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初めての旅 〜アンティティラ〜
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トンットンットンッ。
スティールが奥まった部屋の扉をノックした。
「ヒューゴ。ニナ。お客様です。
開けてもいいですか?」
少し間があいてから、扉が開き男性が顔を出した。
「ああ。」
プラチナブロンドの長い髪が背中まで伸びていた。
スティールに対し敵意はなくても警戒はしているようだった。
「さぁ、お客様どうぞ。」
ワンルームでベットしかない部屋が2人の部屋だった。
簡素ではあるが清潔に保たれていた。
足を引きずるヒューゴはベットに腰掛けているニナの隣に座り肩を抱いた。
「こちらがヒューゴ・コリンズ、ニナ・コリンズです。
そして、こちらが冒険者をしてらっしゃるイオリ様。そして従魔様です。
お2人に、ご興味を持たれ話を聞きたいと言われたのでお連れしました。」
スティールはそこまで言うと傍に避けイオリに場所を譲った。
「駆け出しの冒険者か知らないが、金で仲間を買うなんざ田舎に帰ってやり直せ。」
ヒューゴは早々に威嚇をしていた。
イオリはその言葉を無視してニナの前に跪きニッコリ笑い腰バックからグローブを出した。
「はじめまして、ニナ。
綺麗にするのが得意って聞いたよ。
これは、俺が仕事で使ってるグローブなんだ。
綺麗にして見せてくれないかい?」
ニナは戸惑うように、ヒューゴとスティールに顔を向けておずおずとイオリのグローブに手を当てて魔法を使った。
「あはっ!凄い!本当に綺麗になった。
ありがとう。」
イオリはニッコリと礼を言った。
ニナは驚いたように薄茶色い目を見開いた。
そんな、ニナにゼンはスンスンと顔を近づけペロっと頬を舐めた。
優しく微笑むニナにヒューゴは驚きながらも警戒を解かずにイオリに厳しい目を向けた。
「俺の所には双子の獣人の子供がいてね。
男の子はスコル。優しくて頭が良いんだ。今は料理に興味を持っていて練習中。
女の子はパティ。天真爛漫で食いしん坊だよ。何故か魔獣の解体に興味を持っちゃってね。
今もギルドの解体場で練習してる。
もう1人ナギっていうエルフの子もいるよ。
戦う事には向いてなくても本を読んだり勉強したりするのが好きで、植物にも優しいよ。
でも、追いかけっこは双子にも負けないんだ。
あとは、俺の従魔のゼンとアウラとソルがいる。
これが俺の家族だよ。
でもね、みんな掃除が苦手なんだ。今は手分けしてみんなで頑張ってる。
ニナが手伝ってくれると助かるよ。」
イオリはそう言うとニナの頭を撫でた。
今度は立ち上がりヒューゴに向き直った。
「はじめまして、ヒューゴさん。
冒険者をしているイオリです。」
ヒューゴは差し出されたイオリの手をマジマジと見て小指にギルマスの指輪があるのに驚いていた。
「お前・・・。」
ヒューゴの疑問には答えずイオリはスティールに勧められた椅子に座り話を続けた。
「ヒューゴさんはシールドのスキルをお持ちだと聞いています。
今も鍛錬を続けているとか?」
「ああ。試すかい?」
ヒューゴはイオリを挑発するように聞いてきた。
「まずは話を聞いてもらってからにします。」
挑発に乗ってこないイオリを鼻で笑うとヒューゴは頷いた。
「まぁ、さっき言ったメンバーが俺のパーティーであり家族なんですが、問題が1つありましてね。
双子は剣使いで最前線に行きます。
ご想像より強いですよ。
大人でも戸惑う魔獣にも突っ込んで行くんで。
で、俺です。
基本的に俺は遠距離攻撃が得意なので万が一の時、側に居てやれない時も出てくると思うんです。
それを・・・。」
「俺に守れって?」
「はい。俺の家族を守ってほしい。」
ヒューゴは暫くイオリを値踏みする様に見つめた。
「俺は足が悪いぞ?どれ位やるかは分からないだろ?
金額だって高い。」
そう言うヒューゴにイオリはニッコリ立ち上がり扉に向かった。
「俺達が部屋に入った時、最初にニナを庇った。
俺にはそれで十分です。
俺の事はスティールさんが知ってると思うんで聞いてください。
最初から良い返事が来るとは思っていませんよ。
まだ、この街にいます。考えといてください。」
それだけ言ってイオリはゼンを連れて部屋を出て行った。
「旦那。アイツは一体?」
壁に寄り掛かったスティールはヒューゴの反応を面白がりながら答えた。
「ポーレットが拠点の最近Sランクに昇格した新星です。
Sランクまで最短だそうですよ?
ここに来るまでに誰も成し遂げてないダンジョンを一つ攻略してきました。
話を伺うに、ご本人はポーレット公爵の信任も厚い傑物とか。」
スティールの言葉にヒューゴは開いた口が閉まらなくなった。
「因みに、言われた通りヒューゴ・コリンズをお求めか?
