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美食の旦那さん
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『全然、話通じないよ!』
血走った瞳でゼンの動きを見ては踏み潰そうとしている鹿の魔獣はイオリの放つ銃の弾にも耐えていた。
「テオさんがどこかの主だって言ってたよね。
簡単に殺せないよ!」
足元を凍らされようと関係なく暴れる鹿の魔獣は他の者を気にせずイオリとゼンに集中して攻撃をしている。
鹿と言ってもヘラジカに似ているこの魔獣は角を地面に突き刺し天地返しをしてくる。簡単には近づかせてくれそうもない。
そんな時だった。
《イオリ!その鹿さん。返してって言ってる。》
《・・・ナギか!鹿の声が聞こえるの?》
《うん。返してって言ってる。》
《何を?》
《わからない・・・。》
《分かった。ありがとう》
「何だと思う?」
『ボクも返してって聞こえるけど、答えてくれないんだ。』
「・・・聞いてみよう。ゼン、鹿の側面について俺を飛ばして。」
『了解!』
ゼンは鹿の魔獣が天地返しで攻撃してくる土を避け近づき頭にしがみついてきたイオリを飛ばした。
イオリは鹿の魔獣の毛を掴み猛然と登り始めた。
鹿の魔物は振り落とそうと体を震わせるがイオリは関係なくスルスルと登っていく。
イオリは鹿の背中に乗ると頭に近づき2丁拳銃に持ち替え頭蓋骨に銃口を合わせ引き金を引いた。
ドォォォン!!
「痛っ!」
イオリはあまりの衝撃から腕を押さえて蹲った。
銃口から放たれた特大のインパクトで鹿の魔獣の脳が揺れ足元がふらついた。
「ゼン!!」
イオリの叫びに応じた様にゼンが鹿のサイドから頭突きをして鹿の魔獣を倒し踏みつけた。
ズドゴォォォォン!!
大きな音を立てて鹿の魔獣は倒れて痙攣を起こしていた。
『イオリ!大丈夫??』
「大丈夫・・・。腕が痛い。」
そう言うと腰バックからポーションを出し少量飲んだ。
1人の青年が白い大きな狼に乗り見た事がない武器で鹿の魔獣を翻弄し、飛び乗り、登って頭蓋骨への攻撃をして倒れる一連の流れを公爵含めヴァルト・従者・エルノール・子供達・騎士団に冒険者達は見ていた。
「何だ・・・アイツのあの動きは・・・。」
「それよりも、あの白い狼
さっきまであんなに大きくなかったよな?」
「見た事ない武器だ・・・。
ダンジョンで手に入れたのか?」
「にしても。鹿の魔獣倒れたよな?
今なら皆んなでやれるんじゃないか?」
いきり立つを冒険者をエルノールが視線をイオリ達から外さずに手を真横にして止めた。
同じ様に騎士団をノアが止めていた。
「手を出すな。そう言われている。
終わるまで静かにしていよう。」
公爵の言葉に皆、静かに見守った。
イオリは銃をしまい、鹿の魔獣の目に近づき手で撫でると静かに聞いた。
「教えて下さい。どこぞの主様。
何を探しておられるのですか?」
《カエセ・・・。》
「何を?」
《カエセ・・・。ヌスコ・・・カエセ。》
揺れる鹿の魔獣の目から大粒の涙が一粒落ちた。
「!!!息子が拐われたの?誰に?」
《トボケルナ・・・。
オマエタチニ・・・サラワレタ・・・。
カエセ・・・。》
「・・・・。ポーレットに息子がいるの?!」
イオリは驚きゼンを見た。
『気配が感じられない。分からないよ。』
親の本能が息子を探し出す。
体を持ち上げようとする鹿をゼンが押し付けた。
イオリは鹿を撫でて落ち着かせる。
「俺はイオリ。
どこぞの主よ。貴方の息子を探す手伝いをさせて下さい。
俺が貴方の子供を連れてくる。
それまで静まってはくれませんか?」
《ダマサレルカ!ニンゲン!!
イマスグ・・・ツレテカエル!
ジャマ ヲ スルナ。》
暴れる鹿の魔獣をゼンが抑える。
『ボクは絶対神リュオンに力をもらった神獣フェンリル!
ボクの主人のイオリを信じて!
君の子供は僕たちが取り返すから!』
《・・・・。シンジュウ?
シュジン? ナゼ?》
暴れるのをやめてゼンの言葉に耳を貸した鹿の魔獣はイオリを見つめた。
『イオリはリュオン様の愛し子。
イオリを守り一緒に生きるのがボクの役目!
