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初めての旅 〜アンティティラ〜

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 両手に屋台で買った食べ物を持ちギルドの扉を開くと、中は静かだった。

 むしろシーンと聞こえるのではなかろうか程静かな食堂エリアを進み解体場に行くと、多くの人が解体場を静かに覗き込んでいた。
  
 イオリ達は顔を見合わせ首を傾げると近くにいた人に声をかけた。

「あのー。これ何して・・・」

 るんですか?を言わせて貰えず、見物人が口元に指を持っていった。

「「「「「シーーーーー!!」」」」」

 困惑しているイオリに気づいたマスターがイオリ達を通してくれた。
 そこには真剣な顔をしたパティが鳥類魔獣である“シュトラス”の解体の最終局面を迎えていた。
 周りには、オインをはじめ解体場の職人が見守り、それをギルドにいた人達が固唾を飲んでいた。

 イオリ達は優しく微笑むと最後まで静かに見守る事にした。

「ふー。出来た!!!見て!」

 パティはオインを見上げるると、オインは満足そうに頷いた。

「よし。完璧だ。よくやったな。」

 その言葉に見守っていた面々から歓声が上がった。
 沢山の人が見守っていた事に気づき、驚いて惑っていたパティにスコルが駆け寄った。

「上手に出来たね。パティ!」

 スコルに続きナギも駆け寄り褒めるとパティはやっと笑顔になった。

「オインさん。皆さんお世話になりました。」

 イオリが言うとオイン達はニカっと笑った。

「嬢ちゃんは飲み込みが早い。教えてる方も楽だったよ。
 お前さんも解体するって言ってたぞ。」

「はい。俺の場合、本職ではないんで褒められたもんじゃないですけどね。
 今回の旅は子供達の目標を叶える旅でもあったんで助かりました。」

 パティはイオリに褒めてもらいたくてソワソワと体を動かした。

「どれ。見せてくれ。・・・・。苦手だった関節の部分が上手く剥がせてるじゃないか。
 凄いな。パティ。」

 嬉しそうに微笑むパティにイオリは昼食を取ろうと誘い。
 この日のパティによる解体訓練は終わりを迎えた。

「いつでも来いよ!本職になるには場数だからな。」

 オインの言葉を背にパティはニッコリ頷いた。

 部屋に帰るとテントを張り、パティがシャワーを浴びている間にイオリ達は昼食の準備をした。

「会いに行った人どうだったの?」

 すっかり着替えたパティがスコル達に聞くとスコルは首を横に振った。

「スコル達は今日会えなかったんだ。イオリとゼンちゃんが会ったよ。
 後は返事待ちだって。」

「ふーん。」

「でも・・・。女の子は楽しそうだったよ。」

 ナギの言葉にイオリはハッとした。

「そうか!ナギはニナの声が聞こえるんだね?」

「うーん。小さく笑ってる声が聞こえただけだよ。」

「???なーに?」

 イオリはパティに今日会ったコリンズ兄妹の事を教えた。
 初めは驚き悲しむこそしたが、心的要因で声が出ないことを知ると笑顔になった。

「じゃあ。楽しい事してたらいつか話せるかもしれないね。」
「確かにね。ニナが楽しいって思うことをやろう。」
「うん!ボク、本を読んであげる!」

 逞しい子供達にイオリとゼンは顔を見合わせ安心するのだった。

「さぁ、食べちゃおう!」

「「「はーい」」」
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