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初めての旅 〜アンティティラ〜

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 集落から戻るとデュークと共に報告を終え報酬を得たイオリ達は部屋に戻り休みをとった。
 子供達が仮眠を取る中、イオリはギルマスの部屋での会話を思い出していた。



「それじゃ、まだ裏には誰かいるって事か?女が素直に話すと良いがな・・・。
 警邏へ連行される時、随分暴れたって?」

 ギルマス・ヨルマは顔を顰めていた。

「えぇ、自分の従魔であるグリフィンが連れて行かれるのを必死に追い縋っていました。」

「あの・・・。グリフィンはどうなるんですか?」

 デュークの報告にイオリが口を挟んだ事に驚きながらも2人は呻いた。

「うーん。無理やり従魔契約をさせられていたなら、生息地帯に離したりもするがグリフィンは貴重な素材だからな・・・。」

「そうですね。それに、今回は一般人を傷つけてしまっていますし主人に懐いてもいますしね・・・。」

「そうですか・・・。」

 仕方がないにしても後味の悪い話である事には変わりない。
 その後は集落への人材派遣や、木酢液作りを手伝ってもらう案など話をした。

 イオリ達が部屋を出ようとした所でヨルマがイオリに話しかけた。

「お前さんが出会ってきた冒険者達が良い奴らで良かったよ。
 中には冒険者で培った能力を犯罪に使い、身を落とす輩もいる。
 忘れてくれるな。
 依頼とは単なる仕事ではなく、その先には困っている人間がいるんだという事を。」

 イオリは深く頷くと部屋を後にした。





「依頼とは単なる仕事ではなく、困っている人がいる・・・。」

 生活していく為の手段として冒険者の生き方を選んだがイオリは依頼ボードに貼られた紙の事を思い出した。
 毎日貼られている紙の分だけ困った人がいる。
 初めて言われた事に思いを馳せながらイオリも瞳を閉じた。




__________

「ココはどうなるんです?!あの子は悪くないんです。私の所為で!」

「そうですよ。貴方の所為です。
 契約した従魔と主人は一心一体。あのグリフィンも同じ様に裁かれるでしょう。
 貴方を害した我々を襲うでしょうから。」

「ヴぅぅぅぅぅ・・・。ココ・・・ごめんね。ごめんね。」

 昼間とは違い笑みなど浮かべず、デュークは細い目を開いて女への尋問を始めた。

「貴方に指示を出した、男の名は?」

「・・・エルネ。冒険者のエルネ。」

「彼は今どこに?」

「分からない。アンティティラで合流のはずだった。
 彼にも仕事があったから・・・。」

「どんな?」

「詳しくは知らない。何かを山に放つって言ってた。」

「・・・。もしかしてアースワームですか?」

「それは知らない。煙が纏っていた玉に話しかけてたのを見ただけ。」

「通信用の魔道具でしょうか?・・・他には何か?」

 首を横に振り、疲れた様子の女に溜息を吐きデュークは部屋を出ようとした。

「・・・って言ってたわ。」

「何です?」

「《アンタのとこの名産だろうがロードクロサイトなんていらねーよ。金貨でくれ》
 ・・・って言ってたわ。」

「!!! 
 煙の相手に?本当にロードクロサイトと?」

 コクンと頷く女にデュークは満足して部屋を出て行った。
 直ぐにギルマスの部屋に入りヨルマに伝えた。

「女の後ろにいるのはエルネという冒険者。
 その男の後ろにいるのはです!」

「はぁ!?何でそうなる?」

「詳しい事は後ほど、女によれは男は依頼してきた人物にこう言ったそうです。
 《アンタのとこの名産だろうがなんていらねーよ。金貨でくれ。》
 ロードクロサイトです!ロードクロサイト!
 これはミズカルドの一部でしか採れない名産の宝石です!
 調べれば相手の貴族とやらも分かるはずです。」

「ゔー。もう、ギルドの話じゃないぞ?至急、内容をまとめてくれ領主に会って来る。」

「はいはい。任せて下さい。」

「男・・・エルネだったか?そいつの手配もな。」

「お任せを。」

 何やら大変な事になってきている事も知らずにイオリはゼンの寝返りにより1人苦しみの中、眠っていた。
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