だから、お願い。イオリを信じて。』
魔獣の鹿はボロボロと涙を流しイオリを見つめ話し始めた。
話を聞き終えたイオリは鹿の魔獣を癒す様に撫でた。
「俺に任せて下さい。
貴方が子供の気配を感じているのなら、まだ無事と言う事です。
いいですか?」
《タノム・・・ムスコ・・・タノム・・・。》
イオリは鹿の魔獣に頷くとアウラを呼んだ。
「此処に居てあげて。」
アウラは首を上下に動かし頷くと鹿の魔獣に寄り添った。
「ゼン。行くよ。」
振り返ったイオリは静かな静かな怒りを隠しきれずオーラを纏い、待っていたテオの元に歩いて行った。
血走った瞳でゼンの動きを見ては踏み潰そうとしている鹿の魔獣はイオリの放つ銃の弾にも耐えていた。
「テオさんがどこかの主だって言ってたよね。
簡単に殺せないよ!」
足元を凍らされようと関係なく暴れる鹿の魔獣は他の者を気にせずイオリとゼンに集中して攻撃をしている。
鹿と言ってもヘラジカに似ているこの魔獣は角を地面に突き刺し天地返しをしてくる。簡単には近づかせてくれそうもない。
そんな時だった。
《イオリ!その鹿さん。返してって言ってる。》
《・・・ナギか!鹿の声が聞こえるの?》
《うん。返してって言ってる。》
《何を?》
《わからない・・・。》
《分かった。ありがとう》
「何だと思う?」
『ボクも返してって聞こえるけど、答えてくれないんだ。』
「・・・聞いてみよう。ゼン、鹿の側面について俺を飛ばして。」
『了解!』
ゼンは鹿の魔獣が天地返しで攻撃してくる土を避け近づき頭にしがみついてきたイオリを飛ばした。
イオリは鹿の魔獣の毛を掴み猛然と登り始めた。
鹿の魔物は振り落とそうと体を震わせるがイオリは関係なくスルスルと登っていく。
イオリは鹿の背中に乗ると頭に近づき2丁拳銃に持ち替え頭蓋骨に銃口を合わせ引き金を引いた。
ドォォォン!!
「痛っ!」
イオリはあまりの衝撃から腕を押さえて蹲った。
銃口から放たれた特大のインパクトで鹿の魔獣の脳が揺れ足元がふらついた。
「ゼン!!」
イオリの叫びに応じた様にゼンが鹿のサイドから頭突きをして鹿の魔獣を倒し踏みつけた。
ズドゴォォォォン!!
大きな音を立てて鹿の魔獣は倒れて痙攣を起こしていた。
『イオリ!大丈夫??』
「大丈夫・・・。腕が痛い。」
そう言うと腰バックからポーションを出し少量飲んだ。
1人の青年が白い大きな狼に乗り見た事がない武器で鹿の魔獣を翻弄し、飛び乗り、登って頭蓋骨への攻撃をして倒れる一連の流れを公爵含めヴァルト・従者・エルノール・子供達・騎士団に冒険者達は見ていた。
「何だ・・・アイツのあの動きは・・・。」
「それよりも、あの白い狼
さっきまであんなに大きくなかったよな?」
「見た事ない武器だ・・・。
ダンジョンで手に入れたのか?」
「にしても。鹿の魔獣倒れたよな?
今なら皆んなでやれるんじゃないか?」
いきり立つを冒険者をエルノールが視線をイオリ達から外さずに手を真横にして止めた。
同じ様に騎士団をノアが止めていた。
「手を出すな。そう言われている。
終わるまで静かにしていよう。」
公爵の言葉に皆、静かに見守った。
イオリは銃をしまい、鹿の魔獣の目に近づき手で撫でると静かに聞いた。
「教えて下さい。どこぞの主様。
何を探しておられるのですか?」
《カエセ・・・。》
「何を?」
《カエセ・・・。ヌスコ・・・カエセ。》
揺れる鹿の魔獣の目から大粒の涙が一粒落ちた。
「!!!息子が拐われたの?誰に?」
《トボケルナ・・・。
オマエタチニ・・・サラワレタ・・・。
カエセ・・・。》
「・・・・。ポーレットに息子がいるの?!」
イオリは驚きゼンを見た。
『気配が感じられない。分からないよ。』
親の本能が息子を探し出す。
体を持ち上げようとする鹿をゼンが押し付けた。
イオリは鹿を撫でて落ち着かせる。
「俺はイオリ。
どこぞの主よ。貴方の息子を探す手伝いをさせて下さい。
俺が貴方の子供を連れてくる。
それまで静まってはくれませんか?」
《ダマサレルカ!ニンゲン!!
イマスグ・・・ツレテカエル!
ジャマ ヲ スルナ。》
暴れる鹿の魔獣をゼンが抑える。
『ボクは絶対神リュオンに力をもらった神獣フェンリル!
ボクの主人のイオリを信じて!
君の子供は僕たちが取り返すから!』
《・・・・。シンジュウ?
シュジン? ナゼ?》
暴れるのをやめてゼンの言葉に耳を貸した鹿の魔獣はイオリを見つめた。
『イオリはリュオン様の愛し子。
イオリを守り一緒に生きるのがボクの役目!
だから、お願い。イオリを信じて。』
魔獣の鹿はボロボロと涙を流しイオリを見つめ話し始めた。
話を聞き終えたイオリは鹿の魔獣を癒す様に撫でた。
「俺に任せて下さい。
貴方が子供の気配を感じているのなら、まだ無事と言う事です。
いいですか?」
《タノム・・・ムスコ・・・タノム・・・。》
イオリは鹿の魔獣に頷くとアウラを呼んだ。
「此処に居てあげて。」
アウラは首を上下に動かし頷くと鹿の魔獣に寄り添った。
「ゼン。行くよ。」
振り返ったイオリは静かな静かな怒りを隠しきれずオーラを纏い、待っていたテオの元に歩いて行った。
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