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美食の旦那さん

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 朝

「「ねー。イオリ?」」

 双子の呼ぶ声でイオリは振り返った。
 双子はまだ、眠そうな顔を擦ると身支度を終わらせたイオリにしがみついてきた。

「今日はバンデちゃんと遊んでいい?」

 スコルが見上げながら聞いてきた。

 ベットにいたナギも何処かソワソワと見つめている。

「今日は朝一番で冒険者ギルドに行かなきゃいけないから、帰ったら遊んでいいかクリストフさんに聞いてみよう。
 テオさんの邪魔にならなかったら遊ばせてもらおう。」

「「「うん!!」」」

 子供達も朝の身支度を始めテントを出るとアウラのブラッシングを始めた。

 イオリはその間に土鍋で米を炊き、浅漬けと豚汁の用意をした。
 厚焼き卵を焼き、浅漬けきゅうりをそえてテーブルに並べた。
 炊けた白米をおにぎりにして何個も作っていく。

『おはよう・・・』

 まだフラフラしているゼンがイオリに甘える。

「おはよう。昨日はお疲れ様。
 今日はギルドに行って、午後は休みにするからゼンもブラッシングしてあげるね。」

 ゼンは眠そうな目をアウラに向け子供達がブラッシングしているのを見ると嬉しそうに頷いた。

 おにぎりは子供達にも好評でイオリは嬉しかった。

「鮭と海苔が欲しいな・・・。」

 塩むすびも好きだがイオリは鮭の入ったおにぎりが好きだった。

「海の街もいいなぁ・・・。」

「うみ?」

 イオリの呟きにナギが不思議そうに見てきた。

「そう、海。池はわかるかい?」

「・・・ご本で見たよ。」

 ナギはしばし考えると答えた。

「水溜りは?」

「うん!」

 この頃には双子とゼンも興味深そうに聞いていた。

「すっごく大きな水溜りなんだ。
 魔の森の魔獣は歩いたり走ったりするだろう?
 海の生き物は泳ぐんだ。」

「泳ぐ?・・・不思議。」

「そうだね。不思議だね。
 いつか見にいこう。」

「「「うん!」」」

 朝食を終えてギルドに向かうため出発するとクリストフが庭師のボーに頼んで花を摘んでもらっていた。

「おはようございます。」

 イオリ達が挨拶をすると2人はニッコリと微笑んだ。

「ギルドに行かれるのですか?」

「はい。昨日の報告と報酬を貰いに。」

「恐らくギルドは忙しくしているでしょうからお気をつけて・・・。
 討伐に参加してないのに報酬をねらう不届き者もおりますので。」

「分かりました。ありがとうございます。」

 クリストフの忠告に気を引き締めていたイオリの袖をスコルがツンツンと引っ張った。
 イオリはクスリッと笑うとクリストフに聞いた。

「今日はテオさんにお時間はありますか?
 子供達がバンデに会いたがっているんです。」

 クリストフは微笑んで頷いた。

「午後のお茶の時間にお時間をいただきましょう。
 旦那様もバンデ様もお喜びになるでしょう。」

「「「わーい!」」」

 子供達の喜ぶ声が裏庭に響いた。



 街に降りて行くといつもと違って雑然とした風景だった。
 所々で二日酔いの大人達が転がっていた。

『ボク嫌いな匂い!』

「ヒンッ!」

 従魔2匹が顔をしかめた。

 噴水広場に出て冒険者ギルドに行こうとしたがイオリは足を止め教会を見上げた。

「ギルドの前に教会に行っていいかな?」

 頷く子供達と共にイオリは教会の分厚い扉を押した。

 

 教会のホールの所々で眠ったり唸ったりする人達の間を教会の代表エドバルドが行き来していた。
 イオリ達に気付くとエドバルドは満面の笑みを浮かべた。

「おはようございます。
 なんだか忙しいそうですね。
 お祈りをしに来たのですが後でにします。」

「いいえ。遠慮なさらずどうぞ。
 この方達はスタンビートではなく昨夜の宴で帰り損ねたり、二日酔いで軽いポーションを求めにきた方達です。

 ここまでなるのなら、お酒を飲むのをやめればいいと思うですが人は貪欲なものです。」

 苦笑するエドバルドについて行くと祭壇まで歩いていく。

「昨日はお疲れ様でした。
 ポーレットを救ってくれて何とお礼を言ったらいいか。」

「俺の力だけじゃないです。冒険者や騎士団の力です。
 それと・・・。かの森の主が人を信じてくれたからです。」

 そう言うイオリにエドバルドは神妙な顔で頷いた。

「さぁ、ごゆっくりどうぞ。
 お子さん達もお疲れ様でした。
 ありがとう。」

 エドバルドに褒められ子供達は照れていた。

 イオリが膝をつき祈りを捧げるといつもの通り光に包まれ祭壇には虹色の髪の男性が微笑んでいた。

『お久しぶりです。相沢さん。』

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