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美食の旦那さん

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「連れて行きましょう。
 双子さんは立派な戦力ですし
 ナギの移動手段はイオリさんの役に立つはずです。」

 ハッ!とナギと目を合わせるとイオリを見て頷きしがみついた。
 押し切られたイオリは提案した。
 
「じゃぁ、双子はゼンと前衛ね。
 俺がやり損なったのを仕留めて。

 ナギとアウラは俺の側に。
 移動を助けてくれ。」

 イオリの言葉に子供達はニッコリ微笑み親指を立てた。

「『「「了解」」』」

 次々とカードの登録を終えて扉を出て行く冒険者達を送り出してイオリ達は受付に行った。

「子供さん達も行くんですか?」

 ラーラを始めとした受付達が騒ぎ出した。

「「「頑張る!!」」」

「無理はさせません。」

 そう言うイオリをエルノールが助けた。

「受付を」

「・・・はい。御武運を」

 イオリ達は着替えるとラーラ達受付に見送られながら冒険者ギルドの扉を後にした。

 壁門に着くと治安維持隊が街に入る人間の検査と街を出る冒険者達の検査にごった返していた。

「隊長さん!」

 イオリの声に治安維持隊ロディは手を挙げて近づいてきた。

「行ってくれるのか!子供達も?!」

「はい。お願いなのですか壁の上に登らせてもらえますか?
 俺、遠距離武器が得意なんです。
 冒険者の第一陣が魔獣達と当たる防衛線を街から離しておきたいんです。」

「ああ!いいぞ。あの扉の階段を登れ!」

 イオリは頷くと子供達と従魔を抱きしめた。

「いい?命は持ち帰るもの。」

「『「「いのちは持ち帰るもの。」」』」

「帰ったら美味しいご飯食べよう。」

「「「『わーーーい!』」」」

 双子をゼンに股がせ、ゼンのお尻を軽く叩いた。

「行っておいで。」

 ゼンは走り出すと冒険者達の脇を走って行った。

「「「おいおいおい!ガキだけで行かすのか?
 お前は?」」」

 側にいた冒険者達が騒ぐ中イオリはナギを抱え

「俺には俺のやるべき事がある。
 アウラついておいで。」

 ロディが言った扉を開け長い螺旋階段を全速力で走っていった。



バタンッ!   ヒュー!

 最上階の扉を開けると強めの風が吹いた。

「アウラ、ナギを頼むよ。」

 ナギを下ろすとアウラは風から守る様にナギにすり寄った。

 イオリ達がいるのはポーレットを囲む大きな壁のてっぺん。
 広大な風景を見渡せるその場所からイオリは魔の森を見た。

 まだ、大きな魔獣は出て来ず鳥達や小さい動物が騒ぎ立てていた。
 冒険者の先頭も、もう少ししたら魔の森の入り口が見えるだろう。

 イオリはスナイパーライフルを肩に担ぐとしゃがみナギとアウラを見つめた。

「いいかい。俺はここから魔獣を撃つ。
 ナギは俺が頼むって言ったら、下まで下ろして欲しい。
 その後はアウラに乗って双子とゼンの元に行くから移動を任せたい。」

 ナギはしっかりと頷いて親指をあげた。
 アウラも任せてと鼻を擦り付けてきた。

「ただ、戦うんじゃないよ。
 守るんだ。屋台のおじさんやおばさん。
 日暮れの暖炉のダンさんとローズさん。パウロさんとカーラさん。
 公爵さんにオルガ夫人。裏庭の花壇達。
 守るものが沢山あるね。

 自信を持って思う様にやってごらん。」

 イオリの言葉にナギとアウラは考え込むと静かに頷いた。

 スナイパーライフルを覗くイオリの目にゴブリンやオーク、ブラックパンサー、レッドブルなどお馴染みの魔獣が湧き出てきたのが見えた。

 一呼吸するとイオリは引き金を引き始めた。


 
 事が起こる数分前・・・。

 ヴァルト達を送り出し、子爵親子が牢に移送が始まるとニコライは捜索の残っていた子爵の執務室へと入って行った。

「片っ端から探せ。何か他にも隠しているぞ。
 ラモン子爵と取引のあった貴族、商人全て洗い出せ。」

「「「はっ!!」」」

 従者を含め、騎士達も躍起になって調べ始めた。

 山積みにされて行く書類や資料を目に溜息を吐くとエドガーが顎に手をやり考え出していた。

「どうした?」

「・・・はい。
 どうも、おかしくありませんか?
 確かにこれらは子爵の罪を暴けるでしょうが、ここにあるのは小物ばかり。
 つまり、資料の確証です。
 エルフの違法取引なんて大罪を犯す人物が、これしかやってないなんて事がありますか?」

「確かにな・・・。」

 バタバタバタッ!!

 その時、走り込んできた騎士の1人が大きな声で報告をした。

「大変です!冒険者ギルドからスタンビートの予兆ありと報告が!
 見張り台からも同じ報告があります!!」

「何!?先ほど指輪は回収して分析に回している。
 自然発生か?
 今は、即時対処に迎え!騎士は市民の誘導が優先だ!
 終わり次第、冒険者ギルドに合流せよ!」

 ニコライは従魔にポーレットに施されたカーバンクルの結界のスキルを強化する様に言い、エドガーには牢屋にいる子爵親子の確認を指示した。

「何が起こっている?
 我々も魔獣の討伐に向かうぞ。」

 ニコライは足早にラモン子爵家を後にした。
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