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初めての旅
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その日の夕方、公爵邸の謁見室にはポーレット公爵家の面々の他に冒険者ギルド・ギルドマスターであるコジモが集まっていた。
以前に公爵家専属に任ぜられたこの場所で、イオリのSランク昇格の式典が簡素に行われた。
「ポーレット公爵とギルマスの承認により貴殿をSランク冒険者と名乗る事を許す。
ランクに恥じぬ働きを・・・。」
見た事ない銀色のカードをイオリは受け取ると膝をついた。
「はい。」
その後には双子がBランクカードを貰い、ナギはDランクカードを貰った。
「明日からの旅に役立つだろう。」
公爵がニッコリとした。
その後、広間に行くとアーベルとバートも揃い、イオリ達のランク昇格の祝いと旅への送迎会が行われた。
「さぁさぁさぁ、グラスとお持ちになって。」
あの日と同じくオルガ夫人が薦めると公爵が乾杯の音頭をとった。
「何はともあれランクの昇格はめでたい。
加えて初の旅は特別なものだ。
ここにいる者はイオリ達の旅路の無事を祈っている。
気をつけて行っておいで。」
グラスを掲げた公爵に倣い皆んながグラスを上げた。
「「「「乾杯!!」」」」
「このご馳走はコック達がイオリに食べて欲しくて腕を振るったそうだ。
食べてやってくれ。」
ニコライが苦笑しながら指を指すと扉の影からコック達が覗き込んでいた。
「ははは。皆さん既に美味しい料理作れるのに。」
「満足できないそうだ。」
コック達はブンブンと首を縦に振っていた。
「おいしー!」
パティは何時もの通りゼンとクロムスを連れて競う様に口に運び、スコルはナギの皿に料理を盛り付けてやり一緒に黙々と食べている。
「スコルよりパティの方が食べるよな。
黙ってたら、あんなに愛らしいのに。」
ニコライの言葉にイオリは笑いながら指をさした。
そこにはヴァルトとトゥーレ、マルクルがバクバクと料理を口に運んでいた。
「あいつら・・・。全く。クククっ」
2人で笑っていると、部屋にフランとエドガーが入ってきて囁いた。
「ラモン一家を明後日に王都に送還することが決まりました。」
「そうか。しっかりと頼む。
イオリ達の祝いの席だ。お前達も楽しめ。」
「「はい。」」
イオリはニコライに視線を送った。
「王都からも役人や騎士が来て途中で合流するんだ。それまではポーレット領の仕事だ。」
イオリは静かに頷いた。
結局、あの後ラモン一家の事は公爵達に任せきりだが、聞いたところによると一貫して否認をしているらしい。
しかし、違法奴隷売買の証言や書類などが見つかって王都での審問裁判でも厳しい立場に立つだろう言う事だった。
「イオリ君。」
アーベルが1通の封筒を渡した。
「よしなに頼む。」
「はい。」
奴隷商への紹介状だ。腰バックに入れるとニッコリした。
イオリはオルガ夫人と談笑する公爵に近づき頭を下げた。
「過分なご好意に感謝しましす。」
公爵はイオリの頭を撫でた。
「アースガイルを見てきてほしい。
無事に帰っておいで。」
「はい。」
公爵の肩に乗っていたバンデを掌に招くとイオリは優しく撫でた。
バンデは安心する様に寝転び甘えた。
「次に会う時はもう少しは大きくなっているかな?」
スリスリと指にすりよりバンデは公爵の肩に帰って行った。
「皆さん!俺たちポーレットに来て良かったです。
だから知らないものを見てきます。
何か役立つものがあるかもしれない。
少しの間離れますが、また無事に顔を見せられる様に頑張ります。」
そう言うイオリに一同やさしい拍手を送った。
以前に公爵家専属に任ぜられたこの場所で、イオリのSランク昇格の式典が簡素に行われた。
「ポーレット公爵とギルマスの承認により貴殿をSランク冒険者と名乗る事を許す。
ランクに恥じぬ働きを・・・。」
見た事ない銀色のカードをイオリは受け取ると膝をついた。
「はい。」
その後には双子がBランクカードを貰い、ナギはDランクカードを貰った。
「明日からの旅に役立つだろう。」
公爵がニッコリとした。
その後、広間に行くとアーベルとバートも揃い、イオリ達のランク昇格の祝いと旅への送迎会が行われた。
「さぁさぁさぁ、グラスとお持ちになって。」
あの日と同じくオルガ夫人が薦めると公爵が乾杯の音頭をとった。
「何はともあれランクの昇格はめでたい。
加えて初の旅は特別なものだ。
ここにいる者はイオリ達の旅路の無事を祈っている。
気をつけて行っておいで。」
グラスを掲げた公爵に倣い皆んながグラスを上げた。
「「「「乾杯!!」」」」
「このご馳走はコック達がイオリに食べて欲しくて腕を振るったそうだ。
食べてやってくれ。」
ニコライが苦笑しながら指を指すと扉の影からコック達が覗き込んでいた。
「ははは。皆さん既に美味しい料理作れるのに。」
「満足できないそうだ。」
コック達はブンブンと首を縦に振っていた。
「おいしー!」
パティは何時もの通りゼンとクロムスを連れて競う様に口に運び、スコルはナギの皿に料理を盛り付けてやり一緒に黙々と食べている。
「スコルよりパティの方が食べるよな。
黙ってたら、あんなに愛らしいのに。」
ニコライの言葉にイオリは笑いながら指をさした。
そこにはヴァルトとトゥーレ、マルクルがバクバクと料理を口に運んでいた。
「あいつら・・・。全く。クククっ」
2人で笑っていると、部屋にフランとエドガーが入ってきて囁いた。
「ラモン一家を明後日に王都に送還することが決まりました。」
「そうか。しっかりと頼む。
イオリ達の祝いの席だ。お前達も楽しめ。」
「「はい。」」
イオリはニコライに視線を送った。
「王都からも役人や騎士が来て途中で合流するんだ。それまではポーレット領の仕事だ。」
イオリは静かに頷いた。
結局、あの後ラモン一家の事は公爵達に任せきりだが、聞いたところによると一貫して否認をしているらしい。
しかし、違法奴隷売買の証言や書類などが見つかって王都での審問裁判でも厳しい立場に立つだろう言う事だった。
「イオリ君。」
アーベルが1通の封筒を渡した。
「よしなに頼む。」
「はい。」
奴隷商への紹介状だ。腰バックに入れるとニッコリした。
イオリはオルガ夫人と談笑する公爵に近づき頭を下げた。
「過分なご好意に感謝しましす。」
公爵はイオリの頭を撫でた。
「アースガイルを見てきてほしい。
無事に帰っておいで。」
「はい。」
公爵の肩に乗っていたバンデを掌に招くとイオリは優しく撫でた。
バンデは安心する様に寝転び甘えた。
「次に会う時はもう少しは大きくなっているかな?」
スリスリと指にすりよりバンデは公爵の肩に帰って行った。
「皆さん!俺たちポーレットに来て良かったです。
だから知らないものを見てきます。
何か役立つものがあるかもしれない。
少しの間離れますが、また無事に顔を見せられる様に頑張ります。」
そう言うイオリに一同やさしい拍手を送った。
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