上 下
79 / 472
初めての旅 〜天空のダンジョン〜

152

しおりを挟む
 テントに入ると子供達は早速楽な姿に着替えていた。

「この腕輪が光るまでこのテントから出ちゃダメだよ。
 ポーレットほど安全じゃないからね。」

「「「うん。」」」

「それならもっと端にテント立てないの?」

 スコルが不思議そうに首を傾けた。

「逆だよ。目立つ場所だからこそ、悪い事しようとする人も近づき難いだろう?
 まあ、この中が1番安全なんだ。
 テントが守ってくれる。これからも、何かあればテントに逃げる事。」

「「「はーい。」」」

 イオリも着替えると簡易キッチンに立ちランチの用意を始めた。

「何作るの?」

「オムライスかな。」

 興味深そうに近づくスコルにイオリはニッコリとした。

「オムライス?何それ?」

「美味しい炒めたご飯にフワフワの卵が乗ったやつだよ。
 スープは作ってきたのを温めよう。」

 イオリは手早く全員分のオムライスを作りスコルはスープを温めて食卓に用意した。


「何これ!?何これ!?美味しそう!」

 肉が入ったケチャップごはんにフワトロの卵をのせてケチャップソースがかかったオムライスは大好評だった。

「美味しい!イオリのご飯が1番好き!」

「ナギもー!」

 パティとナギが頬を緩ませ微笑んだ。

「僕も作れる様になりたい。」

 スコルの真剣な目にイオリは頷いた。

「それじゃ、これから何でも良いから一品作ろうか。
 手伝うよ。」

「うん!」

 旅の間にスコルは料理の腕を磨く事にした。

「パティも1人で解体できる様になりたい!」

「そうだね。ダンジョンでは余裕がないかもしれないけど旅の途中ではパティがやってごらん。」

「うん!」

 パティも旅の間の目標ができた。

「ナギも!ナギも!」

「ナギはどうしようか?」

「うーん。どうしよう?」

 悩むナギはこの旅でしたい事をみつけることにした。

「それぞれが目標を楽しんで努力しよう。
 1人じゃないよ。悩んだら、皆んなに相談してごらん。
 解決策を一緒に見つけよう。」

「「「はーい」」」

 お昼ご飯の時間を終えイオリが後片付けを始めるとゼンとアウラと子供達は滑り台とブランコで遊び始めた。

「ねー。イオリ。
 天空って何?」

 パティがブランコに乗りながら聞いてきた。

「空の事だよ。広い広い大空さ。」

「空に行くの?!」

 スコルは目を丸くした。

「んー。どうなんだろうね。
 山のてっぺんよりも高い場所にどうやって行くんだろう?」

 イオリは前の世界の話を思い出した。何気なく話すと子供達は興味深々だった。

「初めて聞いたお話。楽しい。」

 ナギも続きを聞かせろとせがんできた。
 午後の時間をゆったりと過ごし夕方になりスコルと料理を始めた。

「と言っても今日は試しに屋台のご飯も食べたいよね。
 だからサラダを作ろう。
 スコルは野菜切るのは上手にできるから任せるよ。」

「うん!」

 その間、残りの子供達はお風呂の掃除をお願いした。

 野菜をゆっくりだが丁寧に切るとお皿に盛りスコルはイオリに見せた。

「うん!よく出来てる。
 じゃあ今日はマヨネーズを作ってみよう。」

「マヨネーズ?」

「卵と油で作るんだ。よく混ぜると空気を含んでトロトロのソースになるよ。」

 材料を説明しながら木の器に入れて泡立器を渡した。

「屋台で買い物をしてくるよ。
 スコルに任せる。帰って来るまでに出来るかな?」

「やってみる!」

 子供達をアウラに任せ、イオリはゼンとテントを出た。


 足早に屋台エリアへ向かうと数店の店がいい匂いを漂わせていた。

「おい!兄ちゃんもダンジョン入るのかい?
 だったら、力入れるのにたっぷり肉を食ってきな。
 俺の肉串買って行きなよ。」

 豪快に肉の塊を串に刺した物を掲げて屋台の店主が話しかけてきた。

「それなら3本ください。スープってありますか?」

「あるぜ。辛いのと普通のどっちが良い?」

「普通の下さい。」

「まいど!」

 他にも屋台を覗いたが、結局肉料理が多くて肉串のみにした。
 商隊には保存の干し肉と硬いパンがあり旅には必須と教えられた。
 その他の道具もポーレットで入手済みだった

「こんなもんかな?ゼン戻ろう。」

 イオリがゼンに声をかけた時だった。

 テントエリアが騒がしい。

「まさか・・・。」

 急いで帰るとイオリのテントの周りに数人の男達が転がっていた。

「やっぱり。」

 イオリは深く溜息を吐くのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎  『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』  第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。  書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。  第1巻:2023年12月〜    改稿を入れて読みやすくなっております。  是非♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。 絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。 前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。 そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。 まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。 前作に続き、のんびりと投稿してまいります。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15にしています。 ※誤字脱字が存在する可能性か高いです。  苦笑いで許して下さい。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。