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初めての旅 〜アンティティラ〜

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「・・・つ・・・7つ・・・8つ・・・9つ!!」

 ゴーン!ゴーン!と鐘が9つ鳴った。
 数えていた子供達は大はしゃぎだ。

「何か予定があるんですか?」
 
 子供達の反応にデュークは笑いながら首を傾げた。
 
「えぇ、約束がありまして鐘が9つ鳴ったらというお話だったんです。
 なので行ってきます。
 オインさん。パティをよろしくお願いします。」

 パティは元気よく手を振ると笑顔で解体場に入っていった。

「あんなに可愛らしいのに、何故解体なんか好きなんです?」

 スプラッタ少女を悲しむデュークにスコルが胸を張って答えた。

「パティが解体してボクが料理をするって目標があるんだ。
 パティが頑張ってるからボクも頑張る!」

「普通、逆じゃありません?」

 スコルの話にデュークはイオリに問いかけた。

「まぁ、好きな事をしなさいって教えてるんで我が家は。
 双子が選んだものに何も言いませんよ。スコルもよくやってるよ。」

 イオリに褒められ喜ぶスコルはナギの手を取ってギルドの扉を開いた。

「行ってらっしゃいませ。」

 デュークの声に見送られイオリ達は一先ず、グラトニー商会へ向かった。





「あぁ、来たね。おはよう。お姫さんはどうしたね?」

 アンナは今日も堂々と階段を降りて腰に手を当てた。

「パティはギルドで魔獣の解体の練習!」

 スコルがにこやかに言うとアンナも驚いた顔でイオリを見た。

「俺がやってるのを見て興味持っちゃって。」

 頬を掻きながら顔を赤くするイオリにアンナは大笑いした。

「ハハハハハ!そうかい!
 女だって解体できるさ。エルフの女供も見事に解体するよ。
 今度、会ったら聞いたらいい。男と女の身体の使い方は違うからね。
 勉強になるだろう。」

「それはいい話を聞きました。そうします。
 まだ小さい身体なんで心配してたんです。」

 アンナはエルフと聞いて興味を持ったナギの頭を撫でた。

「アンタの仲間は沢山いるよ。戦えない連中だって逞しく生きてるさ。
 私はアンタみたいに戦いに向いてなくても高ランク冒険者をしてる知り合いもいる。
 要は自分の力を信じて使い方を覚える事だね。」

 ナギは嬉しそうに頷いてスコルとイオリを見上げた。

「さぁ!時間が惜しい。早速、行こうか。
 同じ4番ロードだ。近くだよ。」

 アンナと共に出てきたのは屈強な男2人だった。
 用心棒だと紹介された男たちはイオリ達に挨拶をするとアンナを囲むようについてきた。
 道を歩けば挨拶をされるアンナは、やはりグラトニーなのだと知った。

 案内された奴隷商の店はシンプルな造りで看板すら掛かっていなかった。

「まぁ、奴隷で暴利に儲けを出す奴は嫌われるってね。」

 イオリの顔付きでわかったのだろう。
 アンナは木の大きな扉を開けると声をかけた。

「スティールさん。居るかい?」

 アンナの声に反応して出てきたのは白髪混じりの紳士だった。

「いらっしゃいませ。グラトニーの支部長様。人手がご入用で?」

 自身にピッタリのスーツを着こなし首元には紐状のネクタイをしていた男性はイオリを見て「おやっ?」と言う顔をした。

「この前、伝えたお客さんだよ。
 奴隷をご消耗でね。例の彼と会わせてもらえるかい?」

 イオリも腰バックからアーベル・グラトニーからの紹介状を差し出した。
 紳士は紹介状を受け取り、中を確認するとニッコリ微笑み頷いた。

「奴隷商“ホープ”へようこそ、お客様。私は店主のスティールと申します。
 お客様のお求めの人材はヒューゴ・コリンズですね?」

「いいえ。」

 紳士に尋ねられたイオリは首を横に振った。首を捻ったのはスティールだけではない。
 アンナもイオリの言葉に府に落ちない顔をした。

「俺達が求めているのはヒューゴ・コリンズと・コリンズの2人です。」

 そう言うとスティールは満面な笑みを浮かべて扉を開けた。

「お客様には自信を持ってご紹介させて頂きます。
 どうぞ、こちらへ。」

 
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