と聞いたら速攻で否定されコリンズ兄妹をと言われました。
私としてはこれ以上ない主人かと思いますが、判断は貴方にお任せしましょう。
では、私はお客様をお送りしなくてはいけませんので。」
スティールが部屋を出るまでヒューゴは声を出さなかった。
「ニナ。あいつはどうだった?」
すると声のない妹が笑顔で頷いた。
ヒューゴはそれだけで良かった。
「そうか・・・。」
スティールが奥まった部屋の扉をノックした。
「ヒューゴ。ニナ。お客様です。
開けてもいいですか?」
少し間があいてから、扉が開き男性が顔を出した。
「ああ。」
プラチナブロンドの長い髪が背中まで伸びていた。
スティールに対し敵意はなくても警戒はしているようだった。
「さぁ、お客様どうぞ。」
ワンルームでベットしかない部屋が2人の部屋だった。
簡素ではあるが清潔に保たれていた。
足を引きずるヒューゴはベットに腰掛けているニナの隣に座り肩を抱いた。
「こちらがヒューゴ・コリンズ、ニナ・コリンズです。
そして、こちらが冒険者をしてらっしゃるイオリ様。そして従魔様です。
お2人に、ご興味を持たれ話を聞きたいと言われたのでお連れしました。」
スティールはそこまで言うと傍に避けイオリに場所を譲った。
「駆け出しの冒険者か知らないが、金で仲間を買うなんざ田舎に帰ってやり直せ。」
ヒューゴは早々に威嚇をしていた。
イオリはその言葉を無視してニナの前に跪きニッコリ笑い腰バックからグローブを出した。
「はじめまして、ニナ。
綺麗にするのが得意って聞いたよ。
これは、俺が仕事で使ってるグローブなんだ。
綺麗にして見せてくれないかい?」
ニナは戸惑うように、ヒューゴとスティールに顔を向けておずおずとイオリのグローブに手を当てて魔法を使った。
「あはっ!凄い!本当に綺麗になった。
ありがとう。」
イオリはニッコリと礼を言った。
ニナは驚いたように薄茶色い目を見開いた。
そんな、ニナにゼンはスンスンと顔を近づけペロっと頬を舐めた。
優しく微笑むニナにヒューゴは驚きながらも警戒を解かずにイオリに厳しい目を向けた。
「俺の所には双子の獣人の子供がいてね。
男の子はスコル。優しくて頭が良いんだ。今は料理に興味を持っていて練習中。
女の子はパティ。天真爛漫で食いしん坊だよ。何故か魔獣の解体に興味を持っちゃってね。
今もギルドの解体場で練習してる。
もう1人ナギっていうエルフの子もいるよ。
戦う事には向いてなくても本を読んだり勉強したりするのが好きで、植物にも優しいよ。
でも、追いかけっこは双子にも負けないんだ。
あとは、俺の従魔のゼンとアウラとソルがいる。
これが俺の家族だよ。
でもね、みんな掃除が苦手なんだ。今は手分けしてみんなで頑張ってる。
ニナが手伝ってくれると助かるよ。」
イオリはそう言うとニナの頭を撫でた。
今度は立ち上がりヒューゴに向き直った。
「はじめまして、ヒューゴさん。
冒険者をしているイオリです。」
ヒューゴは差し出されたイオリの手をマジマジと見て小指にギルマスの指輪があるのに驚いていた。
「お前・・・。」
ヒューゴの疑問には答えずイオリはスティールに勧められた椅子に座り話を続けた。
「ヒューゴさんはシールドのスキルをお持ちだと聞いています。
今も鍛錬を続けているとか?」
「ああ。試すかい?」
ヒューゴはイオリを挑発するように聞いてきた。
「まずは話を聞いてもらってからにします。」
挑発に乗ってこないイオリを鼻で笑うとヒューゴは頷いた。
「まぁ、さっき言ったメンバーが俺のパーティーであり家族なんですが、問題が1つありましてね。
双子は剣使いで最前線に行きます。
ご想像より強いですよ。
大人でも戸惑う魔獣にも突っ込んで行くんで。
で、俺です。
基本的に俺は遠距離攻撃が得意なので万が一の時、側に居てやれない時も出てくると思うんです。
それを・・・。」
「俺に守れって?」
「はい。俺の家族を守ってほしい。」
ヒューゴは暫くイオリを値踏みする様に見つめた。
「俺は足が悪いぞ?どれ位やるかは分からないだろ?
金額だって高い。」
そう言うヒューゴにイオリはニッコリ立ち上がり扉に向かった。
「俺達が部屋に入った時、最初にニナを庇った。
俺にはそれで十分です。
俺の事はスティールさんが知ってると思うんで聞いてください。
最初から良い返事が来るとは思っていませんよ。
まだ、この街にいます。考えといてください。」
それだけ言ってイオリはゼンを連れて部屋を出て行った。
「旦那。アイツは一体?」
壁に寄り掛かったスティールはヒューゴの反応を面白がりながら答えた。
「ポーレットが拠点の最近Sランクに昇格した新星です。
Sランクまで最短だそうですよ?
ここに来るまでに誰も成し遂げてないダンジョンを一つ攻略してきました。
話を伺うに、ご本人はポーレット公爵の信任も厚い傑物とか。」
スティールの言葉にヒューゴは開いた口が閉まらなくなった。
「因みに、言われた通りヒューゴ・コリンズをお求めか?
と聞いたら速攻で否定されコリンズ兄妹をと言われました。
私としてはこれ以上ない主人かと思いますが、判断は貴方にお任せしましょう。
では、私はお客様をお送りしなくてはいけませんので。」
スティールが部屋を出るまでヒューゴは声を出さなかった。
「ニナ。あいつはどうだった?」
すると声のない妹が笑顔で頷いた。
ヒューゴはそれだけで良かった。
「そうか・・・。」
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