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1-31 乙女ゲームの悪役令嬢になりましたが、兄の妹への態度がヒドイと思います。

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「……ディア、クローディア!」


「……お兄さま?」


「よかった、目が覚めたか。気分はどうだ?」


「……?」


とても心配そうな様子で声をかけてくれるお兄さまを前に、クローディアは疑問符を浮かべた。


(えっと、何があったんだっけ?)


兄にこれほど心配をかけるようなことをした覚えはないのだけれどと、ぼんやりとする視界を眺める。

とりあえず身を起こそうとするけれど、ズキリと痛んだ後頭部に阻まれてあえなく断念した。


「クローディア、無理に起きようとしなくていい。
部屋で倒れた時に頭を打っているようだから、今日はこのまま安静にしていろよ」


「……倒れた?」 


(私が?)


どこか記憶が霞がかっていて、何があったのかが思い出せない。


「まったく、部屋で倒れているのを見つけたときは肝が冷えたぞ。
疲れていたのなら何でそう言わないんだ。
言ってくれればジークなんかに引き合わせることなく、まっすぐ帰ってきたというのに」


「……心配かけて、ごめんなさい」


「いや、気づいてやれなかった俺も悪い。
クローディアの近くにいたというのに」


「いえ、学園にいる間は別に具合が悪かったわけではないので」


(そうだ、学園にいる間は具合が悪いわけではなかった。
たしか、屋敷に帰ってきてから……)


自分に何が起こったのかを思いだそうとしたクローディアだったが、頭の痛みに思考を邪魔されるせいか、はっきりと思い出せなかった。


「そうか……。医者に診てもらったが、頭に小さいコブがあるくらいで、他に問題はないらしい。
クローディア、今気分が悪いとか、どこか痛いとかはないか?」


「頭が痛むくらいで、他は特に痛みもないです」


「倒れたときに頭を打っているからな。
後で侍女に新しい氷嚢を持ってくるように伝えておこう」


「ありがとうございます。
お兄さまも忙しいのに、付き添っていただいてすみませんでした」


クローディアとしては当たり前のことを口にしただけなのだが、なぜかこの目の前にいる兄はそうは思わなかったらしい。


「クローディア……やっぱり、頭を打った影響がでているんだろうか?
いつもより大人しすぎると、お兄ちゃん心配になるんだが」


そんな失礼きわまりない発言を、間抜け面でしてきたのだ。

ひどい。
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