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美食の旦那さん
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「「「イオリ!!」」」
いつもと違うイオリに子供達は飛びつく事はせずに声をかけた。
イオリは優しい手で子供達を撫でると公爵に向き直った。
「ラモンさんに会わせて下さい。」
「!!!・・・何があった。」
「あの鹿の魔獣は人間達に襲われ気絶させられた。
その間に子供が拐われたそうです。
自分のテリトリーで何日も探したけど見つからず。
知らない間に、この森に来ていたと。
そうしたら、人間の街がら子供の気配がしたから取り返そうとしています。
俺が責任を持って帰す約束をしたんです。」
イオリは怒りのオーラを漏らしながら話した。
「ラモンの仕業か?」
「1番、確率が高いでしょ?」
公爵は溜息を吐きイオリに頷いた。
「一緒に行こう。ラモン親子を屋敷に戻せ。」
公爵はヴァルトに騎士団を任せノア、イオリと共にポーレットへ戻る事にした。
「まだ、やる事がある。
待ってて。」
イオリが子供達を撫でると子供達も頷きイオリとゼンを見送った。
ゼンの背中に乗ってポーレットへ急ぐイオリにノアが聞いた。
「他の魔獣は大丈夫だろうか?」
「鹿の魔獣の怒気に当てられて騒いだんです。
本来のスタンビートじゃないので鹿の魔獣が落ち着いてくれた今は戻ってくれてます。」
振り返ったノアが見たのは魔獣達が森の中へ入っていったところだった。
「良かった。しかし、鹿の魔獣の子供が取り返せないとなると不味いな。」
ノアは自分に言う様に呟いた。
「います。鹿の魔獣が気配を辿れているんです。
ゼンが分からないのなら、何か作為的に妨害されているんです。
何はともあれ、ラモンさんには話を聞かなければいけません。」
ゼンを急がせるイオリに公爵とノアは必死について行った。
ポーレットの貴族が屋敷を構えるエリアは現在多くの治安維持隊によって押さえられていた。
知らせを受け牢からラモン子爵夫婦と子息が引きずられ出て、自分の屋敷の応接室に座らされていた。
目の前にはニコライが憮然とした顔で座り、その後ろでは従者が守るように控えていた。
カーバンクルの番達もテーブルに乗り黙ってラモン子爵一家を見つめていた。
ダンっ!
無作法にも扉が開かれ騎士姿の公爵が入ってくるとラモン子爵は先ほどの威勢もなく縋る様に公爵に叫んだ。
「聞いて下さい!ポーレット公爵!
我々は知らないのです。何もかも知らない事なのです。
確かに偵察鳥は放ちましたが、この様な大それた事など私は知らないのです!
どうか・・・どうか!」
ラモン子爵の言葉にコクコクと頷く奥方にブルブルと震える子息。
そこに1人の青年が白い狼を連れて入ってきた。
「鹿の魔獣の子供はどこです?」
「・・・?何の事だ。」
公爵ではなく知らない青年に口を訊かれ戸惑う子爵は公爵の顔を見て首を横に振った。
「だったら、スタンビートの罠とは何だと思っていたんです?」
青年が尋問するのを止めない公爵に痺れをきらしてラモン子爵は口にした。
「この者は誰です?何故、公爵ではなく、この者が話しているのです。」
夫の言葉に奥方もコクコクと頷く。
「この者の言葉に耳を傾けろ。貴様は指輪の何を思って魔の森へ罠を仕掛けたと思っていた?」
「し 知らない。指輪だって取られた!
私の責任ではない!!
お前らがいけないんだ!ポーレットが危険なら私を逃せ!早く!」
「お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?!
