異世界でネコとして人生を謳歌します。

1異世界でネコとして転生するため、神様と交渉いたします。

1-7異世界でネコとして暮らすため、呪いを持って転生します。

美女さんからの提案を受け入れることに決めた香奈は、細かい部分の確認をすることにした。


「……それは、ネコになったらもう戻らないんですよね？」


「いいえ。あなたが人間に戻りたいと思いさえすれば、ネコ化の呪いが解けるように同時に組み込みます。
もしも転生後にこのまま人間でいたいと思っても、そのまま過ごせるように」


どうやら、この美女さんは相当優しい神様であるらしい。
考えを押しつけるのではなく、あくまでも選択できるようにとのことか。


「それから、誰かに呪いを解かれた場合もネコ化は解けます。
誰にも解けない呪いは、今から行く世界には存在しませんので」


（あ、やっぱりこの神様優しいな）


呪いを解くという行為は、誰かに必要とされているからわざわざ行うことだろう。
香奈にかかったネコ化の呪いを解くような人が現れれば、諦めて人の道を歩みなさいと言われているような気がした。

深読みしすぎかもしれないが、ほんの少しだけ香奈は美女さんのことを好ましいと思った。


「これ以上の譲歩はできません」


「……わかりました。それでお願いします」


気になっていた部分の確認は済んだ。
香奈が「是」と答えたからだろうか、美女さんが満足そうに頷く。


「他の設定もいろいろ決めなければいけないのですが、もう転生までの時間がありませんので、全てこちらで決めさせていただきます」


もうこちらの願望は通っているため、あとはお任せでもまぁ問題はないだろう。
そう思って、香奈は美女さんが決めていく設定をとりあえず聞くことにした。


「転生時の年齢も一応選べますが、こちらは12歳からで設定させていただきますね。
なので、15歳の誕生日にネコ化の呪いが発動します。
人間として過ごす上で必要な能力は、今回の場合はスキルとは関係なく付与しておきますのでご心配なく。
基本的にあなたの周りには、好意的な人々しか寄りつきません。
これは、私からのボーナス特典です」


「他の人にはないしょですよ」と言われても、話す相手がいない以上話すことはないだろう。


「スキルは幸運。
3年間人間として、幸せな時間を過ごして下さい。
ネコになりたいほどの辛い思いも、その時間でなくなるかもしれませんので」

やっぱり、美女さんは優しい神であったらしい。
どうかネコになることを思いとどまってほしいという意図が、細かな心遣いから伝わってくる。


「いってらっしゃい。あなたに幸運があらんことを」


ぱぁぁと、香奈の身体が白い光に包まれ、意識をも呑み込んでいった。