールティーを淹れていく。

「砂糖は現在、ポーレットで量産を狙っていまして。
 お菓子も砂糖を流行らす一環なんです。
 内緒ですよ。一大事業なんですから。」

「分かった・・・・。
 お前らはいつも食べてるって事か?」

「「「うん。」」」

「まぁ、ご飯優先ですけどね。
 馬車での旅の合間に食べると疲れが飛ぶんですよ。」

 スコルはカップにカモミールティーに入れヒューゴに渡した。
 ニナには熱いだろうとゼンが覚ましてくれた。

「コレもポーレットで?」

 カモミールティーをゆっくり飲むとヒューゴは不思議そうに見つめていた。

 ニナは気に入ったのかコクコクと飲んでいる。

「カモミールっていうハーブですね。まぁ、草です。体に良いんですよ。
 紅茶より安価で飲み心地も優しいでしょ?」

 フフフと笑うイオリは針仕事に戻っていった。

「今日はコレくらいにしよう。」

 スコルの言葉にパティとナギもお菓子を腰バックに入れて口を拭いた。
 ゼンとアウラは物足りない顔をするが最後にナギから飴を貰って満足していた。

 ヒューゴは一連の流れを見て、子供達を甘やかすだけでなく、自制も教えているイオリの教育に感銘を受けた。

 ニナはまだ手に持っているボーロと言われる丸いお菓子を大事そうに紙に包みヒューゴに渡してきた。

「後で食べるから持っててくれって。
 食べないでねだって。」

 ニナの言葉を通訳するナギの言葉に苦笑するとヒューゴは腰バックに入れてた。

「はいはい。コレで良いか?」

 ニナは納得したのか頷くとパティにより食べカスがついた口を拭いて貰っていた。

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