誰が逃すか!市民を危険にさらした責任をとれ!」
怒鳴るニコライに喚くラモン子爵、ワーワーと泣く奥方を部屋にいた人間は呆れていた。
そんな中、ジッと見ていたイオリは1人スタスタと歩きラモン夫婦を無視して通り過ぎ立ち止まった。
「貴方ですね?鹿の魔獣を連れてきたのは?」
イオリが視線を下ろし話しかけたのは、存在感もなく震えていただけの子息だった。
その瞬間、男は震える体を止めて髪の間から威嚇をする様な目でイオリを見上げた。
「鹿の魔獣の子供はどこです?」
お構いなしに怒気を隠す事をやめたイオリが男を睨みつけた。
「今更遅い。教えて欲しければ私を解放しろ。」
誰もが父親の影に隠れて存在感の薄い息子だと思っていた。
逆らう事もせず、自己主張するでもない子爵の息子・・・。
「アルヴァ・・・お前・・・。」
父であるスティーグ・ラモンでさえ目の前の男が本当にいつも叱咤していた息子であるのか戸惑っていた。
「何です。父上?自分の息子がおかしくなったとでも?
いつもいつも、貴方に良い様にされてきた情けない息子・・・
違いますよ?私の掌で転がっていたのは貴方の方だ。
ククククク」
アルヴァ・ラモンが心底可笑しいと言う様に笑い出した。
「此奴も結局ラモンだと言うことか・・・。」
公爵の言葉にアルヴァは噛み付いた。
「違う!ラモンじゃないのは父の方だ!
私の方がラモンだ!
此処まで事態が切迫するまで気づかなかったオメデタイ公爵様方には分からないだろうがな。」
「「何!!貴様!」」
怒るフランとエドガーは掴みかかろうとしてニコライに止められた。
「だってそうだろう。絶対に・・・」
次の瞬間だった。
ドンっ! バァン!
アルヴァがテーブルに顔を押し付けられ目の前に銃弾が撃ち込まれたのである。
「お前が何者だろうと知らないんだよ。
さっさと鹿の魔獣の子供の居場所を言え。」
大人達が目にしたのは、かつて無いほど怒りを目に溜めた銃を持った青年だった。
いつもと違うイオリに子供達は飛びつく事はせずに声をかけた。
イオリは優しい手で子供達を撫でると公爵に向き直った。
「ラモンさんに会わせて下さい。」
「!!!・・・何があった。」
「あの鹿の魔獣は人間達に襲われ気絶させられた。
その間に子供が拐われたそうです。
自分のテリトリーで何日も探したけど見つからず。
知らない間に、この森に来ていたと。
そうしたら、人間の街がら子供の気配がしたから取り返そうとしています。
俺が責任を持って帰す約束をしたんです。」
イオリは怒りのオーラを漏らしながら話した。
「ラモンの仕業か?」
「1番、確率が高いでしょ?」
公爵は溜息を吐きイオリに頷いた。
「一緒に行こう。ラモン親子を屋敷に戻せ。」
公爵はヴァルトに騎士団を任せノア、イオリと共にポーレットへ戻る事にした。
「まだ、やる事がある。
待ってて。」
イオリが子供達を撫でると子供達も頷きイオリとゼンを見送った。
ゼンの背中に乗ってポーレットへ急ぐイオリにノアが聞いた。
「他の魔獣は大丈夫だろうか?」
「鹿の魔獣の怒気に当てられて騒いだんです。
本来のスタンビートじゃないので鹿の魔獣が落ち着いてくれた今は戻ってくれてます。」
振り返ったノアが見たのは魔獣達が森の中へ入っていったところだった。
「良かった。しかし、鹿の魔獣の子供が取り返せないとなると不味いな。」
ノアは自分に言う様に呟いた。
「います。鹿の魔獣が気配を辿れているんです。
ゼンが分からないのなら、何か作為的に妨害されているんです。
何はともあれ、ラモンさんには話を聞かなければいけません。」
ゼンを急がせるイオリに公爵とノアは必死について行った。
ポーレットの貴族が屋敷を構えるエリアは現在多くの治安維持隊によって押さえられていた。
知らせを受け牢からラモン子爵夫婦と子息が引きずられ出て、自分の屋敷の応接室に座らされていた。
目の前にはニコライが憮然とした顔で座り、その後ろでは従者が守るように控えていた。
カーバンクルの番達もテーブルに乗り黙ってラモン子爵一家を見つめていた。
ダンっ!
