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1-16乙女ゲームの悪役令嬢になりましたが、お風呂上がりに兄が部屋を訪ねてきました。

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「クローディア、今良いか?」


「お兄さま、どうしたんですか?」


学園から兄と一緒に屋敷に帰った後。

シャワーを浴び終えて髪の毛を乾かしてもらっていたら、兄がクローディアの部屋にひょいと顔をのぞかせた。

いつもなら部屋までは来ないはずなだけに、珍しい。


「すまん、まだ髪を乾かしているところだったか」


「いえ、もうほとんど乾いているので大丈夫ですよ」


髪を乾かすのを手伝ってくれた侍女にお礼を言い、私は兄を自室へと招き入れた。

わざわざ部屋を訪ねてきたということは、何か大切な話でもあるのだろうか。

そう思って、ソファに向かおうとくるりと身体を反転させた時だった。


「クローディア、シャンプー変えたな?」
 

身体を反転させた直後、そう兄に頭上から肯定の問いを投げられたのは。


「お兄さま、それ、他の方に言ったらセクハラって言われるかドン引きされますよ?」


「そうか? まぁ、俺はクローディアにしか言わないからセーフだな。
ふわっと甘い良い香りだ。ハチミツか何か?」


「……はぁ。正解です」


おそらく身体を反転させた時に気づかれたのだろうが、よく気づいたなと感心してしまう。

お風呂あがりに兄と接することもそんなにないし、髪が乾いてしまえばそんなにシャンプーの香りなんてしないと思うのだけれど……気づかないだけで結構匂いが残っているのだろうか。

鎖骨下まである髪を一房持ち上げて「クンクン」と嗅いでみるが、兄が言うほど甘い香りは感じなかった。

確かにシャンプーをした時は甘い香りがしていた気がしたが、こうして自分の一部になって馴染んでしまうと自分では気づかないものなのだろうか。


「うんうん、クローディアによく似合ってるぞ。
他の奴みたいなキツイ香水なんかよりよっぽど良い匂いだ」


クローディアが髪の匂いを確かめていると、そう言いながら兄の顔が近づいてきていた。


「……で、なんの用ですか?」


まさかこの兄は風呂上がりの妹の匂いを嗅ぎにわざわざ部屋に来たのかと勘ぐってしまう。
そこまでヤバイ人ではなかったはずなのに、今日一日の言動だけを見れば疑ってしまうのも致し方ないだろう。


「クローディア、お前今お兄さまに対して失礼なこと考えてるだろ」


「……いいえ。まさか部屋に来た用事がシャンプーの残り香を嗅ぎにきたのではないかなんて、疑ってもいませんよ?」


「まぁ、それはあれだ、多少狙っていたのはあるが……話にきたのは別件だ」


堂々とこちらが否定したいた行為を肯定しないでいただきたい。

兄からクローディアへの好感度は下がらなくても、クローディアから見た兄への好感度は一個ぐらい下がってしまった気がした。
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