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初めての旅 〜アンティティラ〜

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 集落の広い場所を借りて炊き出しを始めたイオリにデュークは驚きながらも住人達が喜んでいるのを見て微笑んだ。

「サブマスも食べよう。」

 パティとナギに手を取られ皿によそっているスコルの元に行った。

「イオリさんは?」

「怪我した人達と家族の人に持って行ったよ。サブマスもいる?
 イオリ特製ブイヨンを使ったオジヤ。」

「ブイヨン?オジヤ?何ですか?」

 ニヤニヤするスコルから器を受け取るとデュークは匂いを嗅いだ。
 香ばしい匂いが食欲をそそる。
 
 美味しそうに食べるパティとナギに触発され口にすると優しい味と上に乗せられた味の濃い肉がよく合っていた。

「すごく美味しいですね。」

「そうでしょ?
 オークの骨と余り野菜を煮込んだスープに米を入れてるんだ。
 上にはオークの肉のニンニク焼きがのってるの。」

 胸を張って話すスコルは食べ終わった女性に火の番を変わってもらい自分もおじやを食べ始めた。

「イオリさんが作られたんですか?」

「うん!スコルも手伝ってるよ。
 凄いでしょ。イオリのご飯美味しいんだー。」

 パティは自分が褒められてる様に嬉しそうに足をバタバタさせた。

「米を食べるあたりが驚きましたが、麦粥に似ておながに優しいですね。
 これなら怪我した人も少しは食べてくれるでしょう。」

 デュークは長の家の方を見て微笑み再び食事に戻った。







「冷ましましたけど、ゆっくり食べてくださいね。」

 長の家では大怪我した2人と家族にイオリが食事を振る舞っていた。
 骨折が治った人達は外で皆んなと喜びを味わっていた。

「アンタが治してくれたって聞いたよ。感謝する。」

 ガタイのいい男性がベットの上で小さな器に入ったオジヤを食べていた。

「間に合って良かったです。傷は全て治ってます。
 ガズさんとオルドさんは流れた血を戻さないといけません。
 血を作るには肉を食べるのがいいんですが、今日は体が疲れてるので優しい物をお腹に入れましょう。」

 隣同士に腰掛けた2人が素直に頷いて食べるのを続けた。

「本当に治療師様かお医者様ではないのですか?」

 ガズの妻がイオリに声をかけた。

「ははは。冒険者としての心得ですかね。」

 イオリがにこやかにしていると、ガズがポツリと言った。

「なー。アンタ。俺達はあの治療師に騙されたのか?」

 妻やオルドも顔を顰めた。

「俺達が怪我をしたせいで集落の連中は金を払っちまった・・・。」

 3人の落ち込み様を見てイオリは答えた。

「怪しい事は確かですが、確証がありません。
 明日もグリフォンが襲ってきた時に分かるでしょう。
 任せて下さい。仕留めます。」

「でも・・・。お金は戻ってこないわ。」

 今にも泣きそうな妻に撃が飛んだ。

「顔を上げろ!誰が傷つこうが、ワシらは金を出しただろう。
 金などまた貯めればいい。お前達には子供がいるんだぞ!もっと、胸を張って生きろ!」

 イオリには優しく見えた長が震える様に怒っていた。

「命が一番だ!食うものは何とでもなる!」

「すまない。長。
 傷が癒えたら、前以上に働くよ。」

 ガズは苦笑しながら頭を掻いた。
 良い集落だな・・・。イオリは席を立ち長の家を出た。

「イオリさん。ごちそうさまでした。驚きです。
 料理が上手なんですね。」

 デュークの労いにニッコリしたイオリだったが思いついた様に言った。

「木酢液の話ですけど、この集落の人たちに手を貸してもらいませんか?
 治癒師に払った額だってココの人達には大変な額だったはずなんです。
 怪我した人たちも心を痛めています。」

「そうですね・・・。
 扱いが危険なら心配ですが、アンティティラの職人なら安全な製法を考えてくれるでしょう。
 帰ったらギルマスとグラトニー商会さんに聞いてみましょう。」

 イオリの提案を聞いてくれたデュークにホッとしてイオリも夕飯を済ませ、明日の早朝に向けて準備を始めた。
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