無作法にも扉が開かれ騎士姿の公爵が入ってくるとラモン子爵は先ほどの威勢もなく縋る様に公爵に叫んだ。
「聞いて下さい!ポーレット公爵!
我々は知らないのです。何もかも知らない事なのです。
確かに偵察鳥は放ちましたが、この様な大それた事など私は知らないのです!
どうか・・・どうか!」
ラモン子爵の言葉にコクコクと頷く奥方にブルブルと震える子息。
そこに1人の青年が白い狼を連れて入ってきた。
「鹿の魔獣の子供はどこです?」
「・・・?何の事だ。」
公爵ではなく知らない青年に口を訊かれ戸惑う子爵は公爵の顔を見て首を横に振った。
「だったら、スタンビートの罠とは何だと思っていたんです?」
青年が尋問するのを止めない公爵に痺れをきらしてラモン子爵は口にした。
「この者は誰です?何故、公爵ではなく、この者が話しているのです。」
夫の言葉に奥方もコクコクと頷く。
「この者の言葉に耳を傾けろ。貴様は指輪の何を思って魔の森へ罠を仕掛けたと思っていた?」
「し 知らない。指輪だって取られた!
私の責任ではない!!
お前らがいけないんだ!ポーレットが危険なら私を逃せ!早く!」
「お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?!
誰が逃すか!市民を危険にさらした責任をとれ!」
怒鳴るニコライに喚くラモン子爵、ワーワーと泣く奥方を部屋にいた人間は呆れていた。
そんな中、ジッと見ていたイオリは1人スタスタと歩きラモン夫婦を無視して通り過ぎ立ち止まった。
「貴方ですね?鹿の魔獣を連れてきたのは?」
イオリが視線を下ろし話しかけたのは、存在感もなく震えていただけの子息だった。
その瞬間、男は震える体を止めて髪の間から威嚇をする様な目でイオリを見上げた。
「鹿の魔獣の子供はどこです?」
お構いなしに怒気を隠す事をやめたイオリが男を睨みつけた。
「今更遅い。教えて欲しければ私を解放しろ。」
誰もが父親の影に隠れて存在感の薄い息子だと思っていた。
逆らう事もせず、自己主張するでもない子爵の息子・・・。
「アルヴァ・・・お前・・・。」
父であるスティーグ・ラモンでさえ目の前の男が本当にいつも叱咤していた息子であるのか戸惑っていた。
「何です。父上?自分の息子がおかしくなったとでも?
いつもいつも、貴方に良い様にされてきた情けない息子・・・
違いますよ?私の掌で転がっていたのは貴方の方だ。
ククククク」
アルヴァ・ラモンが心底可笑しいと言う様に笑い出した。
「此奴も結局ラモンだと言うことか・・・。」
公爵の言葉にアルヴァは噛み付いた。
「違う!ラモンじゃないのは父の方だ!
私の方がラモンだ!
此処まで事態が切迫するまで気づかなかったオメデタイ公爵様方には分からないだろうがな。」
「「何!!貴様!」」
怒るフランとエドガーは掴みかかろうとしてニコライに止められた。
「だってそうだろう。絶対に・・・」
次の瞬間だった。
ドンっ! バァン!
アルヴァがテーブルに顔を押し付けられ目の前に銃弾が撃ち込まれたのである。
「お前が何者だろうと知らないんだよ。
さっさと鹿の魔獣の子供の居場所を言え。」
大人達が目にしたのは、かつて無いほど怒りを目に溜めた銃を持った青年だった。
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