拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

美食の旦那さん

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「旦那。今日は何を作るんです？」

　カッチェとミラがワクワクしているのをイオリはニッコリ笑って説明した。

「今日作るのはチーズホンデュと言います。
　チーズのソースに蒸した野菜や肉を纏わせて食べるんですよ。」

「纏わせるって。かけるんじゃないんですか？」

「今、細い枝を拾ってもらってるんです。
　先を切って野菜が蒸し終わったら、余ったお湯で煮沸消毒します。
　それに挿して直接鍋に入れて、纏わせるんです。
　まぁ、フォークでも良いんですけどね。」

「へぇぇぇ。」

　ミラは感心した様に頷いた。
　カッチェはすぐさまイオリのやる事を見逃すかと隣で観察を開始した。

　「じゃぁ、始めますか」の声でイオリは調理を始めた。

「これ、ブドウで出来たお酒なんです。
　手に入らなかったらいつものシチューを薄くしてチーズを大量に混ぜても美味しいと思いますよ。
　でも、今日はこのお酒を使います。

　鍋にニンニクを擦り付けて、ブドウ酒を沸騰させてチーズを細かくしたものを入れます。
　早く溶かすのに有効ですよ。
　最後に塩胡椒をして隠し味にナツメグを加えて終わりです。
　牛乳を少し加えるのも良いかと思います。
　さぁ、コンロも持っていきましょう。」

　ローテーブルの真ん中にコンロと鍋を設置した。

　エドガーとパティが持ってきた枝を煮沸消毒をした後、食べ方を見せた。

　枝に蒸した人参を刺しチーズに潜らせてパティの口に持っていった。
　パクッ！っと食べたパティは目を垂らして微笑んだ。

「美味しい～！！」

　それを見たスコルとナギもやると言い出し、同じ様に食べさせた。

「美味しい！」
「おいしー！」

　子供達の反応を見て大人達も手を伸ばした。

「うん！美味い！」
「良いですねー。」
「パンも美味しいわ。」

　乳の利用法を知り、子供が目の前で頬張るのを見て乳屋の家族は改めて乳への可能性を信じ始めていた。
　イオリは料理だけでなく、乳屋の家族に自信を持つ事を教えたのだった。

　それぞれが思い思いに食事を進めるとだんだんと具材が減ってきた。
　イオリは焚火場に向うと、腰バックから布袋を出し中に入っていた物をお湯の中のに入れると数分間、茹でてザルにとってテーブルに戻った。

「余ったソースも勿体無いですからね。
　これは乾燥させたマカロニです。
　以前、親父さんとカッチェさんには食べてもらいましたね。アレです。
　コレを混ぜて・・・。塩胡椒で味を整えます。
　さぁ、最後にどうぞ。」

　それぞれの皿に盛って乾燥させたニンニクチップを乗せて渡した。

　ニコライは一口食べると嬉しそうに唸った声を出した。

　バートも何とも言えない蕩けた顔をしていた。

　双子とゼンはバクバクを食べナギはゆっくりとモグモグとして時折、隣にいるアウラとデニを撫でていた。

　乳屋の家族はイオリの料理に感銘を受けたのか、あーでもないこーでもないと、話しながら一生懸命に食べていた。


　全てを食べ終えたイオリは果実を剥きデザートとして出し、スコルとミラはカモミールティーを入れてまったりした時間を過ごした。

「そう言えば兄さん。
　また乳が固まっちまってたぞ。
　捨てるの手伝ってくれ。」

「あぁ分かった。寝る前にやっちまおう。」

「・・・・・・・。乳が固まる？」

　イオリのレーダーが